西神ニュータウン9条の会HP11月号

表記のとおり11月号がアップされましたので紹介します。

www.ne.jp

今月も11本のエッセイが掲載されています。

現在の政治状況を批判的に紹介したもの、平和問題を考えるものもありますが、パリからの通信や栗原小巻さんを紹介したもの、弁護士さんが改正相続法の解説を書かれています。

幅広く興味深い読み物が盛り沢山です。

私は「憲法と映画(47)」で『パパは奮闘中!』を紹介しました。この映画は映画サークルの10月例会で上映しました。ちょっと引っかかる映画です。ここでは紹介に力点を置いて書きました。また別途、このブログや映画サークルの機関誌に感想を書こうと思います。

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空爆の年表

「神戸空襲と神戸港の写真展」に掲示しています。

空爆に関する年表
年  代   出    来    事
1903   ライト兄弟が動力付き有人飛行機の実験に成功
    (これまでは気球、飛行船などを戦争に利用していた)
1911   イタリア・トルコ戦争でイタリア軍リビアに史上初の空爆、手榴弾投下
    (ヨーロッパ列強は、植民地の抵抗運動に対し、飛行機と空爆で現地住民を威嚇し攻撃した)
1914~18   第1次世界大戦
    ・偵察、攻撃、爆撃という役割が分科した飛行機を製造  
    ・日本軍が青島のドイツ軍を空爆  
    ・イギリスが独立した空軍を設立  
1921   ジュリオ・ドゥーエ(イタリア)が無差別空爆を説いた『制空』を発刊
1923   国際戦時法としてハーグ空戦規則案を作成し無差別爆撃を禁止した。
    ・国際会議は開かれず草案で終わったが、各国の軍規に反映された。しかしそれは守られることはなかった。
1937   ドイツ軍がスペインのゲルニカ空爆
1938~43   日本軍が中国の臨時首都、重慶を継続的に爆撃  
1939~45   第2次世界大戦
    ・ドイツ軍、イギリス軍等が相互に相手の都市に無差別爆撃
1941   日本軍がマレー半島上陸、真珠湾攻撃。米国も参戦した世界大戦へ
1942   ドーリットル爆撃(米軍による初めての日本本土空爆
    マンハッタン計画(原爆開発、20億ドル)開始  
1944   「超・空の要塞」B29完成(開発費30億ドル)
    米軍がマリアナ諸島を占領し、日本本土に空爆が本格化
1945   カーチス・ルメイが日本本土空爆の司令官に着任  
    連合軍がドレスデン空爆    
    広島、長崎に原爆投下  
第2次世界大戦後、3次の世界大戦は抑制され原水爆兵器は使用されていません。しかし東西冷戦構造のもとでも冷戦が崩壊しても、地球から戦火は絶えることはありません。
その中で比較的大きな戦争を列挙しておきます。      
1948~   第1次中東戦争、その後2次3次4次と戦争が起きた。現在もイスラエルパレスチナを軍事占領している
1950~53   朝鮮戦争
1955~75   ベトナム戦争
1978~1989   アフガニスタン紛争
1991   湾岸戦争
1991~99   ユーゴスラビア紛争
2001~   アフガニスタン戦争
2003~   イラク戦争
2011~   シリア内戦
空爆兵器は「進歩」しミサイル、無人戦闘機等のように兵士は「標的」をディスプレイ画面で見るだけになっています。効率的に人間を殺傷し都市を破壊する爆弾も開発されています。
2017   国連、核兵器禁止条約を採択(2021年発効)    

無差別爆撃の歴史

「神戸空襲と神戸港の写真展」で、私は無差別爆撃の歴史について調べて、簡単に書いてみました。会場に資料として置いています。その解説文をここで紹介します。

※ ※ ※ ※

1.飛行機の発明と戦争

ライト兄弟が有人の動力付き飛行機の実験に成功したのは1903年です。1914年に始まった第1次世界大戦では各国で偵察や戦闘に活用されます。飛行機は大型化と長距離飛行へと急速に機能は向上し、独立した空軍も編成されていきます。

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ライト兄弟の飛行実験

その前史的にはイタリア・トルコ戦争で、イタリアは1911年トルコ領リビアに史上初の空爆を行いました。手榴弾を投げ落とす程度で、飛行機は植民地戦争で現地住民を威圧する兵器として活用されます。

