2021年2月に見た映画その1

『天国にちがいない』『存在のない子供たち』『聖なる犯罪者』『すばらしき世界』『鬼滅の刃 無限列車』『そして誰もいなくなった13日までに見た6本です。その後に『あなたの名前が呼べたなら』『秘密への招待状』『花束みたいな恋をした』と3本で今月も9本でした。先に6本紹介します。

『天国にちがいない』

 さっぱりわからない映画でした。

チャップリンの再来と言われるエリア・スレイマンが監督、脚本、主演を務めます。彼が新作映画の企画をもって、イスラエルのナザレを出て、パリ、ニューヨークを訪れます。彼の視点からナザレの田舎のようす、大都会の人間たちが描写されます。奇妙な感覚は伝わってきましたが「よさ」はわかりません。

『存在のない子供たち』

 レバノンベイルートに住む貧しい家族の話です。やせっぽちで尖った感じの少年ゼインが両親を裁判所へ告訴するところから始まります。彼は「僕を生んだ罪」だと言いました。

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 原題は「カペナウム」です。付けた主旨はよくわからないが、新約聖書に出てくる町の名前です。イエスが宣教活動し、そして滅びると予言したと書かれてありました。

 映画はゼインがどのように生きてきたか、日常生活を描いていきます。まるでドキュメンタリーのようですが、劇映画です。

 彼は12歳と言いますが、栄養失調のためか、やせていて小柄です。しかも出生の届けもないままに育ちました。学校に行くこともなく、日々、多少のお金を稼ぐために働いています。近所の店の手伝い、町ゆく人に商品を売りつける等の雑用で小金を稼いでいます。

すぐ下の妹は、お金のために結婚を強いられて、しばらくして死にました。

 次々と彼をめぐって色々な子供や大人が出てきます。これが中近東のスラムの実態だというようです。

 妹を売られたゼインは親に絶望して、家を出てエチオピア移民の不法就労の女性と知り合います。彼女の赤ん坊の世話をしますが、ここにも大人も子どもも不幸な生活があります。

彼女はお金を稼ぎ、故郷の親に仕送りをしています。不法就労で、彼女が警察に逮捕されて帰ってこなくなり、お金もなく面倒を見切れなくなったゼインは、赤ん坊を、養子を斡旋する男に売り渡しました。

 裁判所で「世話ができなければ子どもを産むな」とゼインは絶叫しました。 

 中近東とまったく状況が違う日本ですが、なぜか共通するものを感じます。寺脇健がプロデュースした『子どもたちをよろしく』を思い出していました。いじめの問題と子どもたちの親の状況、貧困問題がつながっているという映画でした。

『聖なる犯罪者』

 同じような不良少年を殺して少年院に入った少年ダニエルは、院内のミサを手伝ううちに、神父になりたいと思います。しかし前科者にはその道は開かれていません。

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 仮出所して、仕事を紹介されて田舎の町に行ったときに、新任の神父に間違われます。それを幸いに、神父に化けて、教会に入り込みます。彼の型破りの神父ぶりに町の人は大喜びです。

 しかし彼が少年院上がりの偽神父だとばれる日が来ます。

 小さな町ですが、大きな交通事故があり、その加害者の家族は町から排除され、被害者家族からに憎まれ、大きな溝がありました。そこにダニエルは手を差し伸べて、両者の関係修復を試みようとしました。過去の過ちを神は許す、と言う主張を感じます。

 主人公のキャラクターは複雑です。少年院に戻ったダニエルは、かつて殺した少年の兄と殺しあうような強烈な殴り合いをしました。そして終幕、カメラは町の教会へ切り替わりました。

 実話に基づく映画です。カソリック信仰の厚いポーランドならではと思いました。

『すばらしき世界』

 西川美和の脚本、監督、主演は役所広司、原案は佐木隆三「身分帳」です。

若いころから暴力団に所属して前科を重ね、ついには殺人を犯した前科者が、出所してきて堅気の人生を生きようとする映画です。西神ニュータウン9条HP3月号に書きます。

面白い、いい映画です。

鬼滅の刃 無限列車』

 観客数2400万人を超えた、興収も『千と千尋の神隠し』を超える365億円で歴代1位、社会的現象となったので見ました。しかし、がっかりしました。私にはこの映画の魅力が全く見えませんでした。

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 絵がきれいなわけでも、奇想天外のストーリーがあるわけでもなく『ドラゴンボールZ』のようなひたすら、鬼と鬼滅隊のマンツーマンの戦いがあるだけです。鬼は人間を襲い食べるという設定のようですが、バリバリと頭から食べるというようなシーンはなくて、ひたすら戦いです。

   戦いがメインなのですが、スピード感あったり変幻自在にというのはありません。彼らの体や剣の動きが描かれるのではなく、術を唱えて剣を振ると、空間に電光、炎、水等が走るというものです。

鬼と鬼滅隊のキャラクターも、今までの漫画などで作られたものと似ています。その人間性は懐古的保守的です。

新たなものがない、と言うのが特徴です。

そして誰もいなくなった

 アガサ・クリスティ原作、1945年制作のルネ・クレール監督のミステリー映画です。離れ小島には、招かれた8人の客と彼らの世話をする2人の使用人がいました。彼らは全員、過失もしくは事故、あるいは故意に人を殺したが、法で罰せられていない、と言う秘密を抱えていることが、最初に暴露されます。

そして彼らは「10人のインディアン」の歌をなぞるように、一人一人殺されていきました。小さな島には10人以外は誰もいません。するとこの中に犯人がいると、お互いに疑心暗鬼になっていきます。

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殺害のシーンとかは描かれず、登場人物それぞれの人間像が描き分けられる上品な映画です。最初はわからなかった人間関係が、一人ずつ殺されていくたびにわかってきます。

小説と映画は結末を変えていますが、ミステリー映画として上手に作っています。さすが名匠ルネ・クレールと言う映画でした。