2021年2月に読んだ本

『ほめる力/立川談四楼』『世界2月号』『林家たい平 特選まくら集/林家たい平』『神の城/本城雅人』読了したのはわずか4冊でした。2月はついつい惹かれて落語家の本2冊を読んでいます。

このほかに中途半端に止まった本が34冊ありました。それはまた読了した時に書きます。

紹介する本が少ないので、分けずに書きましたが、けっこう長くなって、そして遅くなりました。

『ほめる力/立川談四楼

 談四楼はFBで率直な政権批判を言っているので、どんな人かと思い読みました。普通の常識人です。談志の弟子とは思えません。この人、毎日新聞の人生相談も担当しています。

f:id:denden_560316:20210313234822j:plain

 本には「人に認められる極意教えます」という副題がつく、エッセイ集です。3章建てで「ホメ方・ノセ方の技術」31篇「世渡り上手となるために」51篇「私も叱られてばかりでした」14篇ですから、どれも23頁の短いものです。

 落語家ですが極めて常識的なことを言っています。ちょっと気になった言葉を紹介します。

「談志は面と向かって真剣に褒める」「人は共感、感心してくれる人が好き、多少大げさだっていい」「好きなものが共通している相手より、キライなものが共通している相手の方が実は長続きする」「囃されたら踊れ」「新聞を侮るなかれ、一紙熟読せよ」「匿名性に隠れている奴は絶対に信用しない」

そして談志に命令された「2時間の映画を15分に圧縮し」話をする、これはとても有意義な作業です。談志は送られてきた試写会に弟子を行かせて、弟子からこのようにして映画を聞き、そしてあたかも自分が見たように語ることがあるそうです。しかもそれが見事で映画よりも面白い、と談四楼は評価します。まさにイリュージョンです。

『世界2月号』

知らないことが多く書かれているので、ついつい紹介が長くなります。でも要約した紹介ではなく、感想的要素が多くなっています。

【特集①「大絶滅の時代」②「阿波根昌鴻 態度としての非戦」】

①地球上で生命が生まれて40億年近い、その間5度、生物絶滅の時代があったらしい。直近は6550万年前。火山の大爆破や、隕石が降り注いだ時代等で、大きく地球環境が変わったためです。そして現在が6度目で、しかも過去最大の大絶滅が、我々人類の手で引き起こされていると書かれてありました。

 その通りなのだろうと思います。

②阿波根昌鴻さんを初めて知りました。沖縄戦で子どもや家族を亡くし、自らは九死に一生を得て、戦後は故郷の伊江島で農業しながら、米軍の土地接収反対、反基地闘争など、平和を願う戦いを貫いた人です。

【脳力のレッスン特別編/寺島実郎】「バイデンの米国と正対する日本外交の構想力」

 今回の米国大統領選挙の特徴を知りたくて新聞、雑誌、インターネットの論考で探してみたのですが、この記事は答えを出してくれました。寺島さんの話がわかりやすいと思います。

 米国が「分断されている」というのが大方の見方です。民主党支持と共和党支持が「話もできない」という状態だと新聞の論評を読みました。世論調査でも両党支持者の重要と考える政策課題そのものが大きく違います。民主党支持者はコロナ対策が最重要課題と考えているが、そう考える共和党支持者はわずか4%です。まるで住んでいる世界が違うようです。

分断に加えトランプに多くの支持(前回63百万→74百万)が集まったのが、私にとって驚きでした。トランプの差別主義、フェイクを米国民は嫌がっていません。白人でプロテスタント72%がトランプに投票しています。

 バイデンの最大の勝因は投票率60%から67%に上がったことです。そして女性や黒人の多数が彼を支持しています。 

片山善博の『日本を診る』】「国の新型コロナ対策がうまく進まない背景を見る」

 見事なくらいに、現在の政権の基本姿勢を指摘しています。

 「国民に注意を呼びかけるばかりで、国として感染拡大防止につながる施策は何もない」とバッサリ。それは、これまでの施策の点検をして「その反省や教訓を今後の施策に生かそうという姿勢が見られない」からで、「ご本人が聞く耳を持たないのか」「担当官庁や現場の意見を聴いて、じっくり検討しましょう」という声が周囲から出ないからだろうと、言いました。