戦争は「他をもってする政策の継続にすぎない」(クラウゼヴィッツ戦争論」)という本質から、軍隊の戦いから国家の総力を挙げた戦いとなります。戦場は軍隊が戦う場所に限ることなく一般国民が暮らす国全体へ広がりました。

国民の戦意高揚、後方支援を含めた広範な戦略が重要になりました。戦争における空軍の重要性が増し、各国は戦闘機や爆撃機の強化を図っていきます。海軍の主力艦隊が大艦巨砲主義の戦艦から航空母艦重視に切り替わりました。

1939年に始まった第2次世界大戦では飛行機が戦争の主力となりました。偵察機、戦闘機、爆撃機、輸送機等と機能が分化し、それぞれに強化、発展していきます。戦術爆撃や戦略爆撃空爆の作戦も研究されていきました。

2.精密爆撃、地域爆撃、無差別爆撃

その当時の国際慣習法1923年ハーグ「空戦規則案」は「一般住民に対する空爆を禁止」していましたが、結果的にはほとんど無視されています。

各国の軍規はその遵守を謳っていました。しかし空爆の標的は軍事施設から工場や港などの軍需施設へ拡大し、標的を狙う精密爆撃からその周辺を含めた地域爆撃と拡大されました。そして戦争が国全体の総力戦であることから、国民全体の戦意をそぐために、商業施設や住宅など社会生活全体を破壊する無差別爆撃へと広がっていきました。都市部への空爆をより効果的にするために、火災を引き起こす焼夷弾が開発されます。

第2次世界大戦前後から、戦闘員非戦闘員の区別なく多数の人間を虐殺する広範囲で継続的な無差別爆撃が行われています。歴史に残る主なものを列挙します。

①1937426日ドイツによるゲルニカ爆撃

 

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ピカソゲルニカ

ナチスドイツは、スペイン内戦でフランコ将軍を支援するためにバスク地方の中心都市ゲルニカ(在住人口5千~1万人)を1日で破壊した。死者1654人、負傷者889

 ②1938年~43218回日本軍による重慶爆撃 

日本軍は31満州事変以後、32年上海を皮切りに南京など都市部に無差別爆撃を敢行した。中国の臨時首都の重慶38年から史上初となる同一都市への継続的な空爆を開始し、死傷者は25400人。とりわけ101号作戦(4011272回)102号作戦(413630)は、中国の抗戦意志を挫こうと激しいものになった。この時6号爆弾と呼ばれる焼夷弾を使用した。

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日本軍の重慶爆撃

この爆撃を主導した井上成美(後の海軍大将)の責任は極東裁判では不問。

③1940年~45年ドイツと英国が都市部へ空爆の応酬

ドイツは西欧諸国を占領した後、英国へロンドン等都市部を標的に空爆を開始した。その報復に英国もドイツの港、工業地帯だけでなく、労働者の戦意を挫こうとベルリンやハンブルグなど主要都市への爆撃を繰り返した。1945年ドイツが降伏する直前に英国、米国は大規模なドレスデン爆撃を行った。空爆による英独の死傷者約55万人という。

3.日本への空爆

日本本土に対する爆撃は、1942年ドーリットル作戦(B25によって東京へ。神戸も爆撃された)が最初です。その後1944年中国の成都から飛び立った「超・空の要塞」B29による北九州、八幡製鉄所爆撃を皮切りに、太平洋のマリアナ諸島を奪った米軍は、そこを発進基地として全国の都市に爆撃を開始しました。

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B29による無差別爆撃

最初は軍事施設や工場などを狙う精密爆撃でしたが、しだいに広範な地域爆撃になり、1945年に本土爆撃の司令官がカーチス・ルメイに代わり本格的な無差別爆撃が始まりました。

米軍は、綿密な事前調査に基づき、B29という絶対的な爆撃機と日本用に開発した焼夷弾68を用いて、最初は東京、横浜、名古屋、大阪、神戸といった大都市を繰り返し爆撃し、焼野原にしました。その後、北海道を含む全国の主要都市180空爆します。

そして8月には究極の無差別爆撃といえる原爆を広島、長崎に投下しました。本土空爆の犠牲者は記録されているだけで46万人です。

評論家の清沢冽は戦時中の日記に「日本人は無差別爆撃を恨んでいない。『戦争だから仕方がない』という」と書きました。政府の「一億玉砕」がいきわたり、当時の日本人には戦闘員と非戦闘員の区別がありませんでした。

