2012年5月に見た映画その1

『井上陽一の世界』『ファーザー』『ブックセラーズ』『薬の神じゃない』『リーサル・ストーム』『はちどり』『キーパー ある兵士の奇跡』『ヒトラーに奪われたうさぎ』の8本でした。5月冒頭の連休は自粛していたので、おもに後半以降に見たものです。まず5本書きます。

『井上陽一の世界』

 今年の2月に亡くなられた活動弁士、井上陽一さんのドキュメンタリーです。製作=鵜久森典妙、監督=高橋一郎さんです。市場ギャラリーで見ました。

 上映まで井上さんが歌う「刃傷松の廊下」をCDで流していましたが、村田英雄ばりの美声です。

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 無声映画活動弁士は、一つの芸です。井上さんの活弁はいちばギャラリーで一度聞いただけですが、古い無声映画に命を吹き込むようでした。

 映画は彼の人生と映画にかける情熱が伝わってきました。

『ファーザー』

 主演アンソニー・ホプキンスの鬼気迫る演技でした。

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 認知症を患う父がだんだんと意識の混乱が深まる様子を映像で見せました。普通は現実世界を映像として出して、それと合わない言動をとる認知症患者の混乱ぶりを描きますが、この映画は違いました。

 父が見ている世界、彼の壊れかけた脳が作り出した世界を映像化したのです。見る側は混乱します。

 例えば、娘と介護人が入れ替わる映像が出ます。娘は二人のなのかと思いました。あるいは見知らぬ男が家にいると、父が怒鳴ります。男は「私は女婿で、あなたは私の家にいる」と答えますが、でも娘とはとっくの昔に分かれていて、そんな男はどこにもいないのです。

 映画が展開するにつれて、何が真実かわかるような仕掛けですが、それだけ父が壊れていると、怖さを感じます。

『ブックセラーズ』

 本を愛する人のドキュメンタリーです。世界最大の古書展覧会、ニューヨークのそれを映しながら、そこに集まる古書店主たちのインタビューでした。でもちょっと退屈でした。

 私は古本屋、古書店が大好きで、ちょっと時間があれば覗きます。元町商店街には新しい古本屋が増えています。

 昔、全国映連の総会が神田神保町岩波ホールで開催されていた頃、早めに行って周辺の古本屋をめぐりました。労働組合の会議が地方都市である時も、繁華街のちょっとはずれたところに古本屋を探していました。その地方の出版社が出している本が面白いです。

 八戸に行ったときは、医者で共産党の国会議員であった津川武一さんの薄いエッセイ集を買いました。徳島では「阿波狸合戦」という3部作を買いました。今も家のどこかにあるはずです。

 誰誰の初版本というような、いわゆる価値のある古書は持っていません。

『薬の神じゃない』

 中国映画で実話に基づく映画です。

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密輸入のグループ

 西神ニュータウン9条の会HP6月号に書きましたので、そちらを見てください。患者の声が中国の医療政策を動かした映画です。習近平下の独裁政権と見えても、庶民の動きには気を配っていることがわかりました。

 いい映画なので映画サークルの例会にしたいと思うのですがブルーレイがないのです。

『リーサル・ストーム』

 「老優メル・ギブソン」という感じのアクション映画でした。

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老いたメル・ギブソン

 カリブ海の島プエルト・リコの古いマンションに住む退職した警察署長メル・ギブソンが、前代未聞の嵐が来る日に悪党どもと闘う、という話です。

        辻褄が合わない話ですが、老いたメル・ギブソンが腕っぷしの強い悪党どもと、マンションを戦場に、登ったり降りたりしながら戦う、それだけの映画でした。