『七つの会議』『岡本太郎の沖縄』『夜明け』『蜘蛛の巣を払う女』『こんな夜更けにバナナかよ』『小さな独裁者』『ザ・ウォーター・ウォー』『国家主義の誘惑』『人情噺の福団治』『共犯者たち』10本、率直にいって我ながらよく見た。うち4本がドキュメンタリー。劇映画は邦画洋画3本ずつ。結果的にうまいバランスで見ていると思う。
意外に良かった『こんな夜更けにバナナかよ』は西神ニュータウン9条の会HP3月号に投稿したのでそちらを見てください。
例会の『ザ・ウォーター・ウォー』は別のところで感想を書きます。
『七つの会議』は池井戸潤原作で、大企業の犯罪の本質的な元凶を描きます。七つの意味が分からない。原作は連作短編8編になっているからそこにあるのだろう。映画では冒頭に出てくる営業部会議、セクハラ懲戒委員会、担当が主となる(残業時のドーナツを議論した)職場環境改善の会議、東京建電の役員会議、親会社の会長の御前会議、企業犯罪を裁く国の第3者委員会までは分かった。
「居眠り八角」などという、会議でわざとらしく眠り仕事をサボる怠慢な労働者をつくるのはどうか、と思う。それは彼の上司、営業1課長に対しするパワハラの罠を仕掛けるためだとなるのだが、『釣りバカ日誌』でもいそうでいない人間像を作っている。彼の素の姿とあわない。面従腹背的なモデルができなかったか。
『夜明け』は、是枝裕和、西川美和の薫陶を受けた新人監督ということで、期待したのだが、今一歩という評価。脚本の流れと主役の青年(過去を背負っている、自殺未遂を助けられる)がミスマッチの感じ、柳楽の顔がりりしすぎて、もっとうじうじ感じのある役者の方がいいと思う。
助けた小林薫と柳楽優弥の関係が通じたり通じなかったりで、木工所を継いでほしいという小林の願いを、山場でスルーするのだが、一晩走り続けてまた帰ってくる、という中途半端な感じで終わる。
どうもこのラストに共感しない。
洋画は『小さな独裁者』。第2次大戦末期のナチス・ドイツの実話に基づく映画。脱走兵が空軍大尉の制服を盗み、それに扮して味方を騙しながら、ドイツ軍の戦時刑務所で脱走兵などを大量に処刑するという話。実際には彼は21歳というから、みんな高官などではない、おかしいと思うはずだが、ヒトラーから特命を受けている、という彼の言葉を信じていく。
そして手続きを踏まずに脱走、窃盗等の犯罪者を処刑するという、彼の無茶苦茶な命令に従っていくのだが、刑務所の責任者も半分以上、自分がやりたいことを命令として出すように仕向けることで、自分の責任ではない、命令を受けたということで殺していく。
人間は責任が問われないと堕落する、という事例。
『蜘蛛の巣を払う女』は「ドラゴンタトゥーの女」3部作の第4弾。これまでが面白かったから見たのだが、物足りなかったか。
天才ハッカー、リスベットの出生の秘密が明らかになる仕掛けで、暴力的な男を許さない、というこの映画の特徴が良く出ていて、その点はいいのですが激しいアクション、暴力シーンが続き、ちょっと見るのがしんどいと言う印象。
ドキュメンタリーは『人情噺の福団治』がよかったですね。私が福団治のファンと言うこともあるが、昔、彼の「薮入り」を聞いて鳥肌が立つような、父親の心情描写に痛く感動していて、彼が次男を幼い頃になくしているのを知って、そうかと納得した。
また手話落語や全盲の弟子を取っているとか、肯定的な生き方が紹介される一方、長男の福若が結構いい加減な男であり、日本会議に心酔する思想の持ち主で、ヘイトスピーチで有名な市会議員を呼んで、繁昌亭で独演会をしたところまでも描いてる。
『共犯者たち』は韓国のテレビ会社の労働者の闘い。李明博、朴槿恵大統領の時代、政権の代理人が責任者として送り込まれて、いかにテレビメディアが変質させられたかを告発する。マイケル・ムーア張りの突撃インタビューもすごいと思うが、韓国マス・メディア全体像がわからない。
その辺りの知識がないのでちょっと分かりにくい。
『国家主義の誘惑』は、現代の日本に焦点を当てて、アベ政権と戦前が良く似ていること、その危険性を指摘するドキュメンタリー。企画や狙いはいいのだが物足りない。なえか。
『岡本太郎の沖縄』は1960年ごろに岡本太郎が沖縄の写真集を出しているがそれを元に、彼が何を見たかを探ろうとしたのだと思うが、面白くない。