西神ニュータウン9条の会HP2022年3月号

標記のHPが更新されていますので紹介します。下記のHPをご覧ください。

西神9条の会 (www.ne.jp)

 読んだ感想を書いていきます。

 今月は10本のエッセイが投稿されています。いつものように多士済々です。

 「『粛軍演説』の斎藤隆夫に旅する」の三回連載があります。私も静思堂に行きました。2019年のお盆です。中身はあまりなく、安倍晋三をはじめとする歴代総理大臣の書が掲げられています。

 この建物は豊岡市ではありません。おそらく民間の団体が斎藤孝夫を郷土の英雄として顕彰するものです。近所の方が管理されていました。

 このエッセイは斎藤孝夫を調べて書かれています。

 「日中改善の外交を」は9条の精神そのものです。最近は中国と疎遠になっていて、何の根拠もないのに「台湾有事」が取りざたされています。もしそれを本気で気にしているのならば、日頃からいろいろな形で日中の交流をするべきなのです。

 安倍以後の馬鹿な政府は、外交の重要性を思わず、対米従属の外交に満足しています。それを外れて、安倍政権は対ロシア外交で北方領土を何とかしようとしましたが、今になって化けの皮がはがれています。

 プーチンファーストネームで呼び合う関係を誇示しましたが、ロシアがウクラエルを侵略して以降は、特使にもなっていません。

 「芸人マルセ太郎のこと」は、とても懐かしく読ませてもらいました。彼を最初に見たのは11PMだったと思います。それから雑誌「広告批評」にも掲載されました。どこかで彼の「泥の河」を見ています。

 「神戸の舞台に立った俳優たち」は大滝修治を取り上げています。

 そして私は『ボストン市庁舎』を紹介しました。読んでください。

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 おしゃべりコーナーも読んでください。そこには加川良の「教訓Ⅰ」が載っています。

 そして「西神の野鳥」はカワセミで、今までと違って鮮明な写真です。

 

 

 

2021年12月に読んだ本その2

『落語に学ぶ大人の極意/稲田和弘』『五代目三遊亭圓楽特選飛切マクラ集/五代目圓楽』『世界12月号』残り3冊です。年内に読み終えた本は、偶然ですが映画と同じ91冊でした。

『世界』は全て読めるわけではないが、関心がある記事を読んでも、それを要約するのが難しく、いつも後回しになります。

『落語に学ぶ大人の極意/稲田和弘』

 落語に登場する人々を題材に、人との付き合い方や現代人の生き方について書いた本です。会社の同僚、上司あるいは近所の人々を上手に落語の登場人物に見立てています。平凡な会社員とその家庭、彼の会社の同僚、上司をモデルにして、実際にありそうな会話を展開しています。

でも落語のエキスである小粋さはありません。よた話の感じです。

 章立ては以下のとおりです。

①大人の友情②ご近所の交際術③会社の人間関係④男女のいろいろ⑤大人の喧嘩術⑥大人の謝罪術⑦お金の話、です。

 印象に残ったことを書きます。

・酒は一人で飲まない、みんなでワイワイと。だから晩酌はしない。

・謝るときは迅速に、怒るときは少し時間を置いてから。

・女をものにする方法は二つ、強引に行くか、ひたすら拝み倒す

・喧嘩の仲裁は、お互いの意見を聞く、もしくは聞くふりをする

 あくまで落語をネタにした世渡りの「極意」です。

『五代目三遊亭圓楽特選飛切マクラ集/五代目圓楽

 落語のマクラ集ですが、やはりマクラは面白いです。内容もそうですが、そこに噺家人間性が見えるように気がします。

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  19751127日~20071220日までの「にっかん飛切落語会」からの収録で24話がありました。そして「まえがき」「あとがきは」は6代目円楽です。

  24話のタイトルは書き留めているのですが、中身がどうだったの覚えていませんし、メモにも書いていないので、ここでは書けません。次から気になった話は要点を書き留めようと反省してます。

 ですから、これを読んで持った五代目圓楽の印象を書くことにしますが、大体が6代目円楽の引き写しです。

 笑点の回答者、司会者の時のままで真面目、頑固、勤勉、努力です。唯一、意外だったのはアドリブが利かない、ということです。よく映画を見て本を読んでいたようで、マクラにもそれは羽根井されていました。

