高野山、熊野古道の旅その1

11月27日~29日と紀州を旅してきました。

1日目は神戸から湾岸線を通って、岩出市から九度山高野山金剛峰寺、高野龍神スカイライン龍神温泉の下御殿に泊まりました。

いつもその地域の歴史資料館に行きます。この日はねごろ歴史資料館と九度山真田ミュージアムでした。両方ともきれいでしたが、内容は今一という印象です。

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ねごろ歴史資料館

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根来寺の最盛期の境内

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真田ミュージアム

九度山関ヶ原の戦の時に西軍に加わった真田昌幸、幸村父子が徳川家康から蟄居を命じられた土地です。昌幸はこの地でなくなりましたが、幸村はその後、ここを抜け出して大阪城冬の陣、夏の陣で戦いました。

いろいろ彼らの遺品などが飾ってありました。この近くに昌幸をまつる神社もあり、そちらにもいろいろありました。

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真田軍の鎧、兜

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昌幸、幸村、大助の人形です。

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そして高野山に行きました。時間がないので金剛峯寺だけ行きました。

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鐘楼

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蟠龍の庭

あまり人出はありませんでした。宗教心のない私も金剛峯寺は厳かな雰囲気を感じました。

高いところでは1000mぐらいのところを通る高野龍神スカイライン約42㎞を走りましたが、紅葉がきれい、ということはありませんでした。ただ紀伊山地の真っただ中にいる感じです。

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宿舎、下御殿の夕食と朝食です。

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『スパイの妻』の感想

頑張っているけれども

「映画紹介」への不満

 残念な映画でした。タブーの扱いであった戦中の日本軍の重大な戦争犯罪を告発するという、これまでの邦画が出来なかったテーマを正面に提示しながら、全体的に力足らずに終わった感じです。

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 黒沢清監督は「頑張った」と評価できますが、この映画を紹介する新聞などの評論は全く駄目だと、私は思いました。ベネチア映画祭の銀獅子賞(最優秀監督賞)を取ったので映画評は、好意的に書いています。しかし主役の夫婦が知りえた重大な国家機密(満洲に置かれた、捕虜や敵国人を人体実験に使って生物兵器を開発した七三一部隊)について、その事実や旧日本軍の体質等の解説がありません。七三一部隊という言葉も使っていません。

 映画ではさらりと描いていますが、評論としては、そこが一つの焦点でしょう。

   国家機密を共有することで

 裕福でおしゃれな生活を楽しむ福原優作(高橋一生)聡子(蒼井優)の夫婦は、日本軍の重大な犯罪=国家機密を知り、それを世界に暴露しようと、命を賭して密航を企てます。スパイではありません。

彼らは、政治や国家体制に対する確たる思想を持っていないし、そういう組織にも属さない、一介の市民です。

福原優作は天皇制国家のもとで矛盾を感じることなく商売をしてきた貿易商ですが「愛国者ではなくコスモポリタンだ」と人道的正義を追求します。

時は一九四〇年、中国大陸での侵略戦争は泥沼になり、米英を相手にする世界大戦に踏み込む日独伊三国同盟を結んだ時期です。国際情勢を相手に商売にしていますから、暢気なように見えて、緊張感はあります。取引相手の英国商人が憲兵隊に逮捕され、旧知の憲兵隊長(東出昌大)に注意を受けます。

優作は満洲に行き国家機密を知ります。それは「八紘一宇」「五族協和」という綺麗ごとをスローガンとした日本の侵略戦争、日本軍の本質ともいうべきものです。

彼の同志である甥は、聡子の密告によって憲兵隊に逮捕され、両手の爪をすべて剥がされる拷問を受けます。彼女は憲兵隊の目を福原から逸らそうとしたのです。

最初は反対した聡子も協力して、二人で海外密航を企てます。夫婦の思惑、微妙な駆け引きがあり、結局、妻は逮捕され精神病院に収容されました。夫は脱出に成功します。

戦争の不安と恐怖が伝わってこない

この映画では、わずかに神戸空襲は描くものの、一発で都市を壊滅させた原爆、一晩で一〇万人殺した東京空襲等、戦争の恐怖は伝わってきません。日本の加害性も国家機密だけでした。

映像が、あの時代の空気を映し出しているか疑問です。治安維持法隣組、国防婦人会などで社会全体が締め付けられ、庶民の生活にも相互監視が厳しいのに、その感じがありません。

社員や使用人などに生活感がなく、戦争への不安や高揚感が描かれず、主演三人しか目に入らない映像です。

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翌日に見た『終着駅』(ヴィットリオ・デ・シーカ)では、ローマ中央駅で行き交う人々が生き生きと描かれています。彼らが背負う人生と、美男美女(モンゴメリー・クリフト、ジェニファ・ジョーンズ)の他愛のない、有閑マダムの不倫という俗なテーマが、見事に対比的していると感じました。

それに比べて、この映画は、蒼井優の存在感だけが浮かび上がり、有閑マダムの『「スパイの妻」になった女』という印象に終わりました。

『パパは奮闘中!』の感想

映画サークルの10月例会『パパは奮闘中!』の感想を書きました。映画全体にかかわったものではありませんが、私が気になったことです。

※  ※  ※  ※  ※

些末なことに拘った感想

「リベラル」のジェンダー

 原題は「われらの闘い」です。邦題は、主人公オリビィエが子育てと仕事、組合活動に対し、懸命に取り組む姿を反映しています。しかし彼の言動など内容を反芻して吟味すると原題の意味「われら」とは誰かを考えてしまいます。邦題のように単純ではないと思いました。