敗戦後「一億総ざんげ」が言われ、カーチス・ルメイに対し、1964年日本政府は航空自衛隊の創設に貢献した、として勲一等旭日大綬章を贈っています。

4.現代も無差別爆撃は続く

2次大戦後、戦勝国によるニュルンベルグ裁判や極東裁判では、無差別爆撃は責任を問われませんでした。ゲルニカ重慶への爆撃も戦争犯罪として俎上にも上がりません。枢軸国が行った空爆も糾弾されず、連合国の無差別爆撃も言及されませんでした。

そのことにより、非戦闘員の保護を明確にした1977ジュネーブ条約後でも、無差別爆撃は続いています。

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沖縄からベトナム戦争行くB52

東西冷戦構造の下で朝鮮戦争ベトナム戦争ソ連アフガニスタン侵略と戦争は続きました。幸い核兵器は使用されていませんが、ベトナム戦争では枯葉剤のような奇形児の出生など大きな後遺症が残る兵器も使われています。

冷戦が終わっても世界各地で戦争は続いています。中でも米国が絡んだ戦争で大規模な無差別爆撃が行われました。空爆の兵器もB29を上回るB52爆撃機、長距離ミサイルそして無人戦闘機へと発達してきました。ナパーム弾、劣化ウラン弾、ボール爆弾、クラスター爆弾など殺傷能力の高い爆弾が使われています。

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爆撃されたアレッポ

厳しい国際世論の目があって、表立った無差別爆撃はしにくいものの「誤爆」を言い訳に行政施設や病院も狙われています。

最近ではシリア内戦でロシア空軍がシリアの最大都市アレッポを無差別爆撃しています。

参考文献空爆の歴史―終わらない大量虐殺/荒井信一』『本土空襲全記録/NHKスペシャル取材班』『戦略爆撃の思想/前田哲男

「神戸空襲と神戸港の写真展2020」を開始

 11月1日~7日、新長田文化センター(旧勤労市民センター)3階のギャラリーで開催しています。たくさんの皆さんの来場をお願いします。

 戦災の全図は辻信一さんがつくられた戦災と疎開空地の地図を掲示しています。

 ベースは神戸空襲の写真ですが、今年は神戸港の歴史で、神戸市が書いていない軍港としての側面について書きました。

 神戸の造船所でつくられた戦艦、空母などの写真も展示しています。

 戦前、戦中には軍需工場が集積し物流の拠点であったこと、戦後は米軍の占領下で朝鮮戦争ベトナム戦争に使われています。そして1975年の非核神戸方式決議によって、米軍戦艦を排除して平和の港になったことは非常に重要です。

 政令指定都市にある平和記念館を紹介しています。

 そしてもう一つは無差別爆撃の歴史について調べました。年表を作り簡単な解説文を書きました。これは資料として置いています。

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入り口

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空襲の被害の図

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神戸港周辺の軍需産業

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空襲の写真

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神戸に大量の爆弾が落とされた

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軍港としての側面

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原爆投下

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政令指定都市にある平和記念館

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核兵器廃止の運動

 

『i-新聞記者ドキュメント-』感想

神戸映画サークル協議会の8月例会であった表記の映画の感想を書きました。ちょっと長いのですが、読んでみてください。

※ ※ ※ ※

ちょっと不満がありました

 繰り返し映画を見て、森達也監督が描き主張したかったのは何か、を考えました。この映画の一方の主役、菅義偉氏が首相になりましたから、ちょっと長い文章になってしまいました。

ラストシーンに望月衣塑子記者を大写しにして、そこに「i」という文字を重ねます。これが監督のテーマであることはわかります。もう一つはしつこいほど出す、フリーランスが記者会見に出ることの困難さです。ここに今日のジャーナリズムの危機の本質があるという、森監督の怒りを感じました。

一つ目の意味はなにかです。

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同調圧力の否定には賛成だが

 素直に受け取ると「i」は「いそこ」であり、独立した個であると思います。すなわち望月衣塑子自身の行動、思考が大事であり、新聞記者としても必要な資質だということです。ですからカメラは彼女とともに行動し、彼女の問題意識を共有するような撮り方になっています。

 私は共感します。しかし大手新聞記者としては特異な独自で率直な言動なのかもしれません。

 菅官房長官記者会見、籠池夫妻、伊藤詩織、沖縄基地問題宮古島自衛隊基地、前川喜平等、見事なくらいに現政権の批判となりました。後半のナレーションで、監督自身もそれらと同調する「リベラル」であるといいます。

