『おとうふコーヒー』感想

神戸演劇鑑賞会1月例会(125日(月)、劇団銅鑼)

様々な人生を見せた芝居

 豆腐とコーヒーが認知症予防に効果があると知りました。そういう題名です。でもコーヒーを飲みながら豆腐を食べるのは、もうすでに認知症も深刻でしょうね。この芝居の中心人物、ふみ子さんは美味しそうに食べていました。

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 特別養護老人ホーム「さんぽ」で永谷ふみ子さんの「看取り」がある夜、大きな台風が襲っていました。その一晩の出来事です。

 舞台は、その日2017917日を起点に、その1年前2年前3年前4年前と時間を行き来して、『さんぽ』にかかわる人々の素顔が次々と紹介されていきます。

    出てくるのは、入居者のふみ子さんと元消防士の金山泰司さん、施設に来ているボランティアの女と男、FTMのふみ子さんの孫・瑞樹くん、慌て者で空気の読めない民生委員・旗本さん、近くの専属医、そして施設長などの職員4人がいます。

 1年ごとに切り替わる舞台で、彼らのエピソードと人となりが次々と積み重なるので、ちょっとあわただしい芝居です。全体的にコメディタッチで、面白い展開ですが、残念ながら人物描写の深みが足りません。

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 気になったのは二人、一人はFTMの瑞樹くんですね。それから民生委員の旗本さんです。

    瑞樹くんは、まだ体は変えていないようですが、周囲にカミングアウトしている段階です。「さんぽ」の人たちは誰も気にしないで、受け入れています。なぜでしょう。福祉に携わる人はLGBTに理解あるのでしょうか。

   その一方で、ふみ子さんの看取りに彼女の子どもたち、瑞樹くんの親は来ていません。彼の家族はバラバラみたいで、これをどう見るのか、気にかかります。

    民生委員の旗本さんは、芝居の最初から慌て者で、相手の気持ちを忖度できない人間として描かれます。権力者に対する忖度はみっともないですが、弱者に対しては必要です。それが少し足りない人間性として描かれます。自分の考えを押し付け過ぎる「独善的」な感じでした。それが芝居の最後に彼のこれまでの人生、考え方が告白されます。

   人の役に立ちたいと考える真面目な人間ですが、あまりに一生懸命すぎて周囲に誤解されています。このような人とどのように付き合うのか、考えました。

 この芝居、終の住まいである特別養護老人ホームで死を迎える、ふみ子さん巡って、様々な人間の人生を並べました。それぞれにユニークですが、ちょっと煩雑だとおもいます