 立川談志とは違う、カタイ人間性で真逆のようですが、落語への情熱は負けず劣らずで、気難しい、そういう方向では似通っている印象を受けました。

『世界12月号』

【特集1 「学知と政治」】

以下のリード文があり、学術会議任命を拒否された6人が書いています。

「私たちは、学問の自由と学術組織の独立した地位の尊重を求める。その自由と独立とは、ただアカデミズムの発展のためだけではなく、私たちの社会の持続可能性の確保と民主主義のために不可欠であるからだ。

日本学術会議の会員任命拒否から1年が経過した。いまだ政権は、その決定の撤回をせず、経過の率直な説明も行なっていない。追及の過程の中で明るみに出た政府の文書には、このように記されていた。

『外すべき者(副長官から)』――政権は、何を恐れて、このような挙におよんだのか。 学問の自由と独立を侵し、法に違背してまで、知の第一線に立つこの6名の、何を忌避したかったのか。

その本質は、本特集の全体によって明らかとなろう。 」

6人の論文のタイトルを載せます。

「日本における学術と政治─学術会議会員任命拒否問題から考える/岡田正則(早稲田大学)」

現代日本と軍事研究─日本学術会議で何が議論されたのか/加藤陽子東京大学)」

「法治の危機と学術の軽視/松宮孝明立命館大学)」

ポスト真実の政治状況と人文知/芦名定道(関西学院大学)」

「「『反政府的』であるとは、どういうことか─政治と学問、そして民主主義をめぐる対話/宇野重規東京大学)」

「反憲法政治の転換を/小沢隆一(東京慈恵会医科大学)」

【「関西生コン弾圧と産業労働組合、そしてジャーナリスト・ユニオン」花田達朗(早稲田大学名誉教授)  

 労働組合としての連帯ユニオン関西生コン労組の存在は知っていますが、その中身は知りません。雑誌「世界」の101112月とこのタイトルで連載されていました。かなりの興味を持って読みました。

 中心的な事柄は、関西生コン労組のストライキなど「正当な労働組合活動や争議行為」を犯罪とされ、刑事事件とされたということ、そしてその不当労働行為について、大手マス・メディアは一切取り上げていないという批判です。


【メディア批評【第168回】/神保太郎(ジャーナリスト)】

①ジャーナリストの平和賞受賞と日本の私たち

 ノーベル平和賞はロシアとフィリピンのジャーナリストです。表現の自由のために戦っている全ジャーナリストの代表ということです。

 それに比べて日本では政権批判をどれほどしているのかという指摘です。

②「報道の不自由」、浸食を許すメディア

 ここでは、日本の「不自由さ」を具体的にあげています。北海道新聞記者の不当逮捕、熱海土石流現場等の取材活動の規制、締め付けに対して「日本のマスメディアは極めて従順だ」と声を上げず、抵抗もしない姿を批判しています。


片山善博の「日本を診る」【145】新型コロナ対策のこれから──国も都道府県も特措法の原点に戻れ/片山善博早稲田大学)】

 コロナ禍で明らかになった問題点を2点指摘しています。一つは「政府の特措法解釈はあまりにもお粗末」、それは緊急事態宣言を解除しても飲食店などの営業の自粛要請ができるという法解釈は間違いと言っています。

 二つ目には都道府県が国の指示待ちになっている、コロナ対策の内容を「真剣に考えなくなった」という指摘です。

 二つとも当たっていると思います。


【但馬日記【第31回】繰り返された「トランプ型選挙」──豊岡市長選顛末記(4)/平田オリザ(劇作家)】

 昨年4月の市長選挙の時に「演劇のまちづくり」を中傷された平田さんが、その模様を書いていました。フェイクニュースなどが流されて、長く住んでいる人々に「偉い市長さんや芸術家」に街を壊してほしくない、という思いに駆り立てた選挙、それが「トランプ型選挙」という指摘です。

『グレース・オブ・ゴッド―告発の時』の感想

 市民映画劇場2021年7月例会作品です。機関誌に投稿したのですがここに載せるのを忘れていましたので、遅ればせながら載せます。読んでください。

 私の中では非常に高く評価しています。

※  ※  ※  ※  ※

告発が尊厳を回復させた

 成熟した民主主義の法制度を持ちながらカトリック教会の影響力が大きい社会(例えばフランスやイタリア等)における、個人と教会、神父の感情的心理的な関係がどのようなものか、よくわかりません。