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私には少し不愉快な映画でした。なぜ不愉快になるか、ここではそれを書いてみます。

 通販会社の配送センターで働くオリビィエは、ある日突然、妻のローラに家出されて、小さな子ども二人を抱えて、途方に暮れながらも「パパが奮闘している」図です。

 彼は仕事ではチームリーダーです。その一方で労働組合の活動家です。この活動家というのが重要な属性です。

 フランスの労働組合の組織率は八%でOECDでも最下位です。しかし労働組合が締結する労働協約は九割を超える労働者に適用される制度をフランスは持っているので、労働条件を引き上げるための労働組合活動は、多数の労働者の支持を得ています。小さな組織ですがストライキやデモ、集会がたくさんあり、非組合員もそれに参加しているようです。この辺りが日本と全く違います。

 日本は組織率一八%ですが労働協約適用率はそれ以下という体たらくです。ですからフランスの労働組合活動家は権威があるはずです。

 彼は忙しさを理由に家事や育児は妻に任せっきり、しかも家庭での会話も一方的なようで、それに疑問を持たない男です。だからなぜ妻が黙って家を出たかわかりません。

オリビィエを助けるために、母や妹が来てくれますが、彼女らはローラが家出したことを一切非難しないのです。それどころか「あんたは父親と一緒だ」と身勝手で家庭を顧みなかった父を持ち出して、彼を非難します。

   労働組合にかかわる「リベラル」は、こんなもの、という批判です。かくいう私も同類で、こういう生き方を変えることなく、開き直っている一面もあるので、ここでは不愉快になりません。

「リベラル」の民主主義

この映画で駄目だと思うのは、子どもたちに民主主義を多数決だと説明するくだりです。オリビィエは現状を打破するために、労働組合専従職員の道に進もうと考えて、おそらくその説明を丁寧にしたうえで、子どもたちに「ここにいるか、引越しするか」を聞いたでしょう。息子エリオットは反対し、娘ローズは賛成します。

人生を多数決で決めるのは、民主主義の説明として正しいのか、駄目です。幼い二人を言い含めますが、これは茶番劇です。多数決で決めて良いことといけないことがあります。

エリオットの反対が「ここにいないとママが帰ってこれらない」と言うことだけなら、ラストシーンのような解決策があると示して、彼の納得を得られたのではないか、と思います。

以前上映した『キリマンジャロの雪』では、リストラ対象をくじ引きで選んだ労組委員長は、後にその「公平」は間違いだったと悟ります。オリビィエが「民主主義=多数決」というレベルで労組専従になるのは不愉快極まりない、と私は感じました。

『テルアビブ・オン・ファイア』の学習会

11月例会学習会 講師:岡真理(京都大学教授)

 『テルアビブ・オン・ファイア』を担当して、中近東の歴史とパレスチナの現状を調べました。『ガザに地下鉄が走る日』(岡真理)を読んで、これまで何度かパレスチナの映画を見てきましたが、今回は、まったく現状を知らないということを自覚しました。

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 パレスチナ取り巻く情勢があまりに厳しくて、希望を見いだせない中で「パレスチナに希望があるとしたら、それは私たち自身」と本書にありますが、岡先生の講演を聞いて、改めてそれを強く感じました。

 『テルアビブ・オン・ファイア』は、悲惨な場面は出てきません。すべてコメディタッチで描かれますが、その裏にある思いは、かの国の知識を持たない日本人には推し量りにくいと思いました。

 パレスチナ人たちは写真に写る時、あるいはユダヤ人兵士に対峙する時は、決して悲しい顔は見せないと書いてあります。心のうちは見せない、支配されない、挫けないという強い意志の表れです。

 そういう目でこの映画を見たらどう見えたか、例会後に感想批評を書こうと思います。

パレスチナの現

今回の岡先生の講演は、パレスチナの第2次世界大戦以後の現代史と現状について、そして映画『テルアビブ・オン・ファイア』に込められた意味、この二つを話されました。

1948年のイスラエル建国によって、歴史的パレスチナに住んでいたパレスチナ70万人が、故郷を追われて難民となりました。ナクバ(大破局)です。彼らは歴史的パレスチナ地域(現在のガザ、ヨルダン川西岸、イスラエルを含む)の内部や周辺諸国の難民キャンプに避難します。その後70年を経て難民は子や孫も含めると500万人になりました。

 難民となった彼らに何度もナクバが襲い掛かりました。イスラエル軍の攻撃、レバノンやヨルダンからも排除され、人権のない状態が続いています。

 1967年の第3中東戦争6日間戦争、6月戦争とも言う)により、パレスチナとされていた東エルサレムヨルダン川西岸、ガザ、シリアのゴラン高原、エジプトのシナイ半島(後に返還)がイスラエルに占領されました。それが50年も越えて続いています。

 これは第2次世界大戦後の国際社会では異常なことです。国連は非難決議し、イスラエル軍に撤退することを求めてきました。

 オスロ合意(1993年)によって、お互いにユダヤ国家パレスチナ国家を認める、と言う話し合いがされましたが、それ以後もイスラエルは軍事占領を続け、入植地は広げいきました。

2000年に第2インティファーダがあり、自爆テロが頻発して、それを理由に高さ8ⅿのコンクリート分離壁パレスチナ側に大きく食い込んで作られていきます。しかも交通の要所には検問所を置き、パレスチナ人の生活、社会経済活動を分断、阻害しています。

