2022年1月に見た映画その2

swallow/スワロウ』『天使の涙』『大コメ騒動』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『ボストン市庁舎』残り5本です。抑えめに書いたつもりですが、5本ですから長くなりました。

swallow/スワロウ』

 題名は、燕ではなく「飲み込む」という動詞です。異物をひたすら飲み込む女性を描きます。最初は丸いガラス球から始まり、ビス、命に係わる乾電池、尖ったドライバーまでも飲み込まずにはいられない精神状態になっています。

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 彼女は、美人で大金持ちの御曹司と結婚してセレブの仲間入りをしました。典型的な玉の輿ですが、だんだんと生活に非常なストレスがかかってくる様子が描かれます。そして妊娠します。

 心の病の一種ですが、彼女はどうしてもやめることが出来ません。家族の知るところとなり監視がきつくなりました。ますます病は重くなります。

 異常心理が描かれ、彼女の出生の秘密(レイプによって生まれた)も明らかにされますが、それ以上のものが伝わってきませんでした。

 結論は、彼女は家を出て自分の人生をやり直すというところに落ち着きます。

 生まれも育ちも考え方も違う結婚、その男の家族に入っていく女性の大変さはよくわかりました。

天使の涙

 香港を代表する映画監督ウォン・カーウァイの作品(1995年)で、ちょっとだけ期待してみましたが、結局よくわかりませんでした。

 香港を舞台に、殺し屋の男とエージェントの女、さらに口のきけない男と恋人らしき女、その4人が主に出てくるのですが、その関係がどうなっているのかよくわからないまま映画は進んでいきました。

 

『大コメ騒動』

 実話をもとにした邦画で、社会派の要素もある娯楽映画仕立てですが、もう一息、という印象です。

 1918年富山の田舎町で、どんどん米の値段が上がってことに対して、女たちが団結して「コメをもとの値段で売れ」と立ち上がった騒動です。

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 大正時代の社会情勢、田舎町の人間関係等もそれなりに描かれていました。女性たちの仲間づくり、団結、リーダー像、闘いへの踏ん切りなどで盛り上がりありました。

 富山の米騒動は、近代日本の民主主義のエポック、大正デモクラシーの一端として学校の授業で習ったように思っていました。たしかに社会主義や労働運動が広がった時期ですが、組織的に広がった闘争ではありません。

 でもマスメディアなど発達、教育の向上など、女の位置、少しずつですが社会全体が変化していく中で、地域的な連帯で闘った昔の一揆が、情報として全国的に伝播し、それぞれの地域でも闘いへと進んだ感じがしました。

 そのあたりがわかるような俯瞰的要素、大阪からやってきた若い新聞記者がその役割だと思いましたが、力不足なのか、うまくはまっていません。

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』

 奇人たちの集まり、強烈な殺戮シーン、という特徴を持ったデンマーク映画です。

 列車事故に巻き込まれて妻が死んだ、元軍人が、その事故はギャング団ROJが仕組んだもの、という話を聞き、彼らを皆殺しにしようと動きます。

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 その話を持ち込んだ数学者と彼の仲間も協力を申し出ます。みんな変人です。インターネットなどを駆使してROJたちの動向を探ります。そして自動小銃などを持ち出して彼らを殺し始めました。街中でぶっ放します。

 ROJたちも逆襲に転じて・・・・。

オチは列車事故とROJは無関係であることがわかりますが、でもギャング団は全滅してよかったね、でした。

 主役の元軍人を演じるのはマッツ・ミケルセンデンマークを代表する俳優です。シリアスな社会派にも、このようなハチャメチャな映画にも出ています。

 しかし元軍人とはいえ、デンマークでは銃火器は手に入りやすいのか。高度の福祉国家で、理想的な住みやすいイメージのデンマークですが、酔っぱらいの映画『アナザー・ラウンド』も含めて変な国です。

 でもよく考えれば元はバイキングですから、傍若無人そのままの感じです。

 題名「ライダーズ・オブ・ジャスティス」はギャング団ROJの名称です。

『ボストン市庁舎』

 東海岸の古い都市、マサチューセッツ州ボストン市の市政が描かれるドキュメンタリーです。世界最高のドキュメンタリー作家であるフレデリック・ワイズマンが、前作『ニューヨーク公共図書館』に続いて、自治体の業務をとりました。4時間34分の大作です。

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 貧困、ホームレス対策。大麻の店舗の出店。LGBTQ、人種差別、福祉、教育、請負契約等の現場を撮っています。そこには職員がいて市民そして事業者たちもいます。

 長くて退屈ではないですが、ちょっと難しい感じの映画です。前作『ニューヨーク公共図書館』(3時間25分)も長尺ものでしたが、まだわかりやすかったです。

 自治体業務の広範囲で複雑であることで、自治体の業務を整理してとらえることは難しいと思いました。図書館は「民主主義の砦」という言い方が胸に落ちましたが、自治体は権力行政でもあるので、そう簡単には説明できません。

 ウォルシェ市長は住民の側に寄り添った行政サービス、民主主義、多様性の共存などを強調しています。それがちょっと鼻につきました。

 ワイズマンは、題材について事前のリサーチえお一切しないのだそうです。ですから市政や地方自治にあまり知識がなく、偏見を持たずに「そこにある」題材を撮るといいます。でも何を選ぶか、その編集に彼の思想がにじみ出ています。

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 だから感動的です。惜しむらくは市庁舎には市職員の労働組合もあるはずで、そこの場面が欲しいと、私は思うのです。彼らは自分たちの賃金、労働条件だけでなく、より良い仕事をすることにも関心があるはずです。それは市政に大きな影響を与える要素です。

 もう一つ、米国の公務員と日本の公務員の違いを踏まえていないと見方を間違えます。米国の幹部職員は政治的任用ですが、日本では中立を求められます。