 この映画のように、普通の社会人が教会の犯罪を告発する「勇気」を持つのはどの程度の踏ん切りがいるかです。

 過去を振り返ると、キリスト教は地動説や進化論を否定して科学と科学者を弾圧してきました。バチカンは秘密裡にヒトラーと手を結ぶ等もやっています。女性蔑視があり避妊や堕胎、同性愛、離婚などの禁止という個人の問題に介入して、社会的規範として制約してきました。

 生き方を規制する大きな圧力です。

 権力と宗教が結びつくと「個人の尊厳」を著しく損なうという、歴史がありました。そこから政教分離という現代政治の原則が生まれます。

 宗教は否定しませんが、人間よりも神の権威を振りかざす信仰は良くない、と改めて思います。

 現在では一般的な市民と教会の直接的な権力関係利害関係はないでしょうが、30年前のフランスでは、影響力は大きく、家族ぐるみの信仰の下で、思春期に生じた心の傷は人生を左右しました。

 そんな困難を克服するものを、この映画は提示しています。重苦しい感じを持ちながらも明るさが見えました。

三人の登場人物

 『グレース・オブ・ゴッド』はカトリック教会神父による児童性虐待事件を扱った映画です。フランスの実際の事件であり、映画製作の時期は裁判が進行しているという生々しさを持っていました。それをフランソワ・オゾンは「異常な性犯罪」「カトリック教会の腐敗」に留めず、フランス社会や人間のさまざまな面を慎重に描いたと思います。

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 銀行員として地位も家庭も築いていたアレクサンドルは、三〇年前彼が小学生であった頃に、性的虐待を加えた神父が、まだその地位にいたことを知ります。思い出すのも嫌な経験ですが、子どもを守るために、自分の身をさらして、その教区の責任者、バルバジャン枢機卿に神父を「教会から追い出すよう」告発します。

 彼は熱心なカトリック信者でありフランシスコ教皇が発する言葉を信じていました。しかし、それは裏切られます。

 児童に対する性的虐待は犯罪ですが、彼の場合はすでに時効となっていました。彼は警察に告発します。

 それを契機に警察が動き出し、時効になっていない被害者を探し始めました。そしてフランソワを見つけます。彼も心の傷を負い、無神論者になって教会と関係を断っていました。彼はカトリック教会に鉄槌を下すために、警察に協力するだけではなく、同じ被害者を募って「沈黙を破る会」をつくります。マスメディアを使って、社会全体に訴え、被害者が声を上げるように促しました。

 そこにてんかん症を抱えたエマニュエルが現れます。小さいころから優れた頭脳を持ちながら、虐待により受けた心の大きな傷のために、彼は破綻した人生を送っていました。それが原因で彼の父母は離婚しています。

 前の二人は家庭を持ち、一定の地位、財産を築いていましたが、エマニュエルは彼らと違う階層の人間です。バイクを飛ばす彼を見ていてハラハラしました。

 映画は、この三人とその家族、彼らの周囲の人間を少しずつずらして描きます。親子関係兄弟関係、友人関係の距離感、教会への思い等の違いは、見事な調和だと思います。

 そしていずれも親世代との違いは明快です。

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声を上げる、仲間を募る

 アレクサンドルは三〇年を経て告発する決意を固めました。フランソワは被害者仲間を募って「沈黙を破る会」をつくりました。エマニュエルは彼の人生を狂わせた教会の罪の重さを訴えます。

 権威に対して声を上げる勇気と仲間作り、マスメディアの利用、自由な発想での闘い等、団結と連帯の力を見せます。それでいて個人主義的な面も見せました。

 その闘いの場で、彼らの傷が癒されていきます。尊厳が回復していくようです。

 カトリック教会神父という立場を利用した異常な児童性愛者がいた、それをわかっていながら教会は働かせ続けた、そういう組織とそれを支える奥にある人間の暗いものも批判しています。

 この映画は、性的指向性性自認などマイノリティの人権は認めながら、それと反する性犯罪を指弾します。人間性の復活と癒しをフランソワ・オゾンは描きました。これがフランスと思います。

 

