2021年8月に読んだ本その1

『日本野球25人私のベストゲーム/スポーツグラフィック・ナンバー』『官僚の本分/前川喜平。柳澤協二』『川はどうしてできるのか/藤岡換太郎』『純白のガーダーベルト/館淳一』『伊東晴雨物語/団鬼六』『怪談/小池真理子』『世界8月号』です。

 まず4冊です。

『日本野球25人私のベストゲーム/スポーツグラフィック・ナンバー』

 雑誌「ナンバー」の発刊25周年を記念した、1980年代以降2005年までの間で、選ばれた25人がそれぞれのベストゲームを語るという企画です。番外で1979年の日本シリーズ広島対近鉄の最終戦が「西本幸雄と江夏の21球/松井浩」が入っています。これが一番面白い記事でした。

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 選ばれた監督、選手を見ると雑誌「ナンバー」の編集姿勢が見えます。端的に言うと読売偏重、人気選手偏重ということです。

 読売を主な所属をした選手の割合は、監督4人中2人、野手11人中2人、投手10人中3人で25人中7人と非常に高くなっています。嫌ですね。スポーツ専門雑誌の看板が泣くよと言いたいです。

 選ばれなかった球団はセ・リーグでは広島(番外のみ)中日も監督の星野だけでした。パ・リーグ日本ハムです。活躍した選手がいなかったわけではありません。 

 世代的には、監督は川上、西本の一回り後の世代です。ここに星野を持ってくるのか疑問です。劇的なゲームをしたわけでもありませんし(楽天の初優勝は、後の話)個人的にはつまらない人間だと思っています。優勝回数でいえば西武、森祇昌でしょう。

 野村は波乱万丈ですが、長嶋などは読売だけですから、彼の人気目当てで選んだと思います。つまらない話で、プロ野球の醍醐味を捜した選出とは言えません。仰木彬のほうが面白い話を聞けたと思います。

 野手では山本浩二衣笠祥雄等の次の世代で、松井が入るのは良いですが、小笠原が抜けていると思いました。優等生の古田よりも池山、広澤でしょうね。投手では鈴木、村田、外木場、平松等の次ですが、同世代の江夏と山田が入っています。読売は江川、斎藤、桑田ですが、彼らよりもここは西本に聞きたいところです。

 そんな不満がありますが、ここに書かれている中で気になったところを書きます。

監督4人:長嶋茂雄王貞治野村克也星野仙一。大したことは書いていません。

野手11人:イチロー落合博満、清原、掛布、原、バース、ブライアント、新庄、古田、松井。

 イチロー「あの雨が僕の運命を変えた」:ベストではなく印象に残っているゲームで高校時代、甲子園ではなくプロに行きことを目的にしていて、雨で流れた試合があり、その翌日の試合で活躍します。その愛知県準決勝で活躍したからスカウトに認められ、今があるといっています。

 しかし私は、その時もし活躍しなくても、彼の素質のプロをめざす姿勢があれば、大学でもノンプロでも活躍してプロに入ったと思うのです。彼ほどの選手でも、わずかなことで人生が左右されると思うのでしょうか。

 落合「私が世に出た真夏の舞台」:落合はオールスター戦で4番に据えられた試合を選びました。まだ若い彼を西本監督は4番にしました。その試合は3打席凡退しますが、そのシーズンに初めて首位打者を取っています。

 彼は「どんな仕事だって、自分一人の力だけで一流になれるものじゃない。陰で協力してくれた人が数えきれないくらいいるものだよ」と言っています。 

投手10人:野茂英雄桑田真澄阿波野秀幸、山田、江川、斎藤、佐々木、工藤、松坂、江夏。

 野茂「駄目なら野球をやめようと」:野茂はメジャーの公式戦初登板と近鉄で初勝利を挙げた試合を上げました。そして「近鉄は歴史や伝統、選手を大切にしない球団だと感じていました」と言い切ります。その通り、元近鉄ファンとして、オリックスとの合併は最大の汚辱です。

