西神ニュータウン9条の会HP2021年6月号

いつも1日にHPは更新されています。6月号には8編のエッセイが掲載されています。簡単に紹介しておきます。是非ご覧ください。

西神9条の会 (www.ne.jp)

①パリ通信(28)は「職場の出来事④」で浮浪者が入ってくという状況が書かれていました。大変です。

②5月にあった5月にあった池内了さんの講演の感想です。

③オリパラを強行しようとするIOC、日本政府を批判します。

④神戸の舞台に立った俳優、今月は東野榮二郎東野栄治郎栄治郎さんです。

⑤中国理解の論文です。

民法改正

⑦戦争体験談です。

⑧私が書いたのは『薬の神じゃない』です。

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習近平の独裁政治の感が強い中国です。命のかかった民衆の声には答えました。

2021年5月に読んだ本その1

『日本野球よ、それは間違っている!/広岡達郎』『ファンクション7/相場英雄』『世界5月号』『解体屋ゲン』『ブンヤ、走れ~阪神淡路大震災、地域ジャーナリズムの闘い~/駒来槇』『命ドゥ宝/杉浦久幸』『山はどうしてできるか/藤岡換太郎』『ワケあって、女嫌いな御曹司の偽恋人になりました―男装女子への極甘プロポーズ―/御厨翠-』の8冊を書きます。まずは以下の3冊です。

『日本野球よ、それは間違っている!/広岡達郎』

 広岡さんは、もう少し広い視野で考えられる人かと思っていました。現在の日本プロ野球のあり様に様々な意見を言っているのは明確ですが、社会的とか国際的という観点はないようです。

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 私が常々思っているのは、日本プロ野球の最高の栄誉ある賞が正力松太郎賞であることです。「育ての親」だからということでしょうが、彼が戦前は公安警察官僚でA級戦犯、戦後はCIAのエージェントであることは有名な話です。戦前は国民を弾圧して戦争へ導き、戦後は米国の手先となった売国奴です。

   そんなことでは国際社会の基準である人権、民主主義、平和から見ればどうなのかと思います。しかし広岡達郎は正力松太郎の巨人軍は「強くあれ、紳士であれ、アメリカ野球に追いつけ追い越せ」という遺訓が好きだ、言います。これこそ欺瞞的で、読売ジャイアンツの行動は自分のことしか考えず、プロ野球界全体の発展とは全く違うことだと気づいていません。自分をトレードから守ってくれたと恩人のように思っています。

 これだけで十分「野球バカ」だと思いました。

日本プロ野球界全体を見て意見を言っているポーズはありますが、「読売中心主義」には批判ができず、だからクライマックスシリーズに反対、米リーグへのポスティング反対等部分的批判は出来ても、プロ野球全体が技術水準の向上や、もっと国民の身近になって発展するような構想はないようです。

 なぜこの本を読もうと思ったかといえば、彼が万年最下位だった広島カープに来てコーチをしたからです。その時の教え子、衣笠や三村等が初優勝の原動力になりました。どのように書いているか見ましたが、たいしたことは書いていません。

 大谷翔平イチロー、清宮などにも触れていますが、目新しいことはありません。

『ファンクション7/相場英雄』

 酷い小説でした。『ガラパゴス』『震える牛』『トラップ』等を読んできた相場英雄ですから期待して読み始めましたが、最初から最後まで嫌韓嫌中のヘイト本かと思いました。

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 2007年発行の本ですから、本書に出てくる北朝鮮と融和政策をとる韓国大統領は金大中、廬武鉉が想定されますが、その政権をきわめて歪めて描写をしています。韓国の民主化の闘いをまったく踏まえていません。

 この小説の大きなエポックは、北朝鮮の情報員が日本に来て東京、名古屋、大阪で毒ガスをまき散らす大規模なテロを決行することです。千人規模で被害者が出ます。しかし、その目的、必然性を全く書いていません。北朝鮮が日本にテロを仕掛ける国際情勢を説明することもありません。

 しかも日本の公安は彼らの存在を知っているが、手出しできないという前提です。テロまでは監視だけで、事を起こすときは公安をまくことはできても、いったんテロが起きると非常線がひかれますし、何の証拠がなくても、監視対象者は何らかの理由をつけて拘束されます。しないわけがない。彼らが本国に帰れるはずがないのです。

 しかし日本政府は「米韓の板挟み」で動かない、として、彼らはやすやすと北へ帰ります。

 また当然、戦争が目前に迫ります。小競り合いのように北と南の軍隊が戦うという程度ではありません。しかしこの本では、そのような急激な軍事的対立と日米中国、南北朝鮮の国際情勢の変化が生じていません。日本は経済制裁の強化をし、米軍に協力する程度です。