2021年の映画ベスト5

2021年に見た映画の記録として、映画サークルに投稿した「ベスト5」を載せておきます。これまで書いてきた映画の要約みたいなものです。半睡半醒日誌に書いた日付も入れておきます。『グレース・オブ・ゴッド』は長めの感想を書いたのですが、ここに載せるのを忘れていました。後日載せます。

※  ※  ※  ※  ※

 邦画洋画のベスト五を選ぶ時に、いつも思うのは見逃した映画にいい映画があったのではないか、ということです。

 市民映画劇場はすべて見ているのでそういうことはありません。こちらはそれぞれ個性的ないい映画であると思いますが、その中から三本を選ぶのは、それなりに難しいです。

 リバイバルと一年遅れも含めて年間約九〇本を見ていますが、あと二、三〇本見たい感じですね。

 それぞれの映画で何に惹かれたかを短く書きます。

1.市民映画劇場

    1.グレース・オブ・ゴッド

    2.その手に触れるまで

    3.お名前はアドルフ

『グレース・オブ・ゴッド』

闘いを広げることで事態が動き、ひとり一人の人間性が回復するのが見えました。フランスらしい闘い方だと思いました。

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『その手に触れるまで』(22.2.6)

狂気にしか思えない少年の愚行をどう見るのか。誰でも間違うことはあるが、それを切り捨てるのではなく、正すのが大人の役割。

『お名前はアドルフ』(21.5.13)

近親者の罵り合いがエスカレートしても、それが本音と知っても、多少根に持ったとしても、翌日には素知らぬ顔で集まってくるのがいいね。

2.邦画

    1. 花束みたいな恋をした

    2. すばらしき世界

    3. 梅切らぬバカ

    4. 由宇子の天秤

    5. 一人になる-医師小笠原登とハンセン病強制隔離政策-

『花束みたいな恋をした』(21.3.17)

恋する時期を過ぎ、別れると決めた後の、男の哀れさと女のりりしさが見事に対比していた。未練な男は川に流すしかないか。

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『すばらしき世界』(21.2.25)

やくざの世界しか知らぬ男の生きざまを描き、それに男らしさを感じる。それはバカなやせ我慢でしかないが共感した。

『梅切らぬバカ』(21.12.16)

息子の行く末を心配する母の思いは伝わるし、他人のやさしさもあるが、吹き抜ける世間の風の冷たさは凍える。共存は幻想か。

『由宇子の天秤』(21.12.9)

他人のダブル・スタンダードを指摘できても、自分で克服するのは難しく、やはり破綻した。映画作家として、それを乗り越える模索は見えない。

『一人になる-医師小笠原登とハンセン病強制隔離政策-』(21.7.25)

病気を科学的に分析し、患者を人間としてみる、当たり前のことが戦後の憲法下でも困難であったと知った。彼を支えたものは医者か宗教家か。

3.洋画

    1. 薬の神じゃない

    2. 皮膚を売った男

    3. ファーザー

    4. ノマドランド

    5. スイング・ステーツ

『薬の神じゃない』(21.6.21)

中国であっても、国民の本気の怒りを受け止め、動くこともあると描く。儲け第一の多国籍薬品企業との距離間がいい。

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『皮膚を売った男』(21.12.16)

難民の男が、肉体を美術品とすると出入国が自由になるという皮肉。独裁国家グローバリズム資本主義も、人権よりも商売が優先した。

『ファーザー』(21.6.21)

認知症が進む父の認知する「現実」を視覚的に表現した。女婿はいい加減でいいが、娘が入れ替わる、それは父の期待でもあるのか。

ノマドランド』(21.5.13)

米国の自由。トレーラーハウスで気ままな旅暮らしのようだが、何の保証もない生活で、その先が滝つぼでもいいという決断が見える。

『スイング・ステーツ』(21.11.9)

選挙にはお祭りの要素がある。二大政党を手玉にとって、町おこしを上手に行った人々の民主主義に喝采した。

 

2022年1月に見た映画その2

swallow/スワロウ』『天使の涙』『大コメ騒動』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『ボストン市庁舎』残り5本です。抑えめに書いたつもりですが、5本ですから長くなりました。

swallow/スワロウ』

 題名は、燕ではなく「飲み込む」という動詞です。異物をひたすら飲み込む女性を描きます。最初は丸いガラス球から始まり、ビス、命に係わる乾電池、尖ったドライバーまでも飲み込まずにはいられない精神状態になっています。

