2018年のノンフィクション

 今回は、昨年読んだノンフィクションの分野の本を紹介します。
 長年の広島カープのファンで、プロ野球関係の本を読んできました。週刊ベースボールも立ち読みですが、広島カープ関係の記事と野球評論家のコーナーを拾い読みしています。野村克也氏、岡田彰布氏、川口和久氏が好きですね。中でも野村さんは、否定的な指摘についても実名を出してかなり率直にものを言っています。
 図書館から借りたものですが、単行本では2018年は『プロ野球重大事件−誰も知らない”あの真相”』『私が見た最高の選手、最低の選手』(野村克也)『プロ野球のサムライたち』(小関順二)『采配』(落合博満)『教えない教え』(権藤博)を読みました。

 一番よかったのは『プロ野球重大事件−誰も知らない”あの真相”』です。野村さんの本は具体的で、しかも良いも悪いも選手の名前を書くのです。もう怖いもの知らず、と言うことかもしれませんが、自分の眼力、選手の評価に自信を持っていたのでしょう。
 この本は「重大事件」ということで選手やプレイ以外の野球界全体について彼が考えたことを書いています。
 いちばん最初「序章 プロ野球は大丈夫か?」で「ナベツネ・清原の乱」を載せて、好成績を残していた中日落合監督の解任、DeNA参入等を折り込んで「オーナーとは何者なのか」「ならば球団は誰のものなのか」「もはや名監督は不必要なのか」という問題提起をしています。
 決してすっきりとした回答を示すわけではないのですが、自身の経験をもとに色々と論じています。そしてやんわりとですが、読売グループの最高権力者、渡邊恒雄を批判しました。
 オーナーが球団に関心を持つのは良いのですが、度が過ぎている、というのです。それを率直に言うところが野村さんの真骨頂でしょう。
 この本では、彼が知りえた日本プロ野球界の内幕について、例えば長島の巨人軍入団、別所投手引き抜き事件、江夏の移籍など実名を出して、事細かに語っています。
 また『私が見た最高の選手、最低の選手』では超一流と目される松坂、城島、清原をバッサリ切っています。
 『采配』(落合博満)もなかなかのものでした、すべてについて「俺流」という考えを押し通しているのが良くわかります。
 『プロ野球のサムライたち』(小関順二)は元プロ野球選手でも評論家でもない、野球好きのコラムニストが書いています。データ等をよく調べて書いていますが、やはりいいところばかりを書いていて、なぜそうなのかを問う、技術論、精神面での軌跡などの分析がありません。
 野球界に何の柵がないとすれば、たとえば清原和博がなどタイトルを新人王しか取れなかったのかという分析を、生活態度などを含めて論じるべきだと思います。
 今回はプロ野球の話だけになりました。面白かった本の題名だけでも書いておきます。
現代社会はどこへ向かうか』見田宗助『朗読・語り文化の地平』木津川計『熟年売春』中村淳彦『巨大ブラックホールの謎』本間希樹『上方落語史観』高島幸次『現代の芸術』岡本太郎。いつかまたこれらの本を紹介します。