2021年7月に見た映画

『パイレーツ』『ザ・ソウルメイト』『ヒマラヤ地上8000mの絆』『ファイティン』『なんのちゃんの第二次世界大戦』『シャイニー・シュリンプス』『ザ・ファブル殺さない殺し屋』『戦火のランナー』『グレース・オブ・ゴッド』9本でした。数は多いですが分けずに1回で書きます。7月中から書き溜めていたので、早くできました。でも本数も多く紙面も長くなってしまいしました。飽きずに読んでみてください。

 韓国映画4本はそこそこ面白く、邦画2本は全くダメ、という格差を感じました。例会の『グレース・オブ・ゴッド』は見事な映画でした。フランソワ・オゾンの手腕には感服しました。

 2週続けて韓国映画4本見ました。いわゆる社会派映画ではない娯楽作品ですが、韓国社会の変化を感じました。

 それは警察の描き方です。軍事独裁政権の時代を描く映画では、軍隊と一緒に市民を弾圧する組織に見えました。民主化が進んで行ってもデモやストライキを取り締まり、財界の手先のようなイメージです。

 それが『ザ・ソウルメイト』や『ファイティン』では、一般市民から罵られ、しかもその批判を甘んじて受ける組織として描かれています。もちろん悪人もいますが、組織全体が支配層の手下から市民生活を守る「民主警察」になったように感じました。

『パイレーツ』

 朝鮮半島の政権が高麗から李氏朝鮮に変わった時期のアクション時代映画です。

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14世紀末、宗主国の明から国号を朝鮮と認められ、旗と国璽をもらい受けたが、帰国途中にそれをクジラに飲まれてしまいます。それを海賊に取られたと嘘の報告をしたことから、ドタバタ劇が始まります。

 国璽を取り戻すために水軍、海賊と山賊が入り乱れて争い、クジラを追いかけます。

時代背景がわからないので、その当時の代表的な人物やその人間関係の面白さはわからないのが残念です。単なるアクション映画としてみれば楽しめる映画でした。

 CGなどもふんだんに使っていますが、女海賊の殺陣が良かったですね。出ている俳優も有名な人でしょうが、ユ・ヘジン以外は私が知らない人たちでした。

 次の3本はマ・ドンソク主演が2本と『ヒマラヤ』はファン・ジョンミンで、この二人は知っています。イケメン俳優は覚えられませんが個性派俳優は、どこの国の人でも覚えるものです。

 マ・ドンソクは「新感染ファイナル・エクスプレス」で、その存在を知りました。

『ザ・ソウルメイト』

 マ・ドンソクが、こわもてであるが正義感のない訳ありの柔道家で主演します。正義感が強すぎて事故で意識不明の重体に落ちる若い警官の生霊(生体離脱)とコンビを組んで、人身売買など凶悪な犯罪組織を壊滅に追い込む、サスペンス風コメディでした。

 犯罪組織の黒幕が町の幹部警察官というオチがありますが、全体的に軽い娯楽作品です。その中で、涙を誘う人情物の面もあり熱い恋愛もあるという盛だくさんで、大人から子供まで楽しめる映画になっています。

『ファイティン』

 和製英語があるように韓製英語もあり、この映画の題名は英語のファイトから転じて「頑張れ」という意味だそうです。マ・ドンソクがアームレスラーで主演し、彼の顔とガタイで上腕筋50cmが売りの映画です。スポーツ根性もの人情物の単純な映画でした。

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 彼は、てっきりアームレスラーか、そうでなくても格闘技出身で俳優になった人だと思っていましたが違っていました。トレーナー、ボディビルダーを経験しますが、最初から俳優志願でした。韓国生まれで米国の大学を出た、韓国系米国人です。

 幼いころに米国に養子に出された男が、養父母が早くに死んで孤児になり、苦労しながらもアームレスリングで生きようとします。しかし八百長に巻き込まれて資格を失い、失意のまま誘われて韓国に帰ってきます。

 韓国で、実母やその家族を探し、もう一度、アームレスリング大会に出場して活躍しようと活動しました。

 妹がいて、一人で子ども二人を育てていました。彼らと出会い、アームレスリングにも出ます。でも、ここでも裏社会とつながった賭博が絡んでいました。

 アームレスリングは、世界的なスポーツとなっているようです。よく似た日本の腕相撲がありますが、ルールが違います。これが韓国社会でどの程度の人気なのか知りませんが、マ・ドンソクの外見と中身をずらした、これも普通の娯楽作品でした。