 安倍、菅政権を通じて高級官僚もふくめた内閣、政権中枢を忖度し従属する組織に縛り上げたということです。

 神戸市政もそんな感じがします。コロナ対策では、医療の限界を強調し、医学と医療従事者の努力を評価しながら、個人の行動の規制と自粛を求めています。しかし公衆衛生、医療体制の改善、充実については見事に言及しません。

無人島ではない、故郷だ】「馬毛島を、知っていますか/八板俊輔(西之表市長)」

 鹿児島県西之表馬毛島のことです。1月の市長選挙で再選されたのは、馬毛島を軍事基地にすることに反対する八板市長でした。155票という僅差ですが、市民は自衛隊、米軍の基地にすることに反対しました。

 国の安全保障を地方自治よりも上に置く意見もありますが、特定の場所での基地建設が安全保障と直結するのでしょうか。地政学宇宙戦争の時代にも有効なのか、疑問です。それよりも安全保障は外交が第一であり、国民全体での周辺諸国との友好関係を築くことでしょう。

林家たい平 特選まくら集/林家たい平

 横浜にぎわい座での独演会、その他の高座で演じたまくら集30本です。12月に読んだ「快笑まくら集」がよかったので、その続編も読みました。

 言葉を職業としていますから、その使い方に敏感で、おそらく実話をもとに面白く仕立てている感じのまくらです。

 30本の内10本が本編の落語が何かを隠しているのですが、わかったのは名前について話をした時の「寿限無」だけでした。便利になった世の中の代償みたいなことを話したときは「宿屋の富」(これは上方では「高津の富」)でした。これは主人公が田舎の大金持ちであるというホラ(見渡す限りの屋敷、迷子が出る、主人の世話に30人に奉公人、泥棒が入って千両箱が83箱しか盗まれなかった等)につながるのかな。

 「『飛ぶ鳥を落とす勢い』の雨」とは言い得て妙ですが、若者が言っていたそうです。同様に言葉をよく知らないのが、弟子の林家あずみ(さんまの「恋のから騒ぎ」に出ていた人らしい)で、上下関係が厳しい落語界で彼女の思考回路を異色のようです。美人で性格がかわいらしいから持っている感じです。実際に見てみたいと思います。

 尖閣諸島問題で、横浜港で釣りをしている中国人を引き合いに「中国人が魚を取っている」いう笑いは、いい感覚です。笑点大喜利では政治批判は円楽が引き受けていますが、たい平もできると思いました。

『紙の城/本城雅人』

IT企業が全国紙、東洋新聞を乗っ取り、買収を仕掛ける話で、IT側の乗っ取る作戦と、それに抵抗する新聞社、新聞記者の闘いです。

f:id:denden_560316:20210313234853j:plain

両者が対抗して闘うみたいな感じですが、それよりも、それぞれの立場で新聞の現状の欠点、課題、そして近未来の新聞、メディアの可能性、役割について書いているのが良いです。

例えば、日本の特徴である宅配制度の是非、消費税の軽減税率や様々な規制で新聞業界が保護されていることへの批判があります。

でもどれほど実現性などがあるのか疑問です。駄目なところは、ジャーナリズムの「国民の知る権利」「権力の監視」としての役割については、現状に対する批判があまりないし、本来あるべき姿に言及しないところです。

日本のジャーナリズムの大きな問題である「記者クラブ」制度については、突っ込んでいません。

IT企業側は新聞経営について、合理化と儲かるスタイル、さらに全国紙を利用した多角的な事業展開などは示すだけで「社会の公器」を否定していますし、それは市場原理を完遂するためには邪魔であるかのようです。

株の買い占めなどはIT側が圧倒的に有利で、新聞記者の抵抗は、IT企業の最高責任者の個人的な欠陥(結果的にインサイダー取引で逮捕されるが、浮気や過去の不祥事)などを暴露して、「社会の公器」に相応しくない、と言う世論を喚起しようとします。

日刊新聞法を梃子にしようと考えます。その法律は新聞社「事業に関係ある者しか株を持つことができない」で守られていることを知りました。

この小説全体として、それほど深い社会性を持っているわけではないですが、新聞について問題提起をしていました。