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 彼女は、美人で大金持ちの御曹司と結婚してセレブの仲間入りをしました。典型的な玉の輿ですが、だんだんと生活に非常なストレスがかかってくる様子が描かれます。そして妊娠します。

 心の病の一種ですが、彼女はどうしてもやめることが出来ません。家族の知るところとなり監視がきつくなりました。ますます病は重くなります。

 異常心理が描かれ、彼女の出生の秘密(レイプによって生まれた)も明らかにされますが、それ以上のものが伝わってきませんでした。

 結論は、彼女は家を出て自分の人生をやり直すというところに落ち着きます。

 生まれも育ちも考え方も違う結婚、その男の家族に入っていく女性の大変さはよくわかりました。

天使の涙

 香港を代表する映画監督ウォン・カーウァイの作品(1995年)で、ちょっとだけ期待してみましたが、結局よくわかりませんでした。

 香港を舞台に、殺し屋の男とエージェントの女、さらに口のきけない男と恋人らしき女、その4人が主に出てくるのですが、その関係がどうなっているのかよくわからないまま映画は進んでいきました。

 

『大コメ騒動』

 実話をもとにした邦画で、社会派の要素もある娯楽映画仕立てですが、もう一息、という印象です。

 1918年富山の田舎町で、どんどん米の値段が上がってことに対して、女たちが団結して「コメをもとの値段で売れ」と立ち上がった騒動です。

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 大正時代の社会情勢、田舎町の人間関係等もそれなりに描かれていました。女性たちの仲間づくり、団結、リーダー像、闘いへの踏ん切りなどで盛り上がりありました。

 富山の米騒動は、近代日本の民主主義のエポック、大正デモクラシーの一端として学校の授業で習ったように思っていました。たしかに社会主義や労働運動が広がった時期ですが、組織的に広がった闘争ではありません。

 でもマスメディアなど発達、教育の向上など、女の位置、少しずつですが社会全体が変化していく中で、地域的な連帯で闘った昔の一揆が、情報として全国的に伝播し、それぞれの地域でも闘いへと進んだ感じがしました。

 そのあたりがわかるような俯瞰的要素、大阪からやってきた若い新聞記者がその役割だと思いましたが、力不足なのか、うまくはまっていません。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』

 奇人たちの集まり、強烈な殺戮シーン、という特徴を持ったデンマーク映画です。

 列車事故に巻き込まれて妻が死んだ、元軍人が、その事故はギャング団ROJが仕組んだもの、という話を聞き、彼らを皆殺しにしようと動きます。

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 その話を持ち込んだ数学者と彼の仲間も協力を申し出ます。みんな変人です。インターネットなどを駆使してROJたちの動向を探ります。そして自動小銃などを持ち出して彼らを殺し始めました。街中でぶっ放します。

 ROJたちも逆襲に転じて・・・・。

オチは列車事故とROJは無関係であることがわかりますが、でもギャング団は全滅してよかったね、でした。

 主役の元軍人を演じるのはマッツ・ミケルセンデンマークを代表する俳優です。シリアスな社会派にも、このようなハチャメチャな映画にも出ています。

 しかし元軍人とはいえ、デンマークでは銃火器は手に入りやすいのか。高度の福祉国家で、理想的な住みやすいイメージのデンマークですが、酔っぱらいの映画『アナザー・ラウンド』も含めて変な国です。

 でもよく考えれば元はバイキングですから、傍若無人そのままの感じです。

 題名「ライダーズ・オブ・ジャスティス」はギャング団ROJの名称です。

『ボストン市庁舎』

 東海岸の古い都市、マサチューセッツ州ボストン市の市政が描かれるドキュメンタリーです。世界最高のドキュメンタリー作家であるフレデリック・ワイズマンが、前作『ニューヨーク公共図書館』に続いて、自治体の業務をとりました。4時間34分の大作です。

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 貧困、ホームレス対策。大麻の店舗の出店。LGBTQ、人種差別、福祉、教育、請負契約等の現場を撮っています。そこには職員がいて市民そして事業者たちもいます。

 長くて退屈ではないですが、ちょっと難しい感じの映画です。前作『ニューヨーク公共図書館』(3時間25分)も長尺ものでしたが、まだわかりやすかったです。

 自治体業務の広範囲で複雑であることで、自治体の業務を整理してとらえることは難しいと思いました。図書館は「民主主義の砦」という言い方が胸に落ちましたが、自治体は権力行政でもあるので、そう簡単には説明できません。

