2026年4月に見た映画その2

『パリから来た殺し屋』『ロッコク・キッチン』『木挽町のあだ討ち』の3本が残っています。それぞれ全く違いますが、特色を持った良い映画でした。 

『パリから来た殺し屋』

 ジャン・ルイ・トランティニアが主役の映画です。あんまり政治的な深い意味はないかと思いますが、逆転逆転の面白い映画でした。

 パリからロサンゼルスやってきた殺し屋ルシアンは標的のマフィアのボスを暗殺します。すぐにフランスに帰ろうとしますが、何者かによって、パスポート等が奪われて、そして命を狙われる立場に追いやられます。

 逃げ回りながらパリに帰る手立てを得た時に「このままでは帰れない、ずっと命を狙われる」ことに気づき、彼を狙う殺し屋に逆襲し、そしてその男の黒幕は、この殺しの依頼主だった、ボスの妻とその息子であることを突き留めます。

 そしてまた殺し合うという話です。

『ロッコク・キッチン』

 「ロッコク」は国道6号、東京から福島を通って仙台へ行く国道です。福島県の沿道で暮らす数組の人々に焦点をあてたドキュメンタリーです。

 「みんな何を食べどう生きているんだろう」と副題がついています。福島の浜通り、大熊町、双葉町、浪江町、南相馬市小高区等で人々でした。キッチン、食べるしんーんがよく出てきます。

  面白い映画です。最初出てきたのはインドからの留学生の女性でした。彼女がなぜ被災地の観光ガイドを務めるのはよくわかりませんが、

 そして夜だけ開く古本屋。「俺たちの伝承館」は震災と原発事故を展示しています。

『木挽町のあだ討ち』

 上手に作ってある映画です。直木賞と山本周五郎賞を得た永井沙耶子の同名の原作をもとに、それを映像化してますから、手の込んだ展開が描けていると思います。しかし何か心に響くものがなかったのです。

 まず最初に、衆人環視のもとで見事な仇討がなされます。というか芝居小屋の前で、しかも芝居が跳ねた後で、芝居見物の人々を集めて、いわば彼らを仇討ちの証人にするように行われたのです。

 表面的には遠山藩の監査役、伊納清左衛門を殺して出奔した家来、作兵衛を息子、菊之助が追ってきて仇を討ったというものです。

 しばらくしてその仇討の真相を探ろうとする侍、加瀬総一郎がきました。

 仇討ちは仕組まれたもので、作兵衛は生きていました。しかしそれ以上にこの仇討には秘密があったのです。

 清左衛門は、藩の家老の横領を探り当てたのですが、逆に罠にはめられて切腹、お家取り潰しを迫られていました。この危機に対し、清左衛門は、自分を家来に殺させ、その仇を息子に討たせるという奇手を考えました。

 世間に有名になった「仇討の家」は潰せないという読みです。

 しかし菊之助の「仇討ち」に危惧した母は、昔馴染みの芝居小屋の男、篠田金治に「止めて欲しい」と依頼していたのです。

 金治は作兵衛、菊之助そして芝居小屋の連中の協力を得て「仇討芝居」を大観衆の前で演じて、アリバイつくりをしました。

 だから金治や菊之助は遠山藩の事情は知らなかったということです。作兵衛も藩の秘密は洩らさなかったいうことです。

 清左衛門の部下であった加瀬総一郎は、清左衛門から知らされてはいなかったけれども突然の「主殺し」を疑い、さらに「仇討」の芝居を見破り、作兵衛は「家老の横領」の証拠を持っていると考えて江戸に来たのでした。

 だから清左衛門は、部下の総一郎がこのカラクリを見抜くと信頼しての奇手だったと思います。

 なんかものすごく複雑で、それがすべていうまく行って、この物語が成立しています。私はその手の込んだ作為に「面白くない」という印象を持ちました。

 ミステリーの組み立ては上手ですが、時代劇という人情の機微ではないと思います。心ならずも義理人情に縛られる人間が欲しいと思いました。

神戸演劇鑑賞会9月例会『12人の怒れる男たち』の脚本を読んで

 演劇鑑賞会の9月例会の運営サークルになりました。いつものように会報担当にです。

 7月2日に会報担当の打ち合わせがありました。そこに脚本を読んだ感想(下記)を提出して、議論の一つのたたき台にしてもらいました。

 この芝居は、米国で1954年のテレビドラマとして放映され、1957年シドニー・ルメット監督で映画化されたものです。公開時ではないですが、テレビ放映等でこの映画を見た記憶があります。非常に良かったです。