そのうえで言いたいことは、リベラルの主張ではなく同調圧力の否定なのだと、パリ解放時の映像を流しました。

 これはちょっと難しい表現となっていると思います。

 それまでナチスの暴力に押さえつけられていた民衆が、反発が行き過ぎて裁判抜きの私刑(リンチ)で親ナチスの人間1万人を殺し、ナチスの愛人となった女性を丸坊主にする映像を出します。それはダメだろう、というものです。

 一人一人は善良な人間でも集団となると暴走が生じるという事例です。

 でも望月記者の取材対象とそのスタンスは少数派の側です。主要メディアの主要論調からは疎外されています。現政権の圧力は絶大で、街頭演説する安倍首相に罵声を浴びせれば逮捕されることも覚悟しないといけない現実があります。

この映画を見ている我々は、望月記者に同調しているし、この映画に同調しているのですが、現実は望月記者が批判している安倍政治に従う同調圧力が圧倒的に大きいのです。

ですからこの「同調圧力批判」に対し、見ていて混乱しました。

立場の違い、考え方の違いに拘り、所属するグループに従うのではなく、自分の頭で考えて行動することの大切さは理解しても、ここでパリ解放時での誤りを出すか、と思いました。

不器用だが率直

 望月衣塑子さんは、官邸記者会見で菅官房長官に重ねうちの質問をすることで有名になりました。映画でもそのシーンが出てきます。率直な感想は下手な質問だな、と思いました。

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 坪井兵輔さんの学習会で、普通の記者は自分でつかんできたネタを記者会見で出さず、個別取材でぶつける、と聞きました。公人はいつでもどこでも取材に応じる義務があり、答えなければ答えないことを報道する手法が取られるというものです。

 記者会見の活用は望月記者の手法です。記者内部でそれを批判するのは、答えが出ない質問を出すのは「時間を延ばすだけ」という気持ちがあるのかもしれません。

 しかし彼女は、官房長官が国民の疑問にまともに答えないことや、広報室長を使って質問妨害までする姿を引き出しました。

 この映画の上映時期に、「政権の守護神」に期待された黒川検事長産経新聞記者、朝日新聞記者が賭け麻雀をしていたと暴露され、批判されました。記者たちは懲戒処分されましたが、記者仲間では「よくそこまで食い込んだ」という評価もあります。取材の一つという見方です。

 肝心なのは、望月記者と違う取材方法で、彼らはどんな記事を書いたか、と問うことです。

癒着と排除

記者会見の主催者、記者クラブには実体がないのか、あるいは実体をさらすのはタブーなのか、疑問が残ります。

森監督自身が、記者会見の場に出たい、そのために多方面に働きかけるシーンが繰り返し出てきます。結局それは出来ないという結論でした。であるならば、官邸記者会見の主催者である官邸記者クラブとは何者だ「突撃インタビュー」と、マイケル・ムーアなら行くと思うのですが、この映画には「私が記者クラブの責任者です」という人は出てきません。加盟社が当番制で幹事社となって運営しているようですが、映画ではわかりません。

森監督が直接に記者クラブ幹事社に連絡するシーンは出てきません。これが疑問です。

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記者会見の主催者は記者クラブでありながら、司会進行も部外者の入室許可受付も官邸の国家公務員にいわば「委託」しているのだとわかってきます。官房長官も記者会見の運営に関する望月記者の質問に、記者クラブから「何も言ってこない」と反論しています。

望月記者は、質問妨害と嫌がらせに対して、東京新聞社として対応、抗議してほしいと上司に頼みます。あるいは記者クラブ担当者(電話の相手はそうではないかと推察)と激論をしています。

記者クラブを動かして記者会見を改善させることは、非常に難しい問題だと映画は言います。

森さんは、しつこいほど画策します。新聞労連委員長に何とかならないか、と問い詰めますが、なんともなりません。新聞労連記者クラブでの望月記者の質問に対する妨害、嫌がらせに対する抗議集会を開きます。

これは外形的には菅官房長官、官邸批判ですが、本質的には記者クラブ批判です。実行犯である広報室長は割としれっとしています。

最初は混乱しますが、映画を見ているとわかってきます。記者クラブは経営側の牙城です。彼らは運営や規約の変更には会員企業の「全会一致」が必要という縛りをかけて、既得権を守ります。部外者からの批判や介入を全く意に解しません

