『ゴンドラ』『ビバ・マエストロ!指揮者ドゥダメルの挑戦』『海の沈黙』『ラムの大通り』の4本です。1週間ラオスに旅行(観光目的ののんびりした旅行です)しましたから、その影響で映画館に行けませんでした。しかも評価できるのは『ビバ・マエストロ』だけでした。
『ゴンドラ』
台詞なしの映画でした。それがファンタジックな雰囲気を醸し出していますが、ただそれだけの映画です。深い人間関係が描かれるわけでもありません。
場所は特定されません。公式HPを見るとジョージアの村の古いロープウェイ(ゴンドラ)を撮ったようです。
谷を越えて村と町を結ぶロープウェイ、2台のゴンドラが行き来します。それに添乗するのは若い女性二人イヴァとニノです。二人は行き違いながら、駅でチェスの相手をしたりしています。そして駅長の大男がいて、威張っています。大人も子供も、いろいろな村人たちが乗ってきます。村人たちは下からもゴンドラを見ています。
それだけで、何を言いたいのか私にはわかりませんでした。
西神ニュータウン9条の会HP12月号に書いたものの再掲です。
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強烈なメッセージ
とても悔しい映画でした。
クラッシック音楽に暗い私は、全く知らない人でしたが、ベネズエラの天才的な指揮者グスターボ・ドゥダメルを追ったドキュメンタリーです。
ドゥダメルは、1981年1月生まれ43歳、10代のころからその才能に注目されていました。2004年第1回グスタフ・マーラー国際指揮者コンクール優勝、2009年に名門ロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督に就任等、国際的にも高く評価されました。
彼はベネズエラの音楽教育機関エル・システマによって育てられました。
エル・システマは1975年にホセ・アントニオ・アブレウ(経済学者で音楽家、1983年チャベス政権下で文化大臣)によって設立されます。国家の支援によって無償で貧困層の子どもたちに音楽教育を提供しました。
アブレウは、音楽は「社会の発展の要因」「最も高度な価値、連帯、調和、相互の思いやり」をもたらすという信念がありました。
映画題名のマエストロは彼のことです。ドゥダメルは、彼を音楽だけでなくあらゆる面の恩師として尊敬しており、彼の志を受け継いでエル・システマを成長させようと努力しました。
映画はエル・システマのシモン・ボリバル楽団をはじめとする多くの楽団のリハーサル、それを指揮するドゥダメルを描きます。ベートーヴェン『第5』『第9』、ドボルザーク『新世界』等が演奏されます。彼は楽団全てを包み込むように指揮しました。
ユーモアと厳しさの人となりを感じます。
彼を排除したもの
ベネズエラはチャベス政権の末期以降、10年以上、経済が悪化し政治的混乱が続き、それを弾圧する強権的政治が続いています。国連難民高等弁務官事務所は、ベネズエラからの難民はアフガニスタン、シリア、ウクライナと並ぶ600万人を超えると言っています。
2017年エル・システマの音楽家が、政府批判のデモに参加して死亡した時に、それまで沈黙していたドゥダメルは政府に対して「暴力はダメだ」というメッセージをニューヨークタイムズに載せました。
これ以降シモン・ボリバル楽団の演奏活動は中止され、ドゥダメル自身はベネズエラに帰ることが出来なくなりました。
それは、この映画の撮影の最中に起こりました。そのため映画のテーマはドゥダメルの音楽活動の紹介を超えて、政治的メッセージを持ちました。
映画自身はベネズエラの状況、混乱の要因などは描かず、ドゥダメルに加えられた理不尽な扱いを批判するだけです。映画を見た後に、それらを調べすに済ますことは出来ませんでした。
『海の沈黙』
倉本聰の脚本ということで見に行きましたが、がっかりの映画でした。
世界的な大家、田村(石坂浩二)の展覧会で掲げられた絵が贋作だと、本人が言い出します。ドタバタ的なことがあって、それを書いたのは田村の同門であって、かつて天才と言われたが、画壇から追放された津山(本木雅弘)だと種明かしをします。
贋作といっても、もとの絵に津山が書き加えたもので、それが田村も自分の絵以上のものだと思っている、と描きます。
津山の人生は贋作ばかりを書いてきたような感じです。この辺りが分からないのです。日本では活躍することは難しかったもしれませんが、海外では評価される絵さえ書けば、それなりの地位を得られると思うのです。津山をささえる謎の男スイケン(中井貴一)は津山の何に魅力を感じていたのか、もし力があるのなら、それにふさわしい活躍の場を与えられなかったのか、映画は全く説明しません。
そして、二人を対比して、芸術(この場合は絵)はお金や権威によって価値付けられるものではない、本当の美とはそうしたところとは無縁のものだと語って終わります。
わかりにくい説明かもしれませんが、一流の脚本家、監督、役者を揃えながら、わけのわかない映画だと、私は思いました。
『ラムの大通り』
監督がロベール・アンリコで、ブリジット・バルドーとリノ・バンチュラが主演するので期待して見ましたが、スター二人が戯れるだけの映画でした。
タイトルはフランスの街並のことかと思っていましたが、禁酒法時代の米国(1920~33年)にラム酒を密輸したカリブ海のことでした。
映画は、カリブ海の密輸船の船長リノと、映画スター役のブリジットが絡むものでしたが、書くほどのストーリーがあるわけもない映画でした。