『ヒマラヤ地上8000mの絆』

 実話に基づく映画で、ファン・ジョンミンが韓国の伝説的な実在の登山家を演じます。ひょろりとした感じですが、たくましさを感じさせる存在感があります。

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 主人公は16座を登頂した登山家で、彼とともに山々の映像を見せます。映画もかなりのところでロケをしたと見えて、雄大な山脈や氷壁の映像を見ることができました。吹雪や雪崩などの危険なシーンもあり、どのように撮ったのか、と思いました。

 足の故障で一度引退を表明した男が、後輩がエベレスト山頂の手前で遭難し死亡したため、その遺体を下山させるという危険で困難な計画を建てて、昔からの仲間を集めます。

 補償も名誉もない、むしろ危険性だけは高い、そんな登山に、ただ友情だけでつながったチームに仲間が集まったという映画でした。

 韓国では775万人が見た大ヒット作品です。

『なんのちゃんの第二次世界大戦

 さっぱりわからない映画でした。

 時代は現代、ある市の市長が平和記念館をつくろうという動きをし、それに反対する家族と争いが始まります。その家族の祖父は戦犯でした。

 事実関係を明示しない、さっぱりわからない映画でした。平和記念館をつくろうという市長の祖父は戦時中に反戦を主張して「町の偉人」で、記念館はそれを顕彰しようというものです。戦犯の家族は、その祖父の教え子という関係でした。

 国民学校反戦をいう男が、子どもに「国勝」という名前を付けた、というだけでおかしい、というのもばかげた話です。

 監督などが言っているのは平和や反戦は、立場によって違う、あいまいなことわからないことが多い、ということを表現したそうです。

 私は「そんなことあるかい」と思います。

『シャイニー・シュリンプス』

 メンバーはみんなゲイ、というフランスに実在する水球チームをモデルにした映画です。オリンピックのメダリストが性差別発言した懲罰として、この水球チームのコーチとして派遣されます。LGBTQたちの国際的な総合競技大会ゲイゲームズに出場させることが至上命題です。

 西神ニュータウン9条の会HP8月号に紹介を書きましたので、そちらを見てください。

ザ・ファブル 殺さない殺し屋』

 これもいい加減な映画でした。人気コミックが原作だそうです。主役の殺し屋を岡田准一が演じています。

 アクション映画としてみれば面白いのかもしれません。特殊撮影も含めて、上手に撮っていると思いますが、それだけで、ストーリーを追い、登場人物の人間性を理解しようとしても無意味だと思いました。

 殺し屋組織のボスで佐藤浩市が出ています。お金に困っているわけではないと思いますが、出る映画を選択するという考え方はないのかと思ってしまいます。

『戦火のランナー』

 南スーダンの難民、ロンドンオリンピック難民選手団ラソンランナーとして出場したグオル・マリアルの半生記を描くドキョメントでした。

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 過去、子どもの頃のスーダンはアニメーションで描きました。

 内戦の続くスーダン8歳のグオルは「村から逃げろ」と両親から言われて出ていきますが、途中で武装勢力につかまるなど苦労し、命からがら難民キャンプに保護されます。

 そして米国の難民支援策で、米国に移民して高校時代に長距離ランナーの素質が認められます。初マラソンでオリンピック基準をクリアして、その時、故郷は南スーダンとして独立しました。その代表で出たかったのですが、国内のオリンピック委員会がなく、難民代表として出場します。

 その後、独立しても南スーダンの内戦が続きますが、彼は平和を願い、後輩たちにスポーツを指導する活動を続けています。

 故郷の村に帰って、両親や家族と再会するシーンは感動的です。世界にはこんなことがまだまだたくさんあることを知るべきです。

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 そういう戦争の被害者、難民のみなさんを支援している国連のユニセフ難民高等弁務官事務所、国境なき医師団のみなさんには頭が下がります。

『グレース・オブ・ゴッド』

 市民映画劇場7月例会でした。

 近年、発覚して有罪となったフランスのカトリック教会神父の児童性虐待事件を基にした映画です。フランソワ・オゾンが脚本、監督を手掛けた傑作です。西神ニュータウン9条の会HP9月号で紹介する予定です。さらにもう少し長い映画評を書いて、このブログに載せます。いい映画ですから、機会があればぜひ見てください。