 今回は東京芸術座の公演です。「作:レジナルド・ローズ」とありますから、ほぼ原作を踏襲していると思います。

 ごく簡単にあらすじを言うと、少年が父親を殺した事件の12人の陪審員たちが、最初は11人が有罪、一人が無罪と言いいました。それが証拠証言を検討する中で「有罪に対する『合理的な疑い』がある」と考えて、最後は無罪で一致するという話です。

 この芝居の脚本を読んで感想を書きました。会報担当で色々と意見が欲しいと思ったのです。それをここにあげておきます。

※  ※  ※  ※  ※  ※

 脚本を一度二度、読みました。簡単な感想を書いておきます。

 最初に、裁判長から「被告人の有罪について『合理的な疑い』があれば無罪。評決は全員一致」という説明があります。それがこの芝居、議論のルールです。

 スラム街育ちの少年が父親殺しで有罪ならば死刑となる判決について、陪審員それぞれの有罪、無罪の態度表明から始まります。

 12人のうち11人が有罪。一人第8号陪審員だけが無罪。8号は「人一人の生命にかかわる問題、簡単に決められない」ので無罪に手を挙げた。1時間議論をしようというところから芝居が始まる。その時点では8号も少年が「無罪」という確信は持っていない。

 そして11人がそれぞれに少年が「有罪」である根拠を話す。

 8号は「検察側の証人が検察の筋書き通りに証言する」ことに驚き「疑問が山ほどあった」といいます。決め手になる目撃証言は一人です。

 有力な物証である殺人に使われたナイフ、それは少年が買ったものであり、少年はナイフは持っていなかった。しかし8号は全く同じナイフを買うことが出来た。唯一無二の証拠ではないと証明した。

 9号が「あの少年はおそらく有罪でしょう。しかし、私たちはもっと論議を尽くすべきなのです」と意見を変えて、無罪という。

 さらに議論は進み、少年を有罪にした検察側の証人たちの証言について、その信ぴょう性が問われる。一つずつ8号が崩していく。証言に矛盾、疑いがあると指摘する。

 そして陪審員一人また一人「無罪」が増えていきます。

 「有罪」を主張する人の偏見、非論理、矛盾が明らかになり、感情的に激高することになってくる。

 とうとう「有罪」は三人になります。その最大のよりどころは「目撃した女の証言」となりました。

 そしてそれも9号陪審員の指摘もあり「信頼性が揺らぎ」ます。最後に、全員が有罪に「合理的疑い」を持って無罪の評決を下しました。

 丁寧に読んでいくと、検察側が出した証言、証拠はあまり確たるものでなく、8号などが指摘するように弁護士が無能だと思いました。弁護士も偏見と先入観を持って少年が犯人と決めつけていたようです。

 ミステリーとして読むと粗があります。

 「人の命は大事だ」と思う人が多数だという「良心」を信じて、最初は一人、少数派であっても頑張るべきだという、アメリカンデモクラシーと見ればいいのかな、思いました。

 同じ時代にあったマッカーシズムに対する批判を秘めている感じです。

 少年を有罪だという最後の三人は資本家階級(工場主など)としていることに、ちょっと引っかかりを感じました。

 喧嘩腰の議論もありますが、これがなぜ「怒れる男たち」なのか、何に対し怒っているのか、一つの議論になるところだと思います。そして陪審員(権力、支配者の象徴)全員が白人の男であることも、時代の制約があるとしても、それも含めて芝居を評価したいと思います。

 

西神ニュータウン9条の会HP2026年6月号

 5月の西神ニュータウン9条の会「20周年記念のつどい」が終わってホッとしている月です。それでもエッセイ10本、「ジョー句」川柳も11句集まっています。みなさん熱心ですし、現在の情勢の中で言いたいことがあるということです。私も、現在の情勢にあっていないかもしれませんが、色物としてでも頑張って投稿を続けたいと思います。

西神9条の会

上記からHPに入ってください。

以下は私の感想を交えた紹介です。

(20周年記念のつどいより)平和の力 憲法9条    島田 徹(竹の台)