壁は国境に沿っているのではなく、入植地や重要な水源を取り込むようにしてくねくねと曲がっています。

残されたパレスチナ人の土地は耕作に適さない荒れ地になっています。

分離壁と検問のために、救急車も通れない、かつて車で10分で行けたところが2時間も要する、検問所で止め置かれた妊婦が出産する、そのような事態です。路上で並ばされて、身体チェックされる、それは著しく人権を侵害し、侮辱する行為です。

これは西岸住民がイスラエルエルサレムに入るのを制限するためで、この逆はフリーパスです。

 そして入植地を撤去したガザは、イスラエルによって完全封鎖されて窒息死させられようとしています。360㎢に約200万人という最悪の人口密度で、人の出入りや物資も規制されています。日用品、医療用品、エネルギー、建設資材も不足し、電力不足、水不足、下水処理もできない居住不能とされる状態です。

 失業率も異常に高く、ガザは国連やNPOなどの支援物資でかろうじて生きています。

 「自治区」と言うが実際は軍事力による占領と入植で、パレスチナ人の人権は奪われています。住民を代表する政治組織は西岸地区はファタハガザ地区ハマスと別れています。

映画では

主人公の名前はサラーム。脚本家見習いでちょっとぼんやりしている若者です。アラビア語で「平和」「平安」という意味ですが、「無気力な青年」とも見えます。

エルサレムに住んでいますが、エルサレムイスラエル化に無抵抗で、『オマルの壁』のような闘う青年ではありません。

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エルサレムに住む権利は与えられていて、IDを付与されイスラエルにも西岸地区にも行けます。しかし住居の改築、新築は許可が下りないという仕組みです。

映画ではサラームは検問所所長の圧力でテレビドラマの筋書きを変えます。それは「誰が≪物語≫を書くのか」を暗示しています。最初はうまくいきますが、最後にはつじつまが合わなくなり、追い詰められて、サラームは自分で考えざるを得なくなりました。

イスラエル

イスラエルアパルトヘイト国家で「ユダヤ人の国」としてアラブ系の人々を切捨てています。学校も別々にしながら、歴史教科書では、ユダヤ人にもアラブ人にもナクバを教えていません。

イスラエル民族浄化を貫徹しようとしています。土地を取り上げ、人権を抑圧してアラブ人を生きづらくして出ていくように仕向けています。

 考えたこと

パレスチナ悲惨な現状は、起点である1948年のナクバから現在までも続いているイスラエル国際法違反によるものです。ナチスホロコーストのように短期間での殺戮ではありませんが、「空間の扼殺」といわれるように、じんわりとしかも確実に、パレスチナ人が死滅するように生活環境、生活手段を破壊し、人間らしい生き方を望むことさえも奪い取っています。

国連は歴史的パレスチナの地に、イスラエルの建国を認めました。そしてその後のイスラエル戦争犯罪国際法違反の侵略、入植に対し、何度も非難決議し、破壊行為をやめる勧告も出しています。しかし何ら実効ある措置は取っていません。

米国の庇護のもとに、イスラエルは力を緩めることはありません。4年前のトランプ大統領の誕生は彼らに励ましました。2018イスラエル基本法に「ユダヤ人国家」を明記して、名実ともにアパルトヘイト国家であることを宣言しました。

国際社会は、何ら実効性のあるなく処罰を与えることが出来ず、また日本も含めて、きちんと実情を報道しないままになっています。

パレスチナの映画

パレスチナのドキュメンタリーはたくさんつくられていますが、劇映画では『太陽の男たち』『ガリレアの婚礼』『D.I.』『パラダイスナウ』『オマル」「歌声にのった少年』『ガザの美容院』があります。

逆にシオニズム映画の代表作はポール・ニューマン主演の『栄光への脱出』です。

神戸港は軍港、軍需産業の拠点でした

11月1日~7日まで展示した「神戸空襲と神戸港の写真展」で掲示した文章です。

昨年、神戸港は開港150年でした。神戸市は港に関するパンフレットなどを出していましたが、神戸港が軍事的な重要な拠点であった歴史が抜けています。それで、私たちが色々調べて、その空白を埋めました。

今は平和な国際商業港ですが、戦前は軍需産業が集積する阪神工業地帯を抱え、戦後は米軍の基地となり、朝鮮戦争ベトナム戦争に使われています。また米兵の休養の港でもありました。

1975年「非核神戸方式」を実施してから、米軍の軍艦の寄港がなくなり、平和の港となりました。

以下に、その文章を載せておきます。

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市民に知らされていない神戸港の歴史1930(昭和5)年~1975(昭和50)

海外進出を支える軍需産業兵站神戸港

 1923(13)関東大震災で、横浜港の埠頭が大きなダメージをうけたのに伴って、船舶を中心とした物流の中心が神戸港に移ってきました。

 神戸港周辺には、造船を中心とした鉄鋼・化学産業などの重工業地帯が広がり、当時の神戸は人口約100万の人口密集地帯でした。また、鉄道も神戸臨港線(灘駅起点)、さらに兵庫臨港線・和田岬線(兵庫駅起点)も完成して、造船(川崎、三菱)を中心に、鉄鋼(神戸製鋼川崎製鉄)、航空機(川西航空機)、鉄道車輌(川崎重工)の工場には、引き込み線で連結されていました。川崎重工神戸造船所は日本海軍の大型艦船を建造できる4つの造船所()一つでした。 ()横須賀・呉海軍工廠三菱重工長崎造船所