 ウォルシェ市長は住民の側に寄り添った行政サービス、民主主義、多様性の共存などを強調しています。それがちょっと鼻につきました。

 ワイズマンは、題材について事前のリサーチえお一切しないのだそうです。ですから市政や地方自治にあまり知識がなく、偏見を持たずに「そこにある」題材を撮るといいます。でも何を選ぶか、その編集に彼の思想がにじみ出ています。

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 だから感動的です。惜しむらくは市庁舎には市職員の労働組合もあるはずで、そこの場面が欲しいと、私は思うのです。彼らは自分たちの賃金、労働条件だけでなく、より良い仕事をすることにも関心があるはずです。それは市政に大きな影響を与える要素です。

 もう一つ、米国の公務員と日本の公務員の違いを踏まえていないと見方を間違えます。米国の幹部職員は政治的任用ですが、日本では中立を求められます。

2022年1月14日15日16日美濃の旅

 16日に木曾三川公園マラソンに出るので、ついでに郡上市岐阜市を観光してきました。その週は全国的に寒波が襲ってきていました。高速道路も積雪で通行止めが出るなど、ちょっと大変でしたが、1516日の天気は良くなりました。

14日

 いつものように神戸西ICから山陽自動車道に入り、三木JCT、神戸JCTから新名神高速道路、高槻JCTで名神高速道路に入りました。

 道路は北摂のあたりを通っていますから、積雪はありませんが吹雪が襲ってきます。名神高速道路に入ると吹雪は収まり、京都を抜けて滋賀の彦根あたりから再び雪景色になりました。そして関ヶ原ICからは通行止めで地道、国道21号に降りました。広いバイパス道路ができていましたが、交通量は多かったです。途中、丸亀製麺カレーうどんを食べました。

 各務原ICで東海北陸自動車道に乗ります。うまい具合に、郡上八幡ICまで通行出来ました。道路には雪はありませんが、両側の街、田畑、山はかなり雪が積もっています。

 ICを出ると、道路上にも雪が積もっています。広い道路はかなり溶けていますが、まちなかの狭い道路は雪が残っています。住民が除雪していました。

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郡上八幡北町まちなみ

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街の西側を流れる小駄良川

 郡上市2004年に7か町村が合併して1030㎢と大きな市になっています。人口は3万9千人です。郡上八幡と言われる郡上城がある地区で有名な郡上踊りがあります。

 お城は小高い山の頂にあり、積雪のために車では行けないので、町中をぶらぶら歩きました。街は雪が残っています。深い所では4、50cmあるようです。町の人に聞くとこんなに積もったのは久しぶりだそうです。例年は2,30㎝積もってもすぐに融けたそうです。

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郡上城

 郡上八幡博覧会に入って、郡上の歴史をみて、そこの職員が郡上踊りを実演してくれました。7月終わりから9月初めまで狭い八幡地区のどこかで毎日のように踊られるようです。最高潮は盆のあたりで、徹夜で踊ります。

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 踊りの種類は何種類かありますが、比較的簡単、単調で、はじめてでも「すぐに踊れる」と言っていました。

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 下駄を鳴らしながら踊るそうですが、ひと夏で歯がちびてなくなるほどです。

 雪でびちょびちょですが、街並みを見ようと散歩しました。古い酒屋さんがあり地酒を買いました。「郡上踊」のラベルを張った「踊り免状」です。店主が自慢するこの店にしかない、硬水を使った珍しい酒です。

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 帰って飲みましたが、おいしかったです。

 町はずれに新しい郡上市歴史資料館がありました。あまり資料の展示はなく、文献の収集と研究の場所だそうです。

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 この日の宿は、国民宿舎「せせらぎ街道の宿 たかお」にです。市街から少し離れていました。宿舎の辺りは交通量が少なく、道路が凍結していました。サイクリング・ツアーの人たちがよく利用しているようです。

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せせらぎの宿 たかお

 この日の宿泊は私たち以外に2組か3組の感じです。食堂でも風呂場でも人影はほとんど見ませんでした。

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夕食 質素ですが特別に頼んだ飛騨牛のステーキはうまかった