 つどいの報告です。事務局長、島田さんは本当に奮闘しています。感謝と尊敬です。

 ここにも書かれていますが、伊藤さんはいつもみんなを励ます話をしてくれます。今回も、ウクライナ、ガザ、イランの戦争があって、核の使用あるかもと、世界中が大変な状況ですが、その元凶は3人(プーチン、トランプ、ネタニヤフ)と喝破して、世界中が協力すれば彼らを駆除できると思いました。

5・3兵庫憲法集会に参加して     鈴木哲雄(学園都市)

 私も参加しましたが、小雨まじりでしたが、6000人よく集まりました。感動したのはメインスピーカーとして登場した井上つぐみさんは、高校生平和大使として活動されていたことです。今は医師となっておられますが、同時に被爆体験の伝道者の活動をされています。

 反戦平和の活動は繋がっています。

戦争前夜の俳句に出会う   朝田菊緒(狩場台)

 現在の危機的な情勢を俳句にうたう句があることを知りました。戦前の「戦争が廊下の奥に立ってゐた」はとても有名です。現在の「街行くはやがてなくなる腕と足」は戦前の鶴彬「手と足をもいだ丸太にしてかえし」をモチーフにしているようです。

防衛費のリアル(6)    軍拡ブーム      西元善郎(竹の台)

 「軍拡ブーム」というタイトルは、いまの世界的な情勢を捉えています。現実の戦争を目の当たりにすれば、欧米諸国は自衛のための軍事力を持つべきだと思うようです。

 しかし9条を持つ日本は別の判断をする条件があります。しかしEU以上に軍拡をめざしています。

中道改革連合、これでいいのですか      山口洋司(狩場台)

 中道改革連合は国民に対する裏切りです。それを明らかにしています。

 不思議の国より(No.8)   「上野の森」    Alice(西東京)

 上野の森は芸術の森ですね。

 PFASを知ろう! オープン講座      脱プラサークル

 PFASは国民的問題です。早急に規制しなければなりません。

 炉辺の枕(11)『噺の肴 らくごの副食本/小佐田定雄』人生に落語は必需品  

つだわたる(美賀多台)

 落語は面白いですね。こんな本を読まなくても楽しめます。喜楽館に行くときは私に連絡してください。割引になる「名刺」を持っています。

憲法と映画(114) 『ペリカン・ブルー~自由への切符~』    <かな>(春日台)

 かつてのソ連の支配下にあったハンガリーの映画です。

♯ショート・ショート   『梅』    大西慶雄 No.21(春日台)

 梅の実が100個なっているのは感動です。

「今月の歌」は『ホルムズ海峡冬景色』です。イラク戦争を揶揄し、ばかばかしい現状を歌っています。こういう批判はもっとするべきです。

 

 

第27回高田城ロードレース

 2026年6月7日標記のマラソン大会を走ってきました。


 場所は新潟県上越市、10㎞のコースです。タイムは1時間4分52秒でした。10㎞では最悪で、1月に走ったひとよし温泉マラソンよりも4分以上遅いのです。

 またも加齢を実感してしまいました。

 レース中はくたくたになるほど疲れていましたが、終わると、それほどでもありません。足も痛くもなければ痙攣もしません。距離を走っていないのですから、こんなものかな、と思いますが、ちょっと残念です。

 コースは高田城址の陸上競技場をスタートして、JR高田駅から4kmほど北上、折り返して帰ってくるという、街の中心部を走るので、ほぼ平坦です。


 ペース配分はいつものように前半はゆっくり目で走り、後半に全力を出そうと思っていました。前半5㎞は6分5秒~30秒/㎞でしたが、後半は、それ以上遅くて6分20~30秒/㎞になりました。

 最後の1㎞は何とか力を振り絞って6分10秒で走れました。いつものように抜いた人抜かれた人を数えました。3人抜いて5人抜かれるという体たらくです。

 何が悪いということではなく、全体的に体力が落ちているということです。それとこれまで10㎞ではトイレに行ったことはなかったのですが4㎞ぐらいで行きました。それもタイムが悪い一因です。

 大会は全体で2700人が参加し、10㎞は男女合わせて560人程度です。小さな大会でトイレの待ち時間も短く、コースもとても走りよかったです。

 全体の順位はわかりませんが、60歳以上の男でいうと62位/94人という2/3ぐらいですから、こんなものと言えばこんなものです。

 今回は上越に住む友人の家に泊めてもらい、レース後、シャワーを浴び、ラーメンをご馳走になって、昼前に上越を出発しました。宿泊は石川県の羽咋市ですが、途中に糸魚川にあるフォッサマグナミュージアムに寄るなど、元気でした。

