『樫の木坂四姉妹』

 8月31日に見ました。神戸演劇鑑賞会の例会です。私は運営サークルの一員として参加して、会報係りを担当し。そしてこの日は主演の大塚道子さんのインタビューにも加えてもらいました。

そして芝居は期待にたがわぬ素晴らしいものでした。3人の名女優のやりとりは迫真の場面あり、和やかな姉妹、強烈な皮肉の台詞、どれもこれも完璧に思えました。
ちょっと気の毒だったのが、彼女たちの若い時代を演じた場面です。若い俳優さんたちの演技は、三大女優達に比べれば学芸会といわれてもやむを得ません。それは彼女達が悪いのではなく3大女優がすごすぎたのだと思います。

本当にこのばあさん達はすごすぎ。若い人も頑張っていたとは思います。

しを、ひかる、ゆめの抱えた人生を見よ、この哀しくも悲壮な中で、強烈な生き様をこの芝居は描きました。おそらく一人ひとりの被爆者の投影だと思います。さらにここに出てこない人々も、2000年の式典に姿を現したということで、その思いが伝わりました。
核兵器の廃絶さらに「原子力の平和利用」からの脱却を、なんとしても被爆者の方が生存中に実現することが、人類の緊急の課題だと再認識しました。
夜のコミュニティ
9月5日誘われてトルコ料理を楽しみながら芝居の話をするコミュニティに行きました。彦根からのお客さんもいて13人です。
ベリーダンスのサービスもあり、おなか一杯食べてしまいました。お店は「カフェ・イスタンブール」です。オーナーは神戸とトルコをつなぐトルコーべ(神戸・トルコ友好協会)の理事さんでした。
http://istanbul-kobe.com/index.html
『樫の木坂4姉妹』については、ほぼ全員高い評価です。3大女優の演技力に加えて、劇作家、堀江さんの力量も評価されました。前作『足摺岬』も含めた戯曲の持つ力に言及がありました。
しかし見逃された視点についての指摘もありました。それは原爆を描くのであれば、強制徴用された朝鮮人たちの被爆に、少しでも触れてほしかった、という意見です。
全てを描くということは出来ないけれども、その当時の社会の最底辺に追いやられた人々の被爆は、当然忘れてはならない問題です。是非、制作側に伝えるべき意見だと思いました。
そして、私が書いた「3・11後にこの芝居を見る」も話になりました。演劇鑑賞会になかった視点ということです。芝居の中身を紹介するのではなく、この芝居を取り囲む世界を紹介しています。見る側の心構えを、自分の思いに即して書きました。
労働組合的」という指摘もありますが、私の経験から言っても、労働組合がそういう観点を持っていただろうか、あるいは持っていたとしたらいつのことだろうと、思いました。これは私の文章が「硬い」という批判の現われだと思います。
これについては、当然賛否があるでしょうが、多くの人から聞きたいと思いました。

彼女たちのたどった人生を、現代的な視点から見つめる芝居だと思いました。戦争と原爆が変えた人生、その人生を見つめ直す人々の物語です。
戦前に樫の木坂に大きな家を買ったと思える、その当時の高級サラリーマン一家の変遷です。造船会社の設計部長で、戦後に公職追放されますから、その社会的位置の高さがわかります。こども達も上級学校に進んでいます。
ですから主人公たちの社会的階級は労働者であっても、支配する側にいたと見て良いのではないかと思います。

(もう少し芝居の中身について書いて見ます。続く)