神戸映画サークル協議会の現在の例会スタイル、市民映画劇場という自主上映は1972年5月『大地は揺れる』(監督ルキノ・ヴィスコンティ)から始まりました。今年で50年になるので、11月例会を記念例会としました。
東海テレビが製作したドキュメンタリー『神宮希林』『さよならテレビ』です。
前者は俳優の樹木希林さんが伊勢神宮の遷都を見学に行くことを軸に彼女の生き方考え方を表現しました。
後者は東海テレビ自らのニュース番組の制作現場を映したものです。
現代社会の一面をとらえたものとして、企画しました。11月11日12日兵庫県県民会館で上映します。詳細はHPを見てください。
神戸映画サークル協議会(神戸映サ) (kobe-eisa.com)
私は『さよならテレビ』の解説を書きましたので以下に載せます。
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番組をつくる人たち
東海テレビが、自局で働く人々の姿(その一部)をドキュメンタリーに撮り、さらにそのタイトルが「さよなら」です。ちょっと自虐的では、と思いましたが、ご覧いただいたらわかります。
たしかにニュース番組を担当する人たちの痛ましい姿があり、しかもそれは肯定されるものではないにもかかわらず、どのようにして克服するのか(できるのか)展望が見えないままで映画は終わりました。
これが現実のテレビの現場だと開き直る感じですが、撮るのも撮られるのも同僚であるだけに、混乱します。
三人を焦点に
テレビ局の何を撮るのか、その試行錯誤から映画は始まります。出だしで「ちょっと待った」と言われたようで、しばらく期間をおいて、撮影が再開されました。
そして三種類の雇用関係にある三人を取り上げました。一人は正社員のアナウンサー。次に契約社員のベテラン記者。もう一人は新米の派遣社員です。
彼らの一年を追うドキュメンタリーとなりました。
そして彼ら全員がかかわる、局の看板である夕方のニュース番組「みんなのニュース One」の打ち合わせ会議を見せました。
アナウンサーは看板番組のメインキャスターに抜粋されて、何をどう報道するか、彼の「個性」を反映させるのか、視聴率が取れるか等、カメラは彼の悩む姿を撮りました。
ベテラン記者は、ジャーナリストの矜持を持った人として、その履歴も紹介されます。この撮影当時に「共謀罪法」が国会で議論されていました。この法案が国民的な批判を受けた時に政府は「テロ等準備罪」と呼び名を変えます。
政府のごまかしと、彼は言います。
もう一人は制作会社からの派遣社員です。彼は見るからに経験不足の素人です。「働き方改革」の残業時間削減の便法として雇われたのです。
桜の開花等という、いわゆる軽い「街ネタ」のレポートを担当します。しかし「使えない」奴の典型に見えます。
社会的な役割
東海テレビは職場見学に来た子ども達に「事件事故を知らせる」「弱者への寄り添い」「権力の監視」がテレビ報道の役割だと説明します。それはジャーナリズムの自負です。
放送法は、その目的を「表現の自由」「民主主義の健全な発達」といいますから、その反映でもあります。
しかし現実は、時々刻々と出される視聴率に一喜一憂する姿があります。競合する他局と比較する視聴率グラフが壁面に大きく張り出されていて、それを見て会議をします。
番組の担当者、責任者の関心事は、どのような報道が視聴者を引き付けるかです。現在の社会に「何を伝えるべきか」は重要視されない様子が強調されました。
皮肉な映像によって、テレビ局の内実を描きました。働く人々の矛盾は伝わってきます。しかしテレビ報道退廃の本質までは触れていません。