 しかし走るのは全くダメになっています。

2024年11月に読んだ本その2

『天使に見捨てられた夜/桐野夏生』と『世界11月号』『前衛11月号』を書きます。

 202626日に「202411月に読んだ本」を書き、すぐにその2を書く予定でした。

 しかしその直後に5年ほど使っていたUSBが壊れて、この間に書き溜めていた原稿が無くなりました。毎月の「読んだ本」についても、202411月までブログに書きましたが、12月以降は不明になりました。

 手帳には本のタイトルなどは書いていますから、2425年の手帳を捜せば読んだ本はわかります。ですから、その作業をしました。

 しかし本の大半は図書館で借りたもので、手元にありません。買った本はありますので、それの感想とか紹介は書けます。雑誌『世界』『前衛』はあります。

 あれから約4カ月、本は読み続けていますが、202412月以降をどうするか考えてしまって、ここに何も書けませんでした。

 多少滞りますが、書ける範囲で読んだ本紹介を書いていきます。

『天使に見捨てられた夜/桐野夏生』

 女性探偵、村野ミロを主人公にするミステリーです。ハードボイルドですが、ミロが調査対象の男と寝るのはちょっとびっくりです。

 男の探偵ではありえると思いますから、その逆と思えばいいのですが、男女の役割から、それは意外でした。

 「アダルトビデオの人権を考える会」の主宰者から、レイプビデオに主演している女優を捜してくれという調査依頼から話は始まります。

 簡単な調査と思っていたが、色々と邪魔が入り、さらに依頼人が転落死するということで、危険な仕事でありどこまで深まるのか、期待しました。

 面白かったと思いますが、内容は忘れました。

『世界11月号』

特集①『アメリという難問』6本『ガザが問う、カマラ・ハリスの真価/三牧聖子』『国家神信仰を批判する/森本あんり』『「右派進歩主義」の台頭―大統領選と保守思想の再編/井上弘貴』『アメリカン・ストロング―トランビズムの歴史的系譜/兼子歩』『水面下の対立、BLMの記憶―ブルックリンの片隅から/石黒治恵』『「アメリカの時代」の終わりと日本外交/玉置敦彦』

特集②『フリーランスを生きる』4本『世界最大の労働問題をどう解決するか―フリーランス保護のゆくへ/水町勇一郎』『生身の働き手としての権利―四つの現場から/北健一』『芸能従事者は訴える/森崎めぐみ』『労働者・自営業者・フリーランス―労働者性をめぐって/橋本陽子』

 特集だけでなく『イスラエル・ガザの戦争の1年/錦田愛子』『再審無罪「袴田事件」の58年/藤原聡』や連載の『片山善博の「日本を診る」(180)公益通報は有益通報―体験的公益通報者保護制度論』『最後は教育なのか?第6回共に生きるための包括的性教育―田代美江子さんに聞く/武田砂鉄』『彼女たちの「戦後」第3回大橋鎭子―暮らすこと 分かち合うこと/山本昭宏』など面白い記事がたくさんありました。

 一つの論文を取り上げることは出来ません。適当にこの号を紹介しようと考えました。

 現在(266月)に読み返しながら書くと、1年以上前だから、例えばトランプ大統領、イラン戦争など、大きく変わっていることは多いのですが、書かれていることは的を射てる言葉がありました。それを書きます。

・イスラエルを支持する欧米諸国とそれ以外の国々との間で今後、分断が深まっていく

・アメリカ主導の国際秩序はすでに融解しつつある

・(ハリスの「検事としての正義観」)イスラエルはその正義の対象外であり続けた

日本では

・検事の嘆かわしい行為は違法ではなかった

・差別発言を平然と繰り返しそのまま政治家をやっている人がいます。

・政治家となる人材が限定され、議員構成の偏りも大きく・・・政治不信を助長する

『前衛11月号』

特集①『焦点化する憲法の平和主義と改憲動向』3本『憲法9条の侵害と改憲―ポスト岸田の改憲暴走/永山茂樹』『自民党の改憲策動・憲法破壊の大軍拡政治を阻止する選択―来るべき総選挙で憲法を生かす政治に転換させよう/佐々木森夢』『集団的自衛権閣議決定から10年、いま憲法の平和主義を問う(上)/小沢隆一』