15日

 郡上市内には合併する前の町村ごとに郷土博物館があるようです。その一つである岐阜に行く道の途中である美並町のふるさと館に行くことにしました。「円空の里」とあります。

 高速道路に乗らずに地道を走り、長良川本流に沿って走る国道156号から外れて、谷筋の道路に入りました。

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円空ふるさと館・生活資料館

 円空は江戸時代の美濃に生まれた仏師で、素朴な木彫りの仏像をたくさん(生涯に12万体と推定、5300体を発見)彫りました。この地には155体あるそうです。

 円空の像は写真は禁止とあったので、初代名誉館長と彼の描いた絵、生活資料館の筏流しの模型を撮りました。

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 さらに南下して岐阜市街に入ります。金華山の麓の駐車場に車を置いてロープウェイでその頂にある岐阜城へ。

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金華山岐阜城、右端に見えているのがロープウェイの山上駅

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岐阜城

 斎藤道三織田信長の居城として名高いですが、329mという高いところにあるは、鎌倉時代に建てられた軍事用の砦の名残です。美濃地域一帯を治める政治経済の拠点では不便です。居館はふもとにあったとありました。信長も10年後には安土城に移っています。

 岐阜という名は織田信長が、中国の故事に倣ったそうです。それまでは地名は「井口」城は「稲葉山城」と言っていました。

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岐阜城模型

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岐阜城復元図

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天守閣から西を見る はるかに雪をかぶった伊吹山が見えた

 その周辺は公園になっていて、岐阜郷土博物館、加藤栄三・東一美術館を見ました。

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郷土博物館にあった美濃の地図

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 そして岐阜駅の中にある岐阜平和資料室にいきました。

 それほど大きな部屋ではありませんが、岐阜駅の構内にある市民会館の一部で便利です。

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岐阜の市街地もほぼ壊滅状態です

 宿泊は、岐阜市街から少しはなれた養老温泉にある「なでしこの湯」です。岩盤浴をしました。

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16日

 この日の朝はよく冷えていました。車を日陰に置いていたものだから、フロントガラスが氷結していました。ホテルにぬるま湯をもらって、かけてから出発です。

 8時に出て、養老町から海津市、木曾三川公園へ30分ほどで着きました。同じ公園内ですが、駐車場からマラソンのスタート地点まで歩いて15分ほどあって、910分スターですから、ちょっと焦りました。

 広い長良川左岸の河川敷、片道5㎞、往復10㎞を2周に走るので平坦ですが退屈なコースでした。

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 2時間8分5秒という記録ですが、コロナ禍で初めてのハーフですからこんなものです。

 レースの後、桑名の銭湯に入り、昼食をとってから帰路につきます。桑名ICから新名神高速道路に入り、草津JCTで名神高速道路に合流しました。

 桑名から、正面に1000m級の山が連なる雄大鈴鹿山脈を見ながら走りました。やがて山脈に入っていくと山の険しさを感じます。

 15年ほど前、信楽に行ったときに工事中の新名神高速道路を見ていましたが、山の中腹あたりを通っていました。トンネルと橋梁であったと思い出しました。

2022年1月に見た映画

ダーク・ウォーターズ-巨大企業が恐れた男』『偶然と想像』『99.9 刑事専門弁護士』『swallow/スワロウ』『天使の涙』『大コメ騒動』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『ボストン市庁舎』8本です。よく見ました。とりあえず3本を書きます。

ダーク・ウォーターズ』

 実話に基づく映画です。米国の世界的な多国籍化学薬品大企業デュポン社が引き起こした環境汚染と闘った弁護士の物語です。20年もの年月をかけて勝利を勝ち取りました。

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 しかし大企業と闘うには、ものすごいエネルギーが必要であると描かれています。

 1998オハイオ州シンシナティにある大手弁護士事務所に勤めるロブのもとに、田舎の祖母の知り合いだという農場経営の粗野な男テナントが訪ねてきます。

 テナントは、自分の農場の牛の様子がおかしい、次々に死んでいく、隣に立つ工場の廃液のためだから、訴えてくれと頼みます。

 ロブは本来、企業側に立つ弁護士で、いったんは断りますが、テナントの農場があるウェストバージニア州を訪ねました。ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」が流れます。

