2022年3月に見た映画

『ザ・ユナイテッドステイツVSビリー・ホリディー』『戦争のはらわた』『ガンマン無情』『アルジェの戦い』『最果てのガンマン』『海辺の彼女たち』『モーリタリアン黒塗りの記録』『コレクティブ国家の罠』。3月は体調不良もありながら8本見ました。でも『ビリー・ホリディー』以外は古い映画ばかりになってしまいました。

 まず4本の映画です。

『ザ・ユナイテッドステイツVSビリー・ホリディー』

 WASP(白人、アングロサクソンプロテスタント)といわれる米国を支配してきた人々がどれほどひどいレイシスト人種差別主義者であるのか、よくわかる映画でした。

 ビリー・ホリディー、白人にも人気のあった黒人歌手の半生記を描く映画です。FBIは彼女が麻薬常習者であることを理由に、執拗に付け狙い、何度も逮捕し刑務所に入れています。でも真の狙いは、彼女が「奇妙な果実」という黒人差別を告発する歌を歌い続けたことに対する報復であり、嫌がらせです。

 この映画を見ていると、彼女が立ち直ろうとするのを見透かしたようにFBIは罠を仕掛けていたように思います。

 その陣頭指揮を執ったのはFBI麻薬取締局長ハリー・J・アンスリンガーです。彼は「麻薬と黒人がアメリカ文明を汚す」 と公言するレイシストです。その男を歴代大統領は重用し褒めたたえました。

戦争のはらわた

 珍しい映画です。英国、西独が製作したドイツ軍側の視点での第二次世界大戦の映画です。人間の本性を見透かした暴力シーンが得意のサム・ペキンパー監督ですが、タイトル通りの強烈なテーマの映画です。

 場所は東部戦線、ドイツとソ連の最前線の戦いです。少しずつソ連軍に押されている状況で、挽回しようとドイツ軍兵士たちは頑張っています。その中心にいる小隊長はハリウッドスターのジェームズ・コバーンです。

 彼を見ていると米国軍人のように感じてしまいます。彼の部下は、どれもいい人間ですが、上官にナチスらしい悪役を配していました。

 最初と最後の戦闘シーンにこの映画のテーマがありました。

 最初は、コバーンがソ連軍のトーチカを奪い取り、そこにいたソ連の少年兵を殺さずに捕虜にします。「殺せ」という命令を受けますが、密かにソ連がに逃がしました。しかし少年兵はソ連側からの銃撃で死にます。

 そして最後のシーンです。いよいよドイツの敗色は濃厚となり、全軍は撤退します。しかしコバーンの小隊は取り残され、周りはソ連軍ばかりとなりました。戻ることが出来ないので彼らは逆方向に動き、敵の陣地を迂回して帰ろうとしました。

 再び敵味方が向き合っている前線に戻ってきました。味方の陣地に逃げ込元した時、最初のシーンの再現です。味方側からの銃撃を受け大多数は死にます。

 これが戦争だ、という強烈な主張を感じました。

『ガンマン無情』

 これは本当につまらない映画でした。1966年制作のマカロニ・ウエスタンです。フランコ・ネロが主演ですから期待してみました。でも筋立てが全くダメでした。

 西部の名保安官であった兄と弟が、彼らの父を殺した敵を求めて、米国テキサスから国境を越えてメキシコへやってきます。

 割と簡単に敵を見つけますが、その男は街を支配する支配者でした。色々あって、町の人々と協力して、その敵と対決するという話です。

 しかし出てくる人間と話の展開が全くあっていません。ただドンパチやるだけの映画でした。

『アルジェの戦い』

 これは面白かったです。1966年制作のドキュメンタリータッチの劇映画です。

 フランスの植民地であったアルジェリア独立の闘いを描きました。でもここで描かれるのは1954年から57年の民族解放戦線(FLN)の戦いの挫折でした。

FLNの闘士たち

 ひとりの不良少年が独立戦争の先頭に立つまでの成長を描きますが、元レジスタンスにいたフランス軍将校などの巧妙な作戦によってFLNは壊滅させられます。

 その後、映画の最後はアルジェリア独立が描かれました。

 1960アルジェリア人民はFLNのような武装蜂起ではなく、FLNとは無関係に全土を上げた反フランスのデモが繰り広げられます。フランス軍はそれを押しとどめることが出来ず、62年に独立を実現したで終わりました。

 いっけんFLNは無関係ですが、彼らの戦いが広くアルジェリア人民にしみ込んだ中での、武力を使わない、一部の先進だけではない、普通の人々が加わった戦いです。

 その映像はドキュメンタリーのように感じるほどでした。