2022年2月に見た映画その2

 2月に見た映画の後半4本は、どれもなかなかの力作でした。

『クーリエ最高機密の運び屋』

 実話に基づく映画です。1962年のキューバ危機の回避に重要な役割を果たした「スパイ」の話です。

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 1953年にスターリンは死にます。その跡を継いだフルシチョフスターリン批判をしますが、米ソを中心に東西冷戦はいっそう厳しくなっていきます。

 1960年、世界核戦争の危機を感じ取ったソ連の政府高官ペンコフスキーは、それは何とか防ぎたいと考えます。ソ連の実情を知らせたら対立は緩和できると考え、国家機密を英米に流そうとします。

 その動きを察知した英国諜報機関は、機密情報を受け取ることを、ソ連など東欧諸国で商売をしている英国の商社マンのウィンに依頼しました。

 当時、米ソは軍拡競争だけでなく、宇宙開発等、科学技術の最先端の発達を競い合っていました。またスポーツや文化芸術の面でも東西の両陣営は争っていたように思います。

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 しかしソ連の国民生活の内情は貧しく、科学技術の本当の到達等は隠されていました。それを西側に知らせ、米国などが正確な情報をつかむことで無用な争いが起こらないように、核戦争にならないようにとペンコフスキーは考えていました。

 ウィンは最初いやいやでしたが、ペンコフスキーの人柄に触れて、彼の心情を知り、深い友情と信頼関係を持つまでに至った、と描きました。

 最後は二人ともスパイ容疑で捕まり、高官は処刑、セールスマンは長期の拘束を経て英国に帰ることが出来ました。

 ウィンは拷問を受けてもスパイだとは認めませんでした。わが身よりもペンコフスキーが処刑されるのを恐れていたのです。

 この映画を見て「スパイ像」が変わります。ペンコフスキーは何かの利益を得たいということではなく、ソ連国民や地球を破滅させる核戦争を防ぐことを考えて危ない橋を渡ったのです。

 ウィンも普通の会社員でありながら、拷問を受けても友情を裏切らない男でした。彼らに比べて、ソ連や英国の国に忠実な、普通の人々は卑劣な人間に見えました。 

『沈黙のレジスタンス ユダヤ孤児を救った芸術家』

 フランスのユダヤ人、パントマイムの神様、マルセル・マルソーの第2次世界大戦中の活躍を描く映画です。彼はドイツ占領下のフランスでレジスタンス活動していたことに基づいています。

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 ドイツに隣接する町、ストラスブールに住むマルセル・マルゲン(マルソーの本名)は、ナチスに親を殺され、ドイツから逃げてきたユダヤ人孤児123人の世話をしていました。

 ドイツがフランスを占領したことで、彼らが収容所に送られる危険があることから、国境を越えて密かにスイスに逃がすという話です。

 多数のレジスタンスやユダヤ人を殺し「リヨンの虐殺者」と言われたナチス司令官、クラウス・バルビーを、家族には異様にやさしく、敵には一転した残虐性で、その怖さを描きます。

 彼が異常なくらい自分の家族と子どもを愛する姿を描き、もう一方でレジスタンスを肉体的精神的に破壊する拷問を描きました。

 マルソーは、この時期は16歳~22歳で、パントマイムを志す役者の卵です。その芸を生かして失意と恐怖に落ち込んでいた子どもたちを慰めました。

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 バルビーと対比的です。

 全体的に緊迫感のある画像でした。

『スティルウォーター』

 表題は町の名前ですが、サスペンス映画のキーワードにもなります。

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 オクラホマ州スティルウォーターの街で暮らしていたビル(マット・デイモン)は、フランスのマルセイユにやってきます。留学していた娘アリソンが、レズビアンの恋人を殺したと、殺人罪で刑務所に収監されていて、すでに5年がたっています。娘の無実を信じるビルは、真犯人を探そうとします。でも彼はフランス語も満足に話せません。しかも、すぐ暴力に走る傾向があります。

 ビルは娘の無罪を信じて、娘が真犯人というアラブ系の若い男を捜そうと、必死に動きます。移民が多い地区に行って男を見つけますが逃げられました。

 4か月もマルセイユ逗留して探し続けました。するとサッカーの試合で偶然に男を見つけます。そしてアパートの地下室に監禁して自白を強要しました。

 ビルは事件の真実を知ります。

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 米国の田舎町からマルセイユに留学 娘はレズビアン、アラブ系だというのも現代のリアルさを感じさせました。

 マルセイユは、フランスの代表的な街で、きれいな街区のイメージを持っていましたが、移民が多いところは、やはり荒廃しているようです。

 サスペンスとしてもよく出来ているし、主人公ビルが、社会から落伍したような貧しい労働者であることも良かったです。

『汚れたミルク』

 前回45日に感想を書いています。