 江夏「ファームで得た静かな満足感」:阪神、南海、広島、日本ハム、西武と渡り歩き、最後の西武二軍での練習試合、満足したボールを投げられて日本球界を終わりにします。その後大リーグのテストを受けて引退しました。

 野村と出会ってピッチングの幅、深さを考えるようになったといいます。捕手、野村のリードの基本は「自分で考えろ」ということだそうです。

『官僚の本分―「事務次官の乱」の行方/前川喜平。柳澤協二』

 文科省事務次官内閣官房副長官補(事務次官級)という超エリートの二人、柳澤さんは19702009年、前川さんは19792017年という官僚生活で、10年ほどのずれがありますが、安倍菅政権には明確に反対の姿勢を示し、きちんと物申す二人の対談です。

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 最初『官僚の矜持』というタイトルを示されたそうですが前川さんは「本分」がふさわしいと思い、変えてもらったといいます。

 柳澤さんは官邸で小泉、安倍(一次)、福田、麻生の4人に仕えて、安倍以外は「信頼関係はひと通り築けた」いいます。

 近畿財務局の赤木さんについて、改ざんを命じられた人がものすごい責任を感じて自死したのに命じた側が責任を取らない、これまでになかったケースで、組織が崩壊する、といいます。

 「現政権下では権力イコール正義」のもとで、現在の官僚は「忖度以外に、組織の進むべき道を示す哲学」がない、「自分で考えない役人が増えた」と批判しています。

 そして対談後のまとめで「利益を最大化するために利益を生まない様相をとことん切り捨てた」社会と批判しています。

『川はどうしてできるのか/藤岡換太郎』

 『フォッサマグナ』を読んだことから始まり、海、山、そして川まで来ました。海は地球そのものの歴史で、海ができた後に陸が出来て、地球全体の運動で山ができたということが分かりました。

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 川は陸と山を流れて、地球の彩となった思います。山が様々に作られますから、そこを流れる川も様々です。時間とともに大きく変化するのが特徴です。そして川は人間の文明に深くかかわっています。

 前に読んだ本は、そもそもの成り立ちを解明していきますが、これは川の具体的な現象の解説です。川とはそういう存在なのですね。

 第1部「川をめぐる13の謎」これは川のいろいろなパターンを書いています。

 一つを紹介するとヒマラヤ4000mを越えていく川の成り立ちです。山が出来ていくのと、川が谷を削っていくのとの競争の結果です。

 第2部「川を下ってみよう」ここでは多摩川の上流から下流へと辿っています。その中で川の用語などを説明しています。

 「水系」「流域」「分水界」「上流」「中流」「下流」「扇状地」「中州」「蛇行」そして海底まで流れる川の姿です。

 分水界は面白いです。大体、山頂あたりの尾根筋と思うのですが、田んぼの水が左右に分かれるところあります。ここでは山形県堺田分水嶺が書かれています。兵庫では丹波市の水別れ公園が本州一標高が低い分水界です。         

 第3部「川についての私の仮説」現在の川がどのようにできたのかを考えると、現在の前の超大陸からあった川の姿を仮説として紹介します。川は時間とともに大きく変わるので、その変化を実証するのは難しいようです。

 天竜川は、ユーラシア大陸と日本列島がつながっていた時代からあったと考えて、その源流はロシアのであるといいます。

 アマゾン川もアフリカ大陸と南アメリカ大陸が一体であった時代ではアフリカから南米へと流れ、その頃はアンデス山脈がなくて、太平洋の方に流れていたと考えられるといいます。 

『純白のガーダーベルト/館淳一

 ガーダーベルトは男のあこがれるエロチズムです。それを付ける女性の側の心理的高揚も描く官能小説でした。

 普通の男女が主人公です。同じ会社に勤める二人が、別々にガーダーベルトに惹かれていきました。女はみるみる魅力的になり、それを横目で見ながら男は彼女に接近することもせずに、ガーダーベルトを売り物にする風俗店に魅了されていきます。

 そして行き違いのような危機を乗り越えて結びつくというロマンチックな筋書でした。