特集②『中小企業・小規模事業者政策を問う』4本『コロナ禍・物価高を受けた中小企業の苦境と支援の課題/大貝健二』『中小企業と「失われた30年」―地域・国民経済の再建に向けて/中平智之』『京都の伝統工芸の生産減・職人減と支援の課題/原田完』『トラック運送事業者の視点から見る「物流2024年問題」/宮津友多』

 前衛も力を入れた特集等を組んでいます。永山茂樹論文を書いてみます。

『憲法9条の侵害と改憲―ポスト岸田の改憲暴走/永山茂樹』

 ポスト岸田は、石破自公政権から高市自維政権になり、さらに2月の総選挙で衆議院の自維議員は圧倒的多数になりました。ここで指摘されている「改憲暴走」の危険性は格段に上がっています。

 現状の「自衛隊の軍事化」は①「専守防衛」から三重の高度化(集団的自衛権、敵基地攻撃、そのための武器保有)②米軍への従属的一体化③西側の一員としてグローバル(NATOの連携、日米韓。日米比、日米豪印、ウクライナ支援等)④自衛隊の警察化・警察の軍事化⑤旧軍文化の継承⑥学術と経済の軍事化「これは労働組合やメディアの右傾化・軍事化へと波及」となっています。

 「軍事化の今後」は「核を含むあらゆる能力を用いた」防衛力が焦点です。非核3原則を形骸化させる9条改憲、自民党案の「自衛隊の明記」は、9条を含む憲法全体の解釈を逆転させます。

 「自衛隊」という言葉が明記されていない時は、自衛隊が出来ることは限られるが、明記され憲法上の正当性を持つと、明示的に禁止されたこと以外は出来る、という解釈になるといいます。

2026年4月に見た映画

『コット、はじまりの夏』『ハムネット』『パリから来た殺し屋』『ロッコク・キッチン』『木挽町の仇討ち』の5本でした。5本はそれぞれに特徴を持った映画でした。

 今月の前半は体調不良もあって映画を見ることが出来ず、後半に集中しました。 

『コット、はじまりの夏』

 市民映画劇場4月例会です。予想とは違う感じの映画ですが、深みのある映画でした。 アイルランド映画です。

 映画を見て以下の川柳が思い浮かびました。

・馬鹿な子はやれず かしこい子はやれず(夢路)

 母親が出産するので夏休みを母の従姉妹(あまり親しくはない)の家に預けられて過ごした9歳の少女コットを中心にした話です。

 「はじまりの夏」は、彼女の人生がここから始まったという意味だろうと思います。し

かし、この夏休みに彼女の周辺で何か特別な事件があったのか言えばそうではありません。

 映画はアイルランドの農家の日常を描きました。

 原題は「寡黙な少女」です。実際にコットの家は姉兄弟(4,5人かな)も多く、自己主張も少ないあまり明るくない女の子です。学校でも目立たない存在です。

 母の従姉妹アイリスは夫ショーンと二人暮らしの酪農家、子どもはいません。(後に二人の子どもが事故で死んでいたことがわかります)

 二人はコットに家事や牛の世話、農作業を手伝わせますが、ちょっとした配慮が感じられるいい大人です。子どもが一人というのもコットは初めての経験でした。

 彼女は「大事にされている」と感じたのだろうと思います。

 そして夏休みが終わり、コットはアイリス夫婦に連れられて実家に帰って来ます。この時のコットは、行く前と違ってとても明るくなっています。

 型どおりの礼を言って、アイリス夫婦は帰っていきます。その時事件は起きました。

 帰ろうと門を出たショーンを追いかけて、コットは「ダディ」といって首に抱きつくのです。ショーンもしっかり抱き留め、アイリスも近寄ろとします。

 コットの父も母も駆け寄ってきて複雑な表情です。

 映画はそれで終わりました。

 何もわからないままですが、みんな変わったと感じる瞬間です。それをワンショット分からせる、とてもいい映画でした。

 それが先に書いた川柳です。

『ハムネット』

 文豪ウィリアム・シェイクスピアと彼の妻アグネス描く映画でした。ハムネットはあの戯曲『ハムレット』と同じ意味です。彼の息子の名前でした。

 映画はウィリアムが森の中で鷹狩をする不思議な女性アグネスと出会うところから始まります。彼女は野生的で生命力にあふれています。しかも魔女のような神秘的な力も持っているかのようでした。