それは権力との癒着であり、権力を批判するものを排除する、国民の社会的権利である「報道の自由」を冒涜するものです。

実名、実例を挙げた批判

そう考えると、この映画に対する不満もはっきりしてきます。ドキュメントでありながら、記者クラブの中枢、正体、本質に迫っていないのです。

それは記者クラブを生み出し、組織を維持しているのは誰かということです。彼らは権力の監視どころか、癒着しているし、国民からその本質を隠蔽することに手を貸しているといっても言い過ぎではありません。

だとしたら、この映画の役割は記者クラブの本質、幹事社に日常的な役割をインタビューすることで、御用ジャーナリズムの本質に迫れたのではないかと思います。

この映画に前川喜平さんが登場します。彼が文科省事務次官をやめた経緯で、その時に官邸に呼ばれて出会い系バーに出入りしていることを注意されたといいます。そして辞職した後に読売新聞が、それを「スクープ」します。

それを追及しません。現職の事務次官が出会い系バーに出入りし、援助交際や売春を印象付ける記事を書きながら、その真偽はぼやかします。世論を批判を受けて、社会部長が必要な報道だとフォロー記事まで出しています。

官邸からのリークであり、取材に基づく事実も書かず、政権に逆らう高級官僚を貶める記事です。権力の監視の真逆です。

世界一の購読者を持つ大新聞の姿勢を追及しないのはなぜか、と思いました。

菅政権の下で

2020年9月安倍首相が持病の再発で辞任しました。その後を受けて、この映画のもう一人の主役である官房長官菅義偉氏が首相に就きました。

安倍前首相も息を吐くように嘘を言い、低劣なヤジや混ぜ返し、ご飯論法は得意でしたが、菅首相はそれに加えて脅迫的です。何度も基地建設反対の声を上げる沖縄に対して「粛々と進める」と露骨な切捨てを見せてきました。

彼は無派閥ですが二階幹事長と麻生副総理等の自民党内の大派閥に担がれ、政策はアベノミクスを引き継ぐと言っています。

秋田から出てきて、政治家秘書を経て横浜で政治家として成功しています。成り上がりの一面も持っていますが、イメージでは底辺の人たちを切捨ててきた人間です。

     意に沿わない公務員は排除すると明言し、さっそく共謀罪法などに反対した学者を学術会議委員から排除する暴挙に出ました。国内はもちろん海外からも学問研究に対する権力の介入の危険性を指摘する声が出ています。

私たちの生活や平和を守るために、今まで以上にジャーナリズムの「権力監視」の役割が大事です。

2020年「神戸に平和記念館をつくる会」写真展

 今年も長田区文化センターのギャラリーをお借りして写真展を催します。下記のビラのとおりです。

  期間は11月1日~7日です。多くの皆さんに見ていただきたいと思います。毎年、少しずつ進化をしています。

 単に神戸空襲の写真だけでなく、今は平和の港となった神戸港の歴史も調べました。

私は飛行機が発明されて戦争に利用された歴史を調べました。それが無差別爆撃となり、広島長崎への原爆投下につながっていきます。

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2020年9月に読み終えた本

『剣は知っていた/柴田錬三郎』『矢萩貴子傑作選1~7』『闇の想像力/梁石日』『リプラからスコルピウス、サジタリウスへ/松村潔』『ヒトはなぜ戦争をするのか/アインシュタインフロイト』『破門/黒川博行』今月は6冊です。

『剣は知っていた/柴田錬三郎

 一度、柴錬を読もうと思っていたのですが、これは分厚い長編小説で、まさに通俗的な娯楽小説の典型というものです。貴種流離譚というパターンに当てはまります。

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 戦国時代の末期、豊臣秀吉小田原城攻めを背景に、北条家に滅ぼされた関東の名門、眉殿家の忘れ形見、美貌の剣士に成長した眉殿喬之介と、北条家に政略結婚として送り込まれた家康の息女、鮎姫の恋愛物語を軸にして、喬之介の父母や一族等の仇討ちを絡めて複雑にしています。二人に関わってくる人々の人生が描かれました。

 それほど波乱万丈というわけではありませんが、ヒーローやヒロインが危機一髪で命が助かる、ということが繰り返されます。

 小田原北条家の確執や根岸兎角と岩間小熊との決闘を織り込むなど、史実も織り交ぜているので、この辺りを知っていると面白いと思います。しかし人生の機微、人間観に鋭さは感じませんでした。

『矢萩貴子傑作選1~7』

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『蒼い獣たち』『エキセントリック・シティ』『ダークムーン』『ガラスの果実』『春の檻』『素奴夢の男』『夏蜜柑』というタイトルで7冊読みました。レディースコミックという分野です。

