『銀の滴降る降るまわりに』文化座

神戸演劇鑑賞会の11月例会の標記の芝居を見ました。

私はとても好きな芝居です。アジア太平洋戦争の沖縄戦線の一部隊、炊事班の話です。激烈な血で血を洗う、20万にも死傷者を出した沖縄の戦闘が始まる直前を描きました。
ですから、ある面静かな芝居です。でも大日本帝国軍隊の本質を的確に描いています。
炊事班、そこにアイヌ出身の兵、沖縄で徴発されたされた兵、そして現地の人の家を摂取していること。見事に、それぞれの人物像を描き分けたと思います。

沖縄のおばあを演じた佐々木愛、さすが文化座です。
現在に続く沖縄
沖縄の人の5人に一人が死んだと言われます。沖縄の人々が普通に暮らしている土地で米軍が上陸して本格的な戦争があったのです。本土は空襲はありましたが、米軍との直接的な戦闘を経験したのは沖縄だけです。
そしてそのまま土地を奪われて米軍基地が造られて現在に至っています。
この芝居には、現在の沖縄の原点が秘められていると私は思いました。
炊事班と言う日本軍の中でも最下層に位置づけられ、そこに日頃から差別されてきたアイヌ琉球人を配しました。
戦前の普通の内地の人間は、アイヌ琉球を差別していたことが良く分かります。自分達も踏みつけにされているのですが、その下の人間を作ろうとする、という現実がありました。
でもこの芝居のすごいところは、一緒に働く人間は団結するというところです。しかも本当に大変な戦場でも自分の最善を尽くそうと努力する、と描きました。
その上に分断統治する、無責任な支配層がいると言うことです。