 二人は結婚して3人の子供を儲けますが、夫ウィリアムは、職人仕事を嫌い、劇作家をめざして、家族と離れてロンドンに向かいます。そこで芝居の仕事に携わっていました。

 息子ハムネットは流行り病で死に、夫婦の間に亀裂が入ります。

 その後、シェイクスピアは『ハムレット』の芝居を掛けました。アグネスはそれを見るためにロンドンに出てきます。

 この映画は、意図して神秘的な要素を挿入しています。アグネスが森に入って一人で出産します。息子ハムネットが死ぬシーンもそうでした。

 そのために、私はこの映画に入っていけませんでした。シェイクスピアの想像力の原点が分からないからです。彼の作品は、封建社会を乗り越える西欧的合理主義であると思っているからです。

2026年3月に見た映画その2

『満江紅』『テルマ93才のやさしいリベンジ』『百合祭』の3本は軽く書こうとしたのですが、どうでしょうか。わかるでしょうか。

『満江紅』

 南宋時代の中国を描く時代劇です。監督は張芸謀(チャン・イーモウ)で中国では大ヒットだそうです。たしかに映像はすばらしいし、話の運びもそつがありません。でも心に迫るものがない映画でした。

 『満江紅』はこの時代の英雄、岳飛が書いた詩(国を憂う)のタイトルです。中国の人なら誰でも知っているという有名な話ですが、私は全く知りません。

 中国の中原は漢民族が圧倒的多数を占めていますが、何度か他民族の侵略を受けて王朝がつくられています。大きいものでは元や清と言った征服王朝が作られています。

 それに対して漢民族は反発があるのでしょう。

 映画は、北方の「蛮族」金に宋が圧迫されている時代です。主戦論を唱えた岳飛が謀殺された4年後となっていますから、1146年の設定です。

 残っている宰相は岳飛を殺したとみなされる和睦派の秦檜です。

 金と宋が交渉しようとする状況で、城内で金からの使者が殺され、彼が持っていたはずの密書も行くへ不明になります。

 二人の下級武士が、使者を殺した犯人を捜す役目を命じられます。捜査の手順は、使者の行動を追い、それについて行った宋側の人間を捜します。ドタバタ騒動があり、どんでん返し等もあって映画は終わりました。

 しかし現代中国に何を言いたいのか、全くわかりませんでした。岳飛と秦檜という国民的な対立の二人を出して、言いたいことがあるはずですが、わかりません。

『テルマ93才のやさしいリベンジ』

 市民映画劇場3月例会です。93才の老婆、実年齢もそれに近い女優が演じました。

 93歳の老婆がオレオレ詐欺に騙されます。悔しくて犯人を捜し、そのお金を取り戻しに行く、というコメディです。場所はロサンゼルスですが、摩天楼の都心部ではなく、老人用の電動スクーターで街を走るという、のどかさです。

 奪われたのは1万ドルで、お金持ちの老人にしたら、そう大金でもないのですが、彼女は同じ高齢者の友人達を回って協力を求めます。犯人逮捕はあっけないのですが、その犯罪性を暴くよりも、老人たちの様子を描くのが主であると思いました。

 犯人は街の電気屋で、通販のアマゾンによって店がつぶれそうなので、オレオレ詐欺を試してみたようです。老婆でも犯人にたどりつけるずさんな犯罪でした。

 高齢者を描くコメディですが、老人の寂しさを感じました。 

『百合祭』

 2001年に作られた浜野佐知監督のピンクではない映画です(彼女はピンク映画専門の監督です)が、いやらしさはありました。

 高齢の女たち(吉行和子、庄司歌江、白川和子、中原早苗等)の性愛の感情を描く面白い映画ですが、原作があったことを知りました。

 町中からちょっと離れたところにある洋館建てのアパートに高齢の女ばかりが住んでいましたが、空いた一部屋に高齢の男(ミッキー・カーチス)が入居します。

 女たちはソワソワし始めますが、男は彼女たちを上手に扱っていきます。プレイボーイでした。

 結局、ほぼすべての女と関係を持っていたというのがみんなにわかり「でもそれでよかったじゃないの」と終りました。

 きわめて明るい映画です。この歳になって彼女たちのような女性と知り合いたいと思いました。