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空母:飛鷹

 アジア・太平洋戦争時は、神戸港には、大日本帝国の海外進出を支える軍需産業と海運(兵站)という大きな役割がありました。

 神戸空襲は、120(神戸市史第3巻表)あり、そのうち米軍機が現れたのは84(文書館)となっています。B29による焼夷弾無差別爆撃により、市民に多数の被害をもたらしました。また、53日は神戸港沖への機雷投下があり、港湾としての機能が失われ、蝕雷により船舶も被害を受けました。

 

米軍(GHQ)に接収された神戸港

 1945年の敗戦後は、神戸港と神戸市内の多くの建物は、GHQ(米軍)に接収されました。接収は 1945 9 月末から始まり、新港第 1 突堤から第 6 突堤、中突堤、兵庫突堤等、その他川西、住友、三菱、三井の倉庫等 の主要施設が接収されました。神戸駅の西には黒人専用のWESTキャンプ、三宮そごう南東側一帯埠頭までは白人専用のEASTキャンプとして接収されました。接収された所は、神戸市内で50か所以上にのぼりました。接収解除は、1946 年から 1947 年にかけて兵庫突堤、中突堤が解除されましたが、1950 年の時点では、主要な港湾施設は未返還のままでした。神戸港沖の機雷やその周辺の沈没船は、1948年までにほぼ掃海され、港の機能が回復しました。

 

朝鮮戦争ベトナム戦争時の神戸港

19506月に開始された朝鮮戦争では神戸港は米軍の出撃・兵站基地となりました。米兵輸送は1950 7 月に2回、第 25 歩兵師団所属の第 27 歩兵連隊と第 35 歩兵連隊を送り出しました。1950 8 月、北朝鮮軍の攻勢が続き、国連軍は朝鮮半島南端の釜山付近まで追い詰められしました。仁川上陸作戦が計画され、神戸港は侵攻部隊(1 海兵隊)と軍事物資を輸送するための基地になりました。9月、神戸港から LST(戦車揚陸艦)47(うち 30 隻は日本人船員が乗り組む)、輸送船・貨物船66隻が出撃し仁川上陸作戦に参加しました。この上陸作戦攻撃部隊はトラクター部隊と呼ばれました。

ベトナム戦争(1961年から)は、神戸港の埠頭の一部は米軍の兵站基地として使われ、アメリの空母を含む多くの艦船が入港していました。核兵器を積載した米艦船も入港したといわれ、ベトナム戦争での米兵の休養地でもありました。ベトナムでの戦闘終了の後、1974年に神戸港は米軍基地から解放されて、最後の第6突堤が返還されました。

 1975(昭和50)318日には市議会で「核兵器積載艦艇の神戸港入港に関する決議」(非核神戸方式)が、全会一致で議決され、以後米艦船は神戸港に入港していません。

2020年10月に見た映画

10月の映画

『マーティン・エデン』『ある画家の数奇な人生』『ラスト・ブラックメン・サンフランシスコ』『ミッドナイトスワン』『パパは奮闘中!』『オン・ザ・ロック』『スパイの妻』『終着駅』『かぞくのくに』『0.5ミリ』『百円の恋』11本です。

映画サークル創立70周年記念例会「秋のサクラまつり」で安藤サクラ主演の映画を結局3本とも見たので数が増えました。この3本はそれぞれ監督も違うし、安藤サクラの違う魅力を出しています。私が感じる彼女の魅力を、そのうちに書いてみたいと思います。

その他は、突っ込みたい映画はあっても「良かった」というのはなかったです。でも長い感想になりました。

『マーティン・エデン』

 米国文学の人気作家ジャック・ロンドンの自伝的小説の映画化です。彼は『野生の叫び』『白い牙』など動物小説や冒険小説、SFなども書いています。エンターテイメント系の作家ですが、この映画では小難しい理屈をこねる純文学系の作家のように描かれています。

 教育を受けていないマーティン、工員や船員等の肉体労働で生きている最下層の男が、ひょんなことから上流階級のお嬢さんと恋をして本を読み始め、その面白さに惹かれて小説家になろうと決意します。

 コンクールに応募して何度も落選しますが、とうとう小説家になって成功します。

 上流階級の人々とは合わない面もありますが、成功してお金持ちになります。でもそれで幸せになったか言えばそうではない、という結末でした。

 貧しい労働者で、しかも頭がいい。みんなの前で演説します。デモやストには賛成しますが、労働組合には反対です。「ボスが変わるだけだ」といいます。無政府主義ですかね。

『ある画家の数奇な人生』

 ナチス時代に生まれた少年が、現代美術の一流画家となるまでの人生を描いた映画です。

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2次世界大戦を生き抜き、東ドイツで育って、画家を志します。結婚して将来を嘱望される画家となりますが、西ドイツに亡命して自由な作風を作り上げて独自の地位を占めるようになりました。

 モデルがいますが、虚と実を混ぜ合わせた物語にしていると書いてあります。

 ナチス時代にピカソなどが「退廃美術」と否定され、戦後の東ドイツ時代は「社会主義リアリズム」が最高のもので、それ以外はダメと言われます。ここは対比的ですが、芸術に政治が介入するのは醜悪だと見せます。

