2022年2月の本その2

2月の本を書いて随分日にちが経ちました。他の原稿もあって続きを書くことが出来なかったのです。しかも読んだ記憶は薄れる一方でした。でもほっとくわけにはいかず、2月を書かないと3月に行けないので、簡単に書きます。

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『刑事という生き方/村上貴史編』『運転者 未来を変える過去からの使者/喜多川泰』『青光の街(ブルーライト・タウン)/柴田よしき』『むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人』『世界2月号』『前衛2月号』残り6冊ですが、簡単に4冊を紹介し省略し雑誌は省略します。

『刑事という生き方/村上貴史編』

 アンソロジーです。『夜警/米澤穂信』『沈黙の終着駅/呉勝浩』『飛び降りた男/黒川博行』『沈黙のブラックボックス麻見和史』『文字盤/長岡弘樹』『野良犬たちの嗜み/深町秋生』6篇の短編がそろえられて、いずれも特徴ある刑事がいて、普通でない事件がありました。

 面白かったです。もともとアンソロジーは好きで、自分では選ばない知らない小説家の面白さに出会う楽しみがあります。簡単に紹介します。

『夜警/米澤穂信

 警察官に向いていない男が引き起こした事件はピストル発砲事件でしたが、それをごまかそうとしました。

『沈黙の終着駅/呉勝浩』

 事故か故意かわからない事件の謎は、25年前の、これまた事故か故意かわからない謎と繋がっていました。

『飛び降りた男/黒川博行

 おなじみ、大阪府警の刑事を中心に大阪弁をまくしたてる人々がうごめき、下着どろと家庭内暴力が絡みます。

『沈黙のブラックボックス麻見和史

 犯罪防止班という、憲法に反するような特別班の推理。

『文字盤/長岡弘樹

 監視カメラに残っていたコンビニ強盗の6秒間の停止した時間を手掛かりに、刑事の息子にたどり着きました。

『野良犬たちの嗜み/深町秋生

 ヤクザと深い関係にある老刑事が、そのヤクザの復讐に手を貸して、彼の本家筋の組をつぶす。

『運転者 未来を変える過去からの使者/喜多川泰』

 ちょっと気持ちの悪い小説でした。SFかなと思って読み始めたのですが、底の浅い似非道徳小説でした。

 「運の悪い」保険外交員の男のところに現れたのは「あなたの運勢を変えてくれる場所に運びます」というタクシーです。

 この車は過去、現在、未来と走り回って、男にかかわる人たちの裏表を見せてくれます。そこにいたのは善意に溢れる人々でした。懸命に生きることが大事だと説きます。

 うまい筋立てで話を運んでいきますが、そこに収斂してしまうのは気持ちが悪いものです。

『青光の街(ブルーライト・タウン)/柴田よしき』

 柴田よしきにすれば、ちょっとまどろこしい長編小説です。「どんでん返しに次ぐどんでん返し」という宣伝文句通りですが、ちょっと無理しすぎという印象でした。

 青い電飾の切れ端が死体の側に置いてある殺人事件が連続してあり、それとは別に主人公の友人の失踪事件を、彼女が所長を務める探偵事務所が追うという、二本立てで事件が展開します。

 警察と探偵たちが別々で動きながら、しかも事件それぞれが単純ではないので、上手に組み立てているとは思いますが、読むのが大変でした。

『むかしむかしあるところに、死体がありました。/青柳碧人

一寸法師の不在証明』『花咲か死者伝言』『つるの倒叙がえし』『密室竜宮城』『絶海の鬼が島』5編の連作短編集です。

 昔話からどのようなミステリーに仕上げるのかを期待したのですが、事件と謎ときに力点が置かれすぎていて「昔話を生かした面白み」はありませんでした。

 例えば『一寸法師の不在証明』は打ち出の小槌も生き物を大きく、または小さくできることを利用した殺人事件の謎を解く話です。

 一寸法師は、出世の野心を持った悪漢の計略家であったという話になっています。