 そのもとで韓国と中国の大企業の業務提携の話は進み、日本でも日銀幹部の同期会が開かれていません。南北国境線の緊張もありません。 

 北朝鮮でも戦争に備えた兵力の配置もありません。

 主役は3人、一人はテロを起こす若い諜報員、一人は朝鮮戦争直後に北から南に逃れてきて、大成功して韓国の巨大企業の会長、もう一人は元日銀官僚で大学教員です。

 彼らもいかに北朝鮮がひどい国家であるかを演出する役割です。その国家を崩壊させるのはICTを使って、北の人民自身が、この国の正体を知ることだとまとめています。

 何を狙って書かれた本なのか不明です。長々と書いたのは、私は信頼していた相場英雄はもう一人いた、と思うほど忸怩たるものを感じさせたからです。

『山はどうしてできるか―ダイナミックな地球科学入門―/藤岡換太郎』

 藤岡さんの『フォッサマグナ』を読んで、引き続いて5月にこれを読み、6月に『海はどうしてできるのか』を読んでいます。

 本当の順番は、『海・・・』が太陽系と地球ができるところから書かれていて、原始の海であるマグマオーシャンが冷えて、陸ができてから『山は・・・・』の話になってきます。

 ですが、もう読んでしまったので、これから書きます。

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 簡単に言えば地球表面の活動によってできるということでしょう。プレートテクトニクスプルームテクトニクスという学説で説明されます。これ1冊読んでわかるわけではないですが、6月4、5日と徳島の大歩危小歩危に行って、その成り立ちの解説を読み、少し理解が進みました。

 地球内部のマントルの動きが表面にあるプレート(地殻+マントル上層部、厚さ30100㎞で、十数枚に割れている)を動かして、それが大陸を移動させ、超大陸を作り、そして分裂を繰り返しています。

 山の分類は、プレートがぶつかって堆積物が隆起した山、マグマが地殻を突き破って出てくる火山と陸地が浸食されて硬い岩盤が残った山があるそうです。

 最高峰がエベレスト8848m、一番低いのが天保山4.53mです。どちらも火山ではありません。エベレストがあるヒマラヤ山脈ユーラシア大陸(プレート)にインド大陸(プレートがぶつかってできたそうです。天保山は人間がつくりました。

 海の中にもたくさん山があって、周辺の海底から見るとハワイ島マウナケアが4205m+周辺の海底の深さ5000mで9000m越えています。これが一番高い山です。

 この本を読んで地球物理学の単語を知りました。

地震波によって地球内部を調べることができて、その進み具合の変化で密度構造が分かり、中心から内核外核(液体)、下部マントル、上部マントル、地殻とあるそうです。

ホットプルームコールドプルームマントル対流がを作り出し、それがプレートを動かすそうです。

・鳥瞰図に対比して海から見た図、鯨瞰図というもの。

・海にある山と谷

海嶺:地殻の割れ目、マグマが出てくる、プレートがつくられる場所。海底山脈

    大西洋中央海嶺は北極から南極まで2万㎞高さ3000m差し渡し1000㎞。アイスラン

トランスフォーム断層:プレートがすれ違う断層

海溝:プレートがぶつかり、一方が沈み込み深い海ができる

海山・海台:海の中の山で火山がほとんど。海台は平らな台地。

・岩石

 陸に多い花崗岩(比重2.7)、海に多い玄武岩(比重3.0)、マントルと作るカンラン石(比重3.3

目次は以下のとおりです。

準備運動 世界一高い山はエベレストか

  • 一合目 山をみるための4つの視点

  • 二合目 山の高さとは何か

  • 三合目 論争の夜明け

  • 四合目 大陸は移動する

  • 五合目 プレートとプルーム

  • 六合目 山はこうしてできる (1)断層運動、付加体、大陸衝突ほか

  • 七合目 山はこうしてできる (2)火山活動

  • 八合目 山はこうしてできる (3)花崗岩、蛇紋岩、石灰岩の山

  • 九合目 日本の山のなりたち

  • 十合目 プレートの循環、山の輪廻

2021年4月に見た映画その2

ストックホルム・ケース』『グレタGRETA』『無頼』『赤い闇スターリンの冷たい大地で』『ソニア ナチスの女スパイ』残り5本の紹介、感想です。

ストックホルム・ケース』

 イーサン・ホークが主演だから見ようと思いました。ちょっと抜けた、人の好い、線が一本足りない、粗暴な強盗の役を好演しています。

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 ストックホルム症候群という、誘拐や監禁された被害者が、生存を図るために加害者にすり寄っていく心理の語源となった実話に基づいています。