 荒廃した川や農場の状況を目の当たりにしたロブは、知り合いのデュポン社顧問弁護士に資料を要求しました。

 膨大な資料が届き、デュポン社が垂れ流す汚染物質もだんだん明らかになってきます。しかもその危険性をデュポン社も知っていたのです。

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 莫大な利益を生むフライパンに使われているテフロンの危険性が暴かれました。

 勝てるかどうかわからない、しかも膨大な労力を必要とし、報酬も期待できない仕事を引き受けて頑張りとおすのは、並大抵ではありません。しかもロブはもっと楽して高い報酬を得る仕事を知っているのです。弁護士魂かなと思いました。

 おもわず大手サラ金の弁護士であった大阪の二人、政治家となって弱い者いじめの好きな橋本、吉村と比べてしまいました。

『偶然と想像』

 濱口竜介監督の短編オムニバス映画。『魔法(よりもっと不確か)』『扉は開けたままで』『もう一度』です。国内でも国際的にも評価が高い監督ですが、私はちょっと「合わないな」と思いました。

 三つとも、私の好きな奇妙な味の映画なのですが、素直に面白かったという評価ができないのです。その一つの理由はセリフが多く、映像で語る映画ではありません。もう一つは描かれる人間像に惹きつけられない、魅力を感じないのです。

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 『魔法(よりもっと不確か)』は、別れた男女の心残りが奇妙な関係で表現されました。親友が、別れた男と付き合い始めたと聞いた女が、その男に会いに行きます。

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 男の事務所の中で、二人のこれまでの行き違いなどが、ウィットにとんだセリフでやり取りされます。どちらも頭がよくて、男は経営者で、女性社員の受けもよいようです。

 女からちょっかいを出しましたが、それでよりを戻すのか、親友との関係を見守るのか、踏ん切りをつけないまま、映画は二通りのラストシーンを作りました。

 『扉を開けたままで』は、主婦が自ら仕掛けたハニートラップに嵌って離婚まで行ってしまう、謎多き結末です。

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 彼女は大学生となって学びながら、若い同級生と不倫をしています。その男にそそのかされて、芥川賞を受賞した指導教授にハニートラップを仕掛けます。その小説の官能場面を朗読して、その気にさせようというものです。

 しかし教授は教官室の扉を閉めず、それに引っ掛かりませんでした。ところが、その朗読の録音を教授がメールで送ってくれといいます。

 そのメールを学内の違う人に送ってしまいました。その結果、教授は離職し彼女は離婚しました。

 しばらくして彼女と不倫男が通勤バスで再会するも気まずく別れます。

 『もう一度』は、高校時代の同窓会のために仙台に帰ってきたキャリアウーマンが、帰る途中の仙台駅前で、その同窓会を欠席した親友と再会して、彼女の家に行ってしばしの団欒を楽しみます。

 しかし、途中から二人とも人違いしていることに気づいて、大笑い、で終わり、とならずに、お互いに気に入って、改めて友達にあるという話です。

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 三つとも「そんなことあるはずがない」と思うけれども「あったら面白い」話です。人間の深部にふれるような内容があるわけではなく「なるほどねえ」で終わります。

 出世作である『ハッピー・アワー三部作』も見ましたが、そこで描かれる主人公となる数人の女性像もに同じような感想を持ちました。共感共鳴しなくてもいいのですが、もう少し私が「魅力的」だと感じる登場人物がいればいいのですが、そこが合いません。

 でも、もう少し見ていこうと思います。

99.9 刑事専門弁護士』

 テレビドラマの映画化です。

 テレビでは珍しく最高裁事務総局が出てきました。そこが、憲法の定める裁判官の独立をゆがめ、支配しているという瀬木比呂志さんの小説を読んでいたから、批判的に描いていたので「これは」と思いました。そして映画ではどこまで行くか、と思って、期待してみました。

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 しかしがっかりです。「名張毒ぶどう酒事件」をモチーフにしていますから、えん罪事件を生み出す、検察や裁判所という裁く側の問題を描くのかと思いましたが、そうではありません。そして冤罪の怖さも描き足りないと思いました。

 犯罪が起きた時に再現を作り出して、そこから捜査側の矛盾をあぶりだしていくという、割とオーソドックスが方法です。しかし警察や検察が、被告の不利になるような証拠は出さない、とか裁判所の検察びいきなどを描くのを避けていました。

 その点が、娯楽作品だからやむを得ないとしても、テレビドラマよりもつまらなくしています。