 ソ連服従していた国の矛盾は芸術にも及んでいます。東ドイツは、スポーツも含めて高い水準の文化、芸術、芸能を作り上げましたが、根底にはタガをはめています。

そして西ドイツ時代に悩みぬいて新しい作風を打ち立てた作品が、高い評価を得ます。

彼の人生はナチスの影がつきまといました。ナチス下の幼少時に彼の叔母が精神異常で収容所へ、そして「処分」されます。その時の医者が、彼が結婚する娘の父親でした。お互いに、それに気づくことないのですが、反発を強めていきます。

戦後、いわばナチスの戦犯であった、この男がソ連軍高官の妻を救ったことで、過去を隠蔽して東ドイツの中で高い位置を占めることになります。東ドイツ批判も強烈です。

ナチス東ドイツを強烈に批判しますが、西ドイツとその後の統一ドイツでは自分の能力を発揮した、という映画でした。

『ラスト・ブラックメン・サンフランシスコ』

 サンフランシスコの高級住宅地に住むことを夢見た黒人の映画。

米国は地区計画などで貧困層が買ったり住んだりできないように一定以上の宅地規模を規制しているので、高級住宅街には黒人は住めなくなっています。

 統計調査によると収入水準は黒人も上がってきていますが、資産を比べると、まだ10倍ほどの差があります。財産の中心は住居です。

 この映画は、サンフランシスコの今では高級住宅街になった家を、祖父が建て、そして住んでいたと信じ込んでいる黒人が、不法侵入する話です。魂の故郷のようなあこがれが何度も語られますが、最後は、それは思い違いだったと明らかにされます。

見ていて、貧しさゆえの黒人差別は感じますが、それ以上に何があるのかわかりませんでした。

『ミッドナイトスワン』

 草彅剛主演。彼が性同一障害のトランス女性、渚沙を演じて一部では高い評価もあるようですが、例会で『ナチュラル・ウーマン』を見ていますから「ちょっと違うのでは」という印象です。

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 何が違うかといえば彼女の自尊心です。

 渚沙はニューハーフクラブで働き、お金をためて性転換手術をしようと思っています。そこへ子育て放棄の母親と引き離された親戚の中学生の女の子、一果を一時預かるという展開です。二人は母子のような感情を持つようになります。

一果はバレエの才能があり、世界に羽ばたくのですが、渚沙は手術を受けたものの後のケアが出来なくて死んでしまいます。

自尊心は自立と思いやりです。渚沙は、思いやりはあったものの、トランス女性は一般的に厳しい生活環境になります。それに対して周到に自立していく用意がなかったということです。簡単に言えば、大金を稼ぐ覚悟、ギリギリのところで助け合える仲間がいないのです。それは社会の側の責任でもあるのですが、寂しく死んでいく姿を描くのは、彼女たちの自尊心を貶めているように感じました。

家族の映画、という評価もあるようですが、もしそれを狙っているとしたら浅はかです。

『パパは奮闘中!』

 映画サークルの10月例会でした。西神ニュータウン9条の会HP11月号にも紹介を書きましたが、それとは違うことを書きます。

 妻に家出されたオリビィアは、職場をやめて労働組合の専従職員なるために、子どもと相談して「多数決の結果」で、そう決めます。

 上の子に「多数決は素晴らしい民主主義の制度」といいました。

 私は「馬鹿か」と思いました。労働組合の役員はこのように考えている、という批判と受け止めました。

 本当に重要なことは多数決で押し切るのは民主主義ではない、と思います。父親の仕事は、子どもにも大きな影響を与えます。この映画ではどこに住むかという問題に矮小化して、「出ていけばママが帰ってきた時に困る」という思いを子どもに与えるだけです。きちんと「おばあちゃんやおばちゃんにも言っているから、家を代わってもままはすぐに帰ってこられる」という説明をすればいいし、壁に住所を書くのは映画的に効果的だから、多数決ではなく、こうして問題を解決したという風にすればいい。それを民主主義=多数決のような説明をするのはダメだ。

オン・ザ・ロック

 ビル・マッケイが好きです。いい加減な老人役ですが、この軽さはなかなか出せないと思います。

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 娘が「夫が浮気しているのでは」とプレイボーイの父親(ビル・マッケイ)に相談します。彼は尾行して事の真実を探ろうと、夫が社用でいくパーティや出張先にまでも娘を連れまわします。

 結局、真面目な夫でした。妻が白人、夫は起業家の黒人。周囲の人間はセレブという上流階層の人間関係を描きました。

『スパイの妻』

 ベネチア映画祭銀獅子賞に惹かれて見に行きましたが、やはり「残念」という映画でした。私と黒沢清監督は合いません。でも七三一部隊を取り上げたことは高く評価したいと思います。歴史的事実ですから誰も表立って批判は出来ないと思いますが、森村誠一さんが『悪魔の飽食』を書いたときは、右翼が大騒ぎしました。

 今回はNHKが製作にかかわっています。

 貿易会社社長の福原(高橋一生)が満洲に行ったときに偶然にも関東軍が捕虜や敵国民を使ってペスト菌などの生物兵器を開発するために人体実験をしているという「国家的秘密」を知ります。

 彼はこの事実を米国に持ち出して発表するために行動を開始します。証拠は処刑された医者が記したノートと現場を映したフィルムです。

 福原の行動に不信を持った妻(蒼井優)に知られますが、彼女も巻き込んで米国への密航を企てる、という映画です。

 どこがダメかというと、時代の雰囲気が描かれていないと思うのです。時期は日独伊三国同盟締結ですから一九四〇年。欧州ではすでに第二次世界大戦が始まり、日本は中国大陸深く侵略戦争に突っ込んでいます。