 1973ストックホルムの銀行に銃をかざして、見るからにいかれた男ラースが強盗に押し入ります。銃を乱射して銀行員を人質にとって、お金と刑務所にいる友人の釈放を求めました。

 でも凶悪犯ではありません。段々とラースの人の好さが出てきます。

 警察は銀行を包囲して、逃げられないようにしていろいろと交渉を始めました。それがなんとものんびりとして、コメディかと思うような展開になります。

 そして人質となった女性銀行員ビアンカ等が、いつしか犯人と心通わせる関係になっていきました。

 逃走用に車を用意しろ、そうすれば人質を解放するという要求に対し、警察は首相の命令で、それに応じません。いらだつ犯人と人質たちが組んで、警察や政府をだましにかかりました。あの手この手を使いますが、結局、ラースは警察に逮捕されます。

 後日ビアンカはラースに会うために刑務所に行きます。離婚はしませんが、あの一日が忘れられなかったということです。男と女の関係になったとことを映画は描きますが、男の人質たちもラースに協力します。人質たちは警察と政府が信用できないと見えたと映画は描きました。

 自分の命がかかった時に人間の心はどのように動くかをよく描いていました。そしてスリリングな体験を共有すると、心が通じ合ったと思い込み、それが忘れられなくなるのでしょうか。

『グレタGRETA』

 イザベル・ユペールが主演だから見ようと思いましたが、怪演でした。でも好きな映画ではありません。同じような怪演の『エルELLE』のほうがよかったです。

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 これは実話ではないと思います。地下鉄に上等そうな婦人用の手提げ鞄をわざと忘れて、それを届けてくれた人と友達になる、老嬢グレタ(イザベル・ユペール)の話です。

 気のいい若い女性フランシス(クロエ・グレース・モリッツ)が地下鉄で拾ったかばんを届けた相手は、ちょっと上品な感じの高齢の女性グレタでした。親しくなって何度か家に行きますが、ある日「鞄の秘密」に気づき、彼女の異常さを感じます。

 そして会うのを拒否しますが、ここからオカルト映画のような展開になりました。

 グレタは執拗にフランシスを追い回して、もう一度、親しい関係に戻りたいと迫ります。フランシスはグレタの身の上話が嘘で固められたものと知り、ますます恐怖を感じて町を出ようとします。

 グレタは元看護婦で麻酔、毒物などを使って、これまでも何人もの被害者を家に監禁し、最後には殺していました。

 なぜそういう行動をとるのか、人の心理が理解できないと不気味です。グレタは子供が自殺して、孤独であったと推測できますが、若い人と親密になりたいのはいいけれども、拒否されて殺すところまで行くのは異常すぎて理解できません。

 まあ、このような映画の通例で、主人公は危機一髪で助かりますが、どうも後味がよくありません。若い人と親密になりたいのはいいけれども、拒否されて殺すところまで行くのは異常すぎます。

『無頼』

 井筒和幸監督だから見よう、と思った映画ですが、ちょっと期待外れです。

 戦後の日本で不幸な子供はたくさんいたと思いますが、だからと言って暴力団に入るのは納得できません。でもそんな世界を生き抜いた人間を描く映画でした。モデルがあるそうです。

 主人公は何度も刑務所を出入りしますが、死ぬこともなく成功した部類の人間です。引退して発展途上国の、幼かったころの自分と同じような貧しい子供たちを援ける仕事をしようとします。

 私は「なんだかなあ」と思います。

 やくざ、極道、任侠、暴力団といい方はありますが反社会的勢力で、法律を犯して金品を得ることを生業とする人たちです。多くは暴力を使って善良な人々、財産や命までも奪います。

 それを主人公に映画を作るのですから、彼らから見た戦後日本の変遷、政治家や財界人などが彼らをどのように利用してきたかなど、戦後民主主義の矛盾を描くのかな、と思ってみました。そうでもありません。

 また日本社会の変化、高度経済成長、オイルショック、バブル景気そして長期の不景気と新自由主義政策などが彼らにどのように反映したのかも見ようとしましたが、それもわかりません。

 結局、何も残らない映画でした。井筒監督に期待してみたのですが残念でした。ただ出ている役者の顔が、主演の松本利夫や松角洋平等あまり整っていなくて、存在感を感じて面白いかったです。

