1月例会『わたしを離さないで』プロジェクト

 11月4日1月プロジェクトで試写をした。これは大変な映画だ。私にとってイヤな映画だった。決して駄目な映画でもつまらない映画でもない。嫌いでもない。人間の残酷さを突きつけるようで見ていて辛いのだ。これを会員のみなさんに見ていただくにはどうしたら良いだろう、と悩む。


 しかし、そう思う私は少数派だろう。この映画をすでに見ている委員はすべて、非常に惹かれるという。切なさや哀しさ、人生や人間とは何かを考えさせるというのは、この映画を評価する場合、必ず出てくる、と思う。
 登場人物は、みんなみんな静かな静かな人々で、怒りは内にこもっている。どうしようもない生まれながらの運命を受け入れながらも、それでもよりよく生きたいと願っている。
 そう、主人公たちは臓器提供を前提として生を受けたクローン人間たちである。この映画はそれを謎にするものではなく、それを前提に生きる人々、それを前提として彼らを作った人々の世界を描く。
 私は彼らをそういう環境においたすべての人間に怒りを覚える。例え、この世界がまったくの空想であっても、そういう選択をする人間をすべて許せない、という思いだ。
 だからイヤな映画だ。
 だが、この映画は映画自身を否定している。この映画の重要人物が「彼らに心があるのか」という問いを発することで、明快にわかる。しかも翻って、現実の世界、こちら、スクリーンの外にいるわれわれの世界をも告発している。すべての生命の尊厳を知ろうとしない、残酷さを自覚しない、われわれの首元に鋭い刃を突きつける。
 何かわけがわからない説明だが、映画サークルの機関誌の解説や背景ですべて明らかにすることになるだろう。