 社会全体の先行きの不安、憲兵特高の怖さ、拷問の壮絶さ、そしてその裏腹の高揚感が伝わってきません。

 映画の冒頭に、取引をしている英国人商人が憲兵隊にスパイ容疑つかまるところから始まるのですが、割合と能天気なのです。旧知の憲兵隊隊長(東出昌大)を福原は冷たく追い払う感じです。

それと社員や憲兵隊員などの脇役があまりそろっていません。前述の3人が目立つだけで、全体的に薄い感じです。

精神病院に入れられた妻の「狂っているのは世の中だ」も浮いています。

この程度の映画でも彼が好きな人は好きなのでしょう。

『終着駅』

 そのすぐ後に見たのがヴィットリオ・デ・シーカこの映画です。1950年代のローマ中央駅で、不倫の関係の二人の心の揺れを描きました。名作といわれる監督の腕の冴えが画面から見えます。筋の運びよりも映像の力だと思います。

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 米国からローマに来た人妻が、短期間に美貌の青年と恋に落ちるが、それを振り切って米国に帰ろうと決意します。そして彼女を追って駅に来た男とのの2時間程度のやり取りです。

全く感動的な筋ではないのですが、荷物をもって見送りに来た彼女の甥、彼らを取りまく駅員、ふれあい、通り過ぎる乗客の様々な表情がとても生き生きとして効果的です。彼らが負う人生が垣間見える映像でした。

『かぞくのくに』『0.5ミリ』『百円の恋』

 この3本は安藤サクラの主演という共通点はありますが、監督も脚本家も違っていてかなり毛色の違う映画になっています。安藤サクラは、それぞれの役柄を演じ分けています。とても魅力的な映画に仕上げていました。

『かぞくのくに』は、在日の家族、社会を描きました。北朝鮮帰還事業で北朝鮮に行った兄が25年ぶりに帰ってきます。脳に腫瘍があるので治療をするために3か月の滞在が許されます。

それが1週間もしないうちに突如帰国命令がきました。治療も何していないのに、なぜどうしてという疑問を、誰もが持ちますが、兄はこの国では「よくあることだ」とあきらめて、北朝鮮に帰っていきます。

彼にとって日本は父母と妹がいる国で、北朝鮮は妻と子がいる、ともにかぞくのくにです。大事にしたいという思いは伝わってきました。

この映画では北朝鮮はとても理不尽な国だと描かれています。突然の帰国命令、そしてそれに質問や疑問も言えない国です。北朝鮮から来た監視役の男がホテルでAVビデオを見る場面も挿入されますが、国の制度として人間らしさのかけらもありません。

キネマ旬報20121位になり、その他の映画賞も多数受賞していました。安藤サクラは妹役で、やんちゃで聡明な女性を演じています。

0.5ミリ』

世の中から見放されたような老人を押しかけ介護する、へんてこな介護福祉士山岸サワをサクラが演じます。老人を織本順吉井上竜夫坂田利夫津川雅彦柄本明草笛光子が演じています。世の中から浮き出てしまった個性的で悲しい老人たちですが、一方ではたくましさもあります。

 居宅介護をしてきた家で、火事を起こして失業して「はなれ介護福祉士」となった山岸サワは、お金を持っていそうな老人に脅しすかしで、押しかけ介護で家に入り込みます。

 サワは料理も上手で有能な介護士です。彼らの生活は確実に向上しますが、いつまでもいることは出来ません。

 それぞれのエピソードがとても面白く楽しく描かれました。

 最後に最初の火事を起こした家の引きこもり娘(自殺した母親に男装され、聾唖のようにしゃべらない)と邂逅して、二人でどこかへ旅立つという終わり方です。

全体を通した主題はわかりませんが、そう言う見方に拘らす楽しむ映画です。

世渡り上手なサワと引きこもり少女が一緒に生きるのは不安なようで、うまくいきそうな感じです。

『百円の恋』

自堕落な30女のぶよぶよの体を見事にシェイプアップしたボクサーへと変身するサクラでした。

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 家族と喧嘩して一人暮らしを始めた斎藤一子は、百均コンビニでバイトし、ボクシングジムにいた男、狩野祐二(新井浩文)に一目ぼれします。

 彼女の周りはへんてこな人間ばかりです。自堕落で無気力な父、気弱でうつ病の店長、意地悪なコンビニ会社社員、お金を盗んでとんずらした店員、期限切れの弁当を取りくるコンビニを首になった女等

 惚れた男は試合に負けてボクサーをやめて、警備員の仕事をしていました。彼と同棲を始めますが、男は「生真面目に生きる奴は嫌い」と別の女のところへ行ってしまいます。

 失恋した一子はボクシングに打ち込み、とうとうプロ資格を取り試合までやってしまいました。

 この試合が最高の盛り上がりです。家族みんなが応援に来ました。

 試合で負けた一子を待っていたのは狩野です。彼と飯を食べに行ってエンドでした。必死のトレーニングで成長したはずの一子が男を振る、それがは普通の映画ですが、これは一子はまだ狩野に未練がある、と言いました。でも先のことはわからない、という映画です。

      私はあんな下種な男は嫌いです。

 

 

