『異邦人』『幸福のラザロ』『一人になる』『川本喜八郎特集』『岡本忠成特集』『沖縄 第一部』『旧グッゲンハイム邸裏長屋』『5月の花嫁学校』8本でした。
『川本喜八郎特集』『岡本忠成特集』がよかったです。是非彼らの後を継ぐようなアニメ作家が出てほしいですね。
『異邦人』
アルベール・カミュ原作、ルキノ・ヴィスコンティ監督、マルチェロ・マストロヤンニ主演ということで期待して見に行きましたが、さっぱりわかりませんでした。今ではストーリーさえも記憶にも残っていません。
養老院で死んだ母の葬式のためにアルジェの郊外にやって来た男ムルソーが、海水浴場でかつての同僚の女性に再会して・・・。そのあたりから混乱してしまいました。殺人を犯して裁判にかけられますが、彼の心情に入ることができませんでした。
『幸福のラザロ』
6月例会です。イタリア映画らしい、おかしみとちょっと不思議さを持っていました。別途、感想を書きました。後日、ここにも載せますし、映画サークルの機関誌に投稿します。
『一人になる』
西神ニュータウン9条の会HP7月号に書きました。それをお読みください。
国のハンセン氏病対策に異を唱えた医師で僧侶の小笠原登の生き方を描いたドキュメンタリーです。彼の科学性、人権尊重、勇気は現代に通じます。
『川本喜八郎特集』
『花折り』『鬼』『詩人の生涯』『道成寺』『火宅』
人形アニメです。題材は日本の古典が多く、今回も『詩人の生涯』は安部公房原作ですがそれ以外は今昔物語等から取っています。
人形アニメは表情が大きく変わることがないし、細かな動きもないのですが、その大雑把なところを想像力が埋めるためでしょうか、細かく描くセルアニメや実写よりも味があります。
『花折り』は狂言です。寺内の桜の番をしていた小僧が、お酒につられて侍を境内に入れてしまう、という滑稽なやり取りです。
『鬼』は今昔物語。年老い病気になった母親が鬼となって、狩りに出ていた子どもを襲うという話。壮絶で憐れな、狂った人間の本性でしょうか。
『詩人の生涯』は安部公房。首になった工場労働者が、糸になった母親を編み上げたジャケットを着て、生きていく話でした。不思議な人生です。
『道成寺』今昔物語の安珍清姫の悲恋です。歌舞伎、能、浄瑠璃など、いろんな分野で描かれています。
僧の安珍に懸想した清姫が最後は大蛇になって追いかけていく話です。それぞれの芸能によって焦点はずれていますが、このアニメではかなりストレイトに「女の怖さ」を感じさせました。
『火宅』能の「求塚」から取られています。
灘区に塚があります。うない乙女という美女が二人の武士に求婚されて、どちらも選べず自死し、二人の武士も刺し違えて死ぬという、わけのわからない話。
『岡本忠成特集』
『チコタン ぼくのおよめさん』『さくらより愛をのせて』『虹に向かって』『注文の多い料理店』『おこんじょうるり』
セルアニメも人形アニメもあります。子ども向けから古典ものまで幅広く描く才能豊かな人でした。どれも面白いですが、やはり『おこんじょうるり』が一番です。
『チコタン ぼくのおよめさん』
セルアニメ。小学生の初恋のユーモアたっぷりですが、かわいらしいチコタンが交通事故で死にます。つらいアニメです。
『サクラより愛をのせて』
セルアニメ。桂朝丸(現ざこば)の「動物いじめ」からヒントを得た「人いじめ」。満員電車で大きく足を開いて座る男にのしかかるおばちゃんが楽しいです。
『虹に向かって』
人形アニメ。長野の伝説からとったもので、急流を挟んだ両岸の村に住む、恋する二人が橋を架けるという話です。
『注文の多い料理店』
宮沢賢治の原作をもとに、暗い切り絵アニメでした。森の中の怪しげな料理店に入った狩人二人の話になっています。
『おこんじょうるり』
人形アニメで、私が見た岡本アニメの最高作です。
老いたイタコのもとにやってきた狐のおこん、彼女が歌う浄瑠璃には病人を治す効果がありました。おこんの歌声を聞かせて、病人が回復し、お礼をたくさんもらって二人は楽しく暮らし始めます。でもそれは長続きしませんでした。
聞いていておこんの歌声は本当に素晴らしかったです。そして狐と老婆に情が通い合うのも憐れを誘います。