『闇の想像力/梁石日

 在日の作家で、三國連連太郎との共著『風狂に生きる』で知って読みました。評論、エッセイの本です。船戸与一金時鐘平岡正明との対談、韓国への旅行記も入っています。

 日本の戦後文学は戦争被害の面で傑作を書いているが、加害の面で描いた傑作はないと言っています。その通りです。軍隊内部を批判する小説は『神聖喜劇大西巨人』等素晴らしいものがありますが、山田洋次が言う、満洲にいた日本人が持った中国人へのいわれのない差別感を描いたものは知りません。『三たびの海峡/帚木蓬生』も読みました。ここには日本に来た徴用工、朝鮮人の日本でのひどい扱い、環境が描かれていました。

 直接的な植民地支配といえば『族譜/梶山季之』を思い出しますが読んでいません。

映画でも山本薩男の『戦争と人間』3部作が、五味川純平の原作によって日中戦争を全体的に描いてはいるものの、朝鮮半島満洲、中国での日本人の他民族に対する振る舞いを描き切った、とまでは言えません。

 朝鮮はもともと「朝日の鮮やかなところ」という美しい名前ですが、日本人が「チョーセン」と軽蔑に使ったことで、この言葉を使うことで、彼自身でさえも嫌悪感を持つようになったという、心情を吐露しています。非常な痛ましさを感じました。

 次は、戦後の大阪にあったという「アパッチ部落」と呼ばれた朝鮮人部落を描く小説『夜を賭けて』を読んでみようと思います。

『リプラからスコルピウス、サジタリウスへ/松村潔』

 奇妙な味のショートショートです。テーマも論理も、文章のつなぎも普通ではありません。常識的な世界を扱っていないのでSF、ファンタジー的ですが、文法までもがおかしい時があります。まあ言えば夢を文章化したものと思ってください。

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 つじつまが合わない、飛躍がある、意味が分からない、意味がない、そういうショートショート、とても異常な小説群でした。タイトルからしてそうです。

 まえがき、あとがき含めて64編がありました。

 ちょっとだけ紹介する。最初の3

 『蝶でできた靴』どんな靴か想像できないが、靴が足に一体化して、背中がむずむずする、で終わる。

 『葉っぱ』葉っぱが貨幣になった。葉脈に値打ちが出てきてた。

 『鷲と鳩』神社の境内で鳩の糞を舐めた娘が鷲になって、ついには双頭の鷲になる。

 全部読み終えるのに時間がかかりました。時々読む値打ちがあるのかとも思いました。でも「まえがき」によれば食べていけるだけの収入があるそうです。

  後で知りましたが、松村さんは「神秘哲学研究」の第1人者だそうです。

『ヒトはなぜ戦争をするのか/アインシュタインフロイト

 国際連盟の企画で、物理学のアインシュタイン精神分析学のフロイトの往復書簡です。アインシュタインは戦争をなくしたいと思い、フロイトに人間が戦争をする理由を教えてほしいと手紙を書きました。

 フロイトも戦争反対の持ち主で、色々考えて、結局は他者を攻撃するのは動物の本能で、それを多数の力、民主的な政治で抑え込むしかない、という普通の答えが書いてありました。

『破門/黒川博行

 黒川さんの小説を初めて読みました。楽しく読ませます。これは直木賞をとっていますが、ちょっと変わったハードボイルドという感じです。「疫病神シリーズ」の一つで、順番で言うと5冊目です。

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 大阪弁の小説です。暴力団幹部、桑原と、父がその暴力団の幹部だった男、現在はその関係を利用する建設コンサルタント、二宮がコンビとなって珍道中するように展開していきます。

 今回は映画製作に絡む詐欺をめぐるドタバタ劇です。

 映画製作をする、という話を信じて、桑原と彼の兄貴分が制作委員会の一員になって投資をします。しかしそれは詐欺で、金を集めたプロデューサーが行方をくらませます。それを追ってコンビが走り回ります。

 その裏には本家筋の幹部がかかわっていくこともわかってきて、いわば身内同士の殴り合いも辞さない、破天荒な桑原です。

       プロデューサーは老人の部類ですが、桑原につかまっては逃げる、を何度か繰り返すタフで滑稽な男です。

 特に社会状況が書き込まれているか、といえばそうでもありません。暴力団の金銭感覚や本家や親分子分の関係などが面白く描かれていました。