姫路市平和資料館を訪ねて

 標記のタイトルで、兵庫県自治体問題研究所の「住民と自治」(兵庫版)5月号に投稿しました。

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はじめに

 今月から兵庫県内にある平和資料館・記念館6カ所の紹介を掲載させていただきます。

 私たち「神戸に平和記念館をつくる会」は、その名の通り、神戸に平和記念館をつくってほしいと、8年ほど前から神戸市に働きかけてきました。

 神戸市自身が阪神淡路大震災の前に「平和記念館構想」をつくりましたが、震災があり凍結しました。それを再開してほしいと要望書や署名提出などの運動をしてきました。あわせて神戸空襲や神戸港、平和を考える写真展、学習会なども取り組んでいます。

 私たちの要望に対して、久元市政は「HPがある」「兵庫図書館に戦災記念資料室がある」等の理由で否定しています。  

 現在、神戸市は兵庫区に歴史公文書館建設計画を進めています。123日に神戸市と話し合う機会があり、そこで戦災に関する充実した常設展示を要望しました。しかし神戸市からは明快な答えはありません。

 同席した教職員組合等も「平和教育には常設展示が必要」と強調されています。

平和記念館をつくりたい

 神戸の空爆被害は非常に大きく、人口当たりの戦争被害率は五大都市(東京、横浜、名古屋、大阪)最悪となっています。米軍は神戸を多種多様な焼夷弾の実験場にしました。

 戦争を経験した人々が減少しています。多くの人の戦災の記憶を受け継ぎ、戦争の実態を後世に伝えることが、ますます大事となっています。

 また核兵器を無くすことや戦火の絶えない世界情勢を知らせる等、現在と未来に向けて平和な地球を築く課題もあります。

 再び日本を軍事大国に変えようという政治的な流れが強くなってきました。軍事優先の「戦争が出来る国」に反対し、平和記念館づくりをめざし粘り強く活動を続けていきます。

姫路市平和資料館と太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔

 姫路の平和資料館は1996年に、手柄山中央公園の中に建てられました。その隣には19561026日に竣工した『太平洋戦全国戦災都市空爆死没者慰霊塔』があります。

慰霊塔

 この慰霊塔は、当時の姫路市長である石見元秀氏が、無差別爆撃を受けた全国113自治体(当時の東京都と112市町)に呼びかけて結成した全国戦災都市連盟(現在の一般財団法人太平洋戦全国空爆犠牲者慰霊協会、代表理事姫路市長)が建立し管理しています。  

 これはアジア太平洋戦争における、空爆で亡くなった軍人軍属以外の509,700余の死没者を慰霊し、世界の恒久平和を祈念する碑です。

 ですから平和資料館にも無差別空爆に関する展示、解説があるのではないかと期待しましたが、残念ながら、それはありませんでした。

 姫路市は平和都市宣言(1957年)、非核平和都市宣言1985年)を行い、平和施策として「戦争の惨禍と平和の尊さを後世に伝え、平和な社会の発展に寄与するため、空襲に視点を置いた資料館を設置した」といいます。

 その役割は「空襲体験継承の場として、姫路の空襲による被災等に関する資料、文書、映像等を主体とした展示」「平和に関する学習・教育の場として、この施設の活用を図ると共に、戦争の悲惨さと平和の尊さについて啓発」「調査研究機能の場として、展示資料収集や平和学習指導などを充実させるための調査・研究機能を整備」する場としています。

展示内容

 建物は鉄筋コンクリート2階建てで、1階が常設展示室(224㎡)2階が企画展示等に使う多目的ホール180 ㎡)となっています。

 3月の企画展は「収蔵品展」で、資料館が寄贈をうけた戦時下の遺品が展示されていました。

 常設展示室は「美しい城下町、姫路」「覆われた姫路城」「炎の中の姫路城」「よみがえる姫路城」「平和を祈って」の5つのコーナーがあります。明治からの戦争への道、空襲と敗戦そして復興と、姫路が歩んできた歴史が、動画や写真パネル、実物資料等の展示で説明してありました。

 姫路には194562273日と2度大きな空襲がありました。622日は市街地の北部にあった川西航空機工場が中心で、73日は市街地全域が空襲されました。二つあわせて死者は約500人、被災者は約55千人という規模です。

 それがジオラマ展示されていました。

 展示室の外にテレビがあり、そこでは姫路以外の空襲被害の映像が流されていました。日本全国で、悲惨な空襲があったことが実感できて良かったです。

物足りないこと

 自治体が建てた平和記念館の多くは、その地域の戦争被害や銃後の生活に係わる資料、写真、戦没者の遺品を展示しています。年表的なものはあっても、アジア太平洋戦争の全体像や日本の加害責任を解説したものは多くありません。

 姫路は空爆の慰霊碑があるので、無差別空爆の歴史的な経緯や、それが国際法違反であること等、日本の責任も含めた解説があれば大きな特色になります。

 日本が二度と戦争に起こさない、巻き込まれないために役立つ平和資料館に整備してほしいと思いました。

 それから館内は写真禁止でした。多くの人に知らせるという意味で、それは疑問です。

入場料:210円/休館日:月曜日と祝日の翌日、年末年始/住所:姫路市西延末475/電話番号:079-291-2525/アクセス:山陽電車手柄駅」から徒歩15分、JR姫路駅からもバスがあります。駐車場もありますが、行楽シーズンは周辺施設の利用もあり混んでいました。