2020年10月に読み終えた本

噺家の魂が震えた名人芸 落語案内/第6三遊亭円楽』『卑劣犯~素行調査官~/笹本稜平』『ザ・万字固め/万城目学』『ガザに地下鉄が走る日/岡真理』『空爆の歴史/新井信一』『果鋭/黒川博行』『女検事・雨宮律子①~⑤/渡辺やよい』読み終えるとすぐに感想や紹介を書けばいいのですが、ついつい後回しになるので、ここにあげるのが遅くなりがちです。

       それぞれいい本でしたから、長い文章になってしまいました。

噺家の魂が震えた名人芸 落語案内/第6三遊亭円楽

 博多の落語祭りに集まった落語家30人に、好きな演目と演者を聞く、というアンケートをとり、それに基づいて円楽が落語の魅力を紹介する本です。主には東京の落語家で上方は笑福亭鶴光ほか数人です。

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 現役の落語家ですから、演者は自分の師匠、大師匠ぐらいまでです。よく出てくる人で私がわかるのは談志、小さん、円歌、円生、先代円楽、志ん朝米朝松鶴、枝雀ぐらいで、東京の落語家の昔の人はわかりません。

 上位に来た演目を書いておきます。「らくだ」「鼠穴」「猫の災難」「百年目」「火焔太鼓」「掛取り」「笠碁」「金明竹」「芝浜」「中村仲蔵」「野晒し」「花見の仇討ち」「愛宕山」「居残り佐平治」「鰻の幇間」「小言念仏」「紺屋高尾」「代書(屋)」「唐茄子政談」「時そば」「文七元結」「包丁」等、書いているだけで楽しくなります。もっと続きますがあとは省略します。

 ほとんど好きですが、上位に来る演目は出来る人がやるので誰のものも良いです。これにこだわらず私が選ぶ、演者演目の組合せでは、枝雀の「代書(屋)」「宿替え」小三治の「子別れ」談志の「付き馬」福団次「藪入り」松鶴「らくだ」米朝はてなの茶碗吉朝「地獄八景」7代目松喬「転宅」ですかね。

『卑劣犯~素行調査官~/笹本稜平』

 警視庁の監察官の活躍を描くシリーズ。キャリアの首席監察官、彼が呼んできた同級生で元探偵、退職前の警官のトリオが活躍します。監察は下には厳しく上には甘い、組織を守るために不祥事を隠蔽することも厭わない体質です。表向きは綱紀粛正のために職員の仕事ぶりも私生活も見張る、のですが実態はゴマすりと腰掛の職場です。

それをこのトリオは本来の監察にしようと奮闘するシリーズです。

今回は、児童ポルノに絡む殺人事件が発端です。警視庁の担当刑事がひき逃げで殺され、その部下たちも仕事を外される事態がありました。

交通事故や殺人事件は監察の担当ではありませんが、警察内部の犯行が濃厚で、しかもかなり上層部が絡んでいると見て、トリオが動きます。殺された刑事の部下たちも怪しいと幹部を極秘で探っています。この両者が協力して犯人が絞れてきますが・・・。

最終的には真相が究明され、関係者は処罰されます。警察内部の上意下達、締め付けなど、一般捜査と違う調査官の捜査方法が描かれます。筆力がありますから読ませます。

基本的に性的指向は自由と思っていますが、児童ポルノは、ちょっと、と思います。

『ザ・万字固め/万城目学

 エッセイですが、幅広く蘊蓄を披露するというタイプではありません。でもナチュラルボーンが「生来」という意味だと知りました。面白かったのは戦国武将でサッカーチームをつくったら誰をどこへ持って行くか、という遊びです。ゴールキーパー松永久秀において、司令塔は斎藤道三ボランチ豊臣秀長と書いています。

 私はサッカーの司令塔とボランチの違いが明確にはわかっていないのですが、彼は微妙に使い分けています。戦国武将とサッカーを組み合わせるのは、彼の小説らしいと思いました。

 安定した株を買おうと東京電力株を取得して、すぐに東日本大震災が来て大暴落、700万円の損をしたそうです。しかしその直後の株主総会に出て、それをレポート。延々6時間、議長役の勝俣会長は中座せずとか。そこを評価しています。

 他にはひょうたんをつくった経験談。ひょうたん愛好の会があることも知りました。

『ガザに地下鉄が走る日/岡真理』

 パレスチナ人たちが、全くひどい状況にあることを思い知らされました。現代のヨルダン川西岸、パレスチナ自治区を舞台にする映画『テルアビブ・オン・ファイア』を担当したので、パレスチナイスラエルにかかわる本を何冊か探しましたが、この本が1948年からのパレスチナ人に襲い掛かってきた厄災がどれほど酷いものか、一番よく教えてくれました。

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 20世紀以後のパレスチナがトルコの支配、英仏の植民地であり「3枚舌外交」でユダヤ人とアラブ人が対立するような中で、第2次世界大戦後に国連も承認してイスラエルが独立宣言をします。パレスチナ人は故郷を追われ、難民となってガザへ西岸へ、そしてヨルダン、レバノン、シリアなどへ逃げます。

 それから70年を過ぎて、彼らの上にどのようなことがあったのか、私は少しは知っているつもりでしたが、事実はそれをはるかに超える悲惨なものでした。そして現在も、それは続いています。人権を踏みにじられるとはこのようなことなのか、と思いました。

 この世の地獄、世界最大の野外監獄、アパルトヘイト時代の南アフリカよりも悲惨という言葉も大げさではなく、絶望しかないパレスチナ人の姿が語られました。

この本は2018年に出版されたもので、トランプ米国大統領の時代です。彼がイスラエルに与えた支援がパレスチナ人をさらに厳しい状況に追いやっています。再選されなくてよかったと安堵しました。

