『レディ・マエストロ』『デリッシュ』『ある男』『ジョン・レノン音楽で世界を変えた男』4本です。何かと忙しい師走で、特に月末は、家の片づけで映画を見に行けませんでした。
『レディ・マエストロ』
12月例会作品です。実在した女性指揮者の草分けであるアントニオ・ブリコの自伝的映画です。
現在でもそうですが、指揮者はほぼ男が占めています。20世紀前半、第2次世界大戦前という時代に、貧しい移民の子どもであったブリコは指揮者を目指しました。
大物指揮者に強引に弟子入りし音楽学校にも入学します。懸命の努力で、音楽界に彼女の存在を認めさせました。
彼女の努力と才能が素晴らしいのですが、それを支える人たちがいた、ということも描かれています。
そしてかなり複雑な彼女の出自や、若い時の恋愛なども描きました。ですから幅広く楽しめる映画になっています。
なぜ彼女がピアニスト等の演奏者ではなく指揮者になりたかったのか、そこは明確ではありませんでした。でも例会学習会の話を聞いて、その魅力の一端を感じました。大勢のプロフェショナルが自分の指揮で動く感じです。
彼女は「指揮者の魅力」に捕らわれて、困難であってもそこに邁進しました。
『デリッシュ』
フランス革命の前のフランスが舞台です。ある貴族に雇われている料理人が、主人の怒りに触れて解雇され、田舎に帰って来ます。
彼の下に「料理を教えてほしい」という女性が来ます。落ち込んでいた料理人は彼女の協力を得て、一般庶民にも開かれた食事を楽しめる店を開きます。
これがレストラン(フランス語で「回復」、元気にさせる食事を提供した)の語源といわれているそうです。
最後に、その貴族に復讐するという挿話もありますが、ちょっとわかりにくい映画でした。
『ある男』
平野啓一郎の同名の小説が原作ですが、小説が良すぎたので、映画はどうかなと思いながら見ましたが、よく頑張った作品でした。
どこからか流れてきて林業で働いていた男、谷口大祐(窪田正孝)が事故で死亡します。夫の死を、つつましい幸せな生活をしていた妻は悲しみます。
しかし1周忌の法事にやってきた、大きな旅館の経営者である兄は「これは弟、大祐ではない」と言いました。では誰なのか、妻はそこに拘りました。
知り合いの弁護士、城戸章良(妻夫木聡)に「夫が誰なのか探してほしい」と依頼しました。
見つけ出した夫は戸籍を交換していて、本当は殺人者の父を持つ男でした。
映画は大祐の半生を描き、また戸籍の交換、売買する人々を描きました。そして弁護士の出自が在日韓国人であることで、城戸自身の悩みも挿入しています。
小説ではそれらが整理されながらも、大きな膨らみをもって書き込まれていました。映画は、そこまでは描けないので、谷口大祐と城戸章良を中心にしています。ふくらみが足りない感じです。
小説が持っていた社会性は少し薄れた感じですが、これはこれでよかったです。
『ジョン・レノン音楽で世界を変えた男』
ジョン・レノンのドキュメンタリーで少し期待した映画でした。でも違いました。ビートルズ解散後の活動を描いたのを見たかったのですが、逆に、ビートルズに加わるまでの話が主な映画でした。
豊かな才能を持ちながら悩む若きジョン・レノンがいました。