「春、忍び難きを」俳優座

こういう芝居が好きです。
演劇鑑賞会の9月例会です。4日に見ました。

終戦直後、玉音放送から、1年半までの長野県松本市郊外の農村の庄屋の家が舞台です。
庄屋で村長の望月多門、その妻サヨ。多門の姉の出戻りトメ、跡継ぎの次男の嫁よし江、復員してきた3男三郎、挑戦から引き上げてきた長男夫婦太郎と佐和子(出てこないが、こども達)、長女の夫で大学教授葛西、望月家の下男、朝鮮人の朴、村役場の「赤紙配達人」上條、望月家の小作房吉、大陸花嫁のすえ、戦死した次男の戦友と偽った幸田。
13人が入れ替わり立ち代り出入りします。彼らとともに農地解放や戦時中のこと、これからの生き方など、さまざま問題が現れてきます。
その一方で、季節はめぐり農作業は営々と続けられていきます。
人間の社会、時代は戦時から戦後へと大きく変わっていきますが、変わらないものもある、という感じに見えます。
しかし季節や自然は変わらなくとも、人間社会が変われば、それらとの付き合い方も大きく変わっていくと感じます。
この芝居では1年半ほどで、大きく変わった人々と、それほど変わったようには見えない人々が居ますが、現代から見ると、「大地の居候」とか「土とともに生きる」みたいなことは軽々しくいえません。
当然、そんなことも計算されて芝居は作られていると思います。
戦中戦後の変化、そして現在の農村のことを少し知っていないと楽しめない芝居かもしれません。
望月多門の小笠原さんがいちばん面白かった。