 映画はコメディタッチで作られていますが、ここに書かれたパレスチナの実情、パレスチナ人の心情を知れば、その真意や背景に抱えるものの大きさを考えずにはおられません。

空爆の歴史/新井信一』

 「神戸に平和記念館をつくる会」の写真展資料をつくるために、この本は全部読みましたが『戦略爆撃の思想/前田哲男』『飛行機の戦争19141945総力戦体制への道/一ノ瀬俊哉』『戦略爆撃機29/村上八郎』『アメリカの日本空襲にモラルはあったか/ロナルド・シェイファ/訳・深田民生』など拾い読みをしました。少しだけ紹介しておきます。

『飛行機の戦争』

海軍主流が「大艦巨砲主義」であったのは嘘と言います。山本五十六などが飛行機重視を言ったと小説で紹介され、海軍の良識派が流布されていますし、映画『アルキメデスの大戦』も俗論にもとづく架空戦記でした。

さらに一流の歴史学者であるの大江志乃夫や藤原彰もそういったので一般に流布しますが、しかしそうではなかったようです。

莫大な戦費は国債で賄います。戦艦の製造費は莫大ですが戦闘機のそれは小さく、しかもこれからの戦争の主役になると宣伝します。あなたが国債を買うと飛行機が作れると宣伝し国債を募ります。飛行機が重要な戦力であることを理解させています。

軍部も国にも戦争には国民の理解と協力が必要というスタンスだった、といいます。

この辺りは加藤陽子先生の本にも書いています。

その当時の日米仮想戦争を扱った本では、戦闘機の闘いが主になるので、太平洋を渡ってくる米軍は苦しい、日本は勝てるとあおりました。

戦略爆撃機29

日本の戦力、戦闘機や高射砲ではB29に歯が立たなかったそうです。

戦前の日本の工業力技術力は欧米からの輸入に頼っていて、それを改良改善して使っていました。それを中国大陸への侵略で、1930年代に止められると、とたんに世界の進歩についていけません。特にレーダーやエンジンで格段の差がついていたようです。

ゼロ戦戦艦大和の作った日本の技術力は高いと言いますが、そこまでであったようです。

アメリカの日本空襲にモラルはあったか』

米軍空軍の指導部の考え方を紹介しています。日本とドイツに対応する考え方が違う、人種差別があります。

米軍は欧州では無差別爆撃をしていません。米軍が昼間の精密爆撃、英国が夜間の無差別爆撃という分担をしています。

日本には早期に降伏させるために、無差別爆撃、原爆、ソ連の参戦を実行します。前面に出すのは米兵の命を救うため、という目的でした。

戦略爆撃の思想』

600頁を越える大部。図書館になくてネットで古本を買いました。4000円の出費。だが期待外れでした。空爆の通史的にものを期待したのですが、ほとんどが日本軍の重慶爆撃の記述で、詳細なデータをもとに重慶爆撃を明らかにして、それはそれで貴重な研究文献です。でも紛らわしい題名でした。

空爆の歴史』

これが一番参考になりました。岩波新書でコンパクトにまとめられていて、私が書いた写真展の資料はこの本の抜粋みたいなものです。この文章は113日に載せましたので、それをお読みください。

『果鋭/黒川博行

 果鋭というのは「決断力があり、気性が鋭い」意味です。

 黒川さんは先月の『破門』に引き続いてです。これは元大阪府警マル暴担当であった堀内(40)と伊達(30代)のコンビが活躍するシリーズです。ミステリーですが謎解きではなく、二人がひたすら走り続けるハードボイルドです。

 『果鋭』はパチンコ業界の裏表を描きました。伊達は競売屋の臨時調査員の仕事をしていますが、その前歴を買われて、パチンコオーナーの所に半グレが恐喝に来たので話をつけるように依頼されたので、無職である堀内を誘って解決に乗り出します。そしてパチンコ業界の裏を知るとお金の匂いがあるのを感じ取り、恐喝の全体像を知ろうと、警察の調査網も活用しながら関係者を次々にあたっていきます。

 当然のように暴力団が出てきますし、パチンコ業界が警察の天下りであることから、そこの不正も出てきます。


 芋づる式に色々な人物が出てきて、犯罪の匂いを見つけると、それが金に変わっていきます。

 パチンコ機械そのものがコンピューターになっていて、遠隔操作で還元率を操作できるそうです。平均85%と書いてありますが、この小説ではそれを毎日操作しているようです。曜日や周辺パチンコ屋の状況を見てオーナーが判断していると書いてあります。

 もう一つ、球の換金の機械を操作して、不正しているケースも書いてありました。 

『女検事・雨宮律子①~⑤/渡辺やよい

特に何がいいということではないですが、レディース・コミックにちょっとはまりました。

これは検事の雨宮律子とその事務官寺口を主人公にして様々な刑事事件を解明していくミステリー漫画の面を持っています。

f:id:denden_560316:20201108224307j:plain律子は未亡人で亡夫の友人で律子とも古い付き合いのある、結婚している弁護士と恋仲にっています。寺口は監察医の若い女に迫られていますが、律子に思いをもって煮え切らいない、という状況です。

事件の謎ときと、彼ら中心人物の愛憎、肉欲が絡むようにして話は進んでいきます。すごいトリックや人間観察があるわけではないですが、気楽に読めます。引き続きほかのシリーズ、あるいは別の作者のものを読んでみようと思います。