『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』

 実話に基づく映画です。

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   ヒトラーをインタビューした新進気鋭のジャーナリスト、英国首相ロイド・ジョージの外交顧問でもあった、ガレス・ジョーンズが1932年~33年に起きたホロドモール(スターリンの指導するソビエトウクライナで引き起こされた大飢饉、数百万~1400万人の死者が出たといいます)を報道した史実を映画化しました。

 第2次世界大戦前、各国が不況にあえぐ世界恐慌の中で社会主義ソビエトは着実な経済成長を遂げていました。

 その秘密を探ろうとガレスはソビエトに潜入します。モスクワについた時から、官憲の様々な妨害があります。そこに滞在する外国人ジャーナリストたちの退廃ぶりも明らかになります。ピューリッツァ賞受賞の米国人記者がソビエト政府に加担していると描きました。

 ガレスは、その秘密はウクライナにあると嗅ぎ付けて、密かに行きます。そこで見たのは飢えた人々です。人肉さえも食べていたと描きます。

 豊かな大地であったウクライナの荒廃、それは農業政策の失敗で人為的な大飢饉であり、しかもソビエト政府は人民を見捨てていました。経済活動のためにウクライナから穀物を持ち出していたのです。

 何とか英国に帰国したガレルは、ソビエトの惨状を報道しようとしますが、戦争前の混乱した政治的な状況から弾き飛ばされました。

 全体主義を批判した『動物農場』を書いたジョージ・オーウエルとの出会い、そして米国の新聞王ハーストと知り合い、ガレルはとうとうホロドモールを報道しました。

 しかし、それでも多くの妨害を受けました。

 社会主義ソビエトの幻想の下でどれほど多くの人々が殺害されたか、しかも自由な報道さえも抑え込まれたか、よくわかりました。 

『ソニア ナチスの女スパイ』

 これも実話に基づく映画です。

 実在した北欧の女優、ソニア・ヴィーゲットをモデルにした映画です。スウェーデンは中立を守りましたが、ノルウェーデンマークナチスに侵略され支配されていました。

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ソニアと彼女が好きになる男

 ノルウェーの舞台や映画で活躍していたソニアは、ナチスを嫌う父の影響もあって、実質的にノルウェーを支配するナチス弁務官の招待に応じませんでした。

 しかし父が強制収容所に入れられ、スウェーデンの諜報部からナチスの情報を手に入れるように要請されます。やむなく弁務官に近づきます。

 彼女はナチスの宣伝に協力させられ、さらに北欧諸国の反ナチ活動の情報を得るように依頼されました。

 23重のスパイ活動をするソニアは、複雑な人間関係を泳ぎます。それに恋愛感情も絡む面白い映画に仕上がっていました。でも白人を識別するのが難しく、誰と誰がつながり、敵対するのは誰かがよくわからない映画でした。

 ソニアは戦中はもちろん戦後もナチスに協力的な女優と見られていました。国家の機密文書が公開されて、やっとその全貌が明らかにされて名誉回復されたようです。

 自分の身や家族を守るために、意にそぐわないことをすることは悲劇です。しかもそれがスパイであることは心身ともに厳しいものであることは容易にわかります。

 安倍「桜を見る会」に行った芸能人は、ソニアとは明らかに違うと思います。

 

2021年4月に読んだ本その2

月の後半は『世界4月号』『フォッサマグナ/藤岡換太郎』『声に出して笑える日本語/立川談四楼』の3冊。

『世界4月号』

     雑誌『世界』はいつも内容が多くて、一度読んで、しばらくしてからここに書こうとしたときに、もう一度読むという作業になっています。論文、記事を要約するのは難しいし、感想を書くのもなかなか大変です。

 私の関心あることに絞って書きます。

特集1「デジタル監視体制」

【危険すぎる狙い パンデミック監視資本主義の台頭――デジタル網に閉じ込められる私たち/小笠原みどり(ジャーナリスト)】【提起 デジタル庁構想批判の原則を立てる/小倉利丸(批評家)】【加速する既成事実化 実装される監視社会化ツール/武藤糾明(弁護士)】【市民の行動変容 中国デジタル革命と監視社会の行方/倉澤治雄(科学ジャーナリスト)】

 この4編を読んでわかるのは①コロナ禍に乗じて作られようとしている②私たちのプライバシー、個人データが商業利用されようとし、商業活動を通じて掴まれたデータは行政に掴まれる③デジタル改革関連法案には人権への言及がない④デジタル政策はデジタル化の原則「技術の公開性」「個人情報を提供しない権利」「例外なき暗号化の権利」を満たしていない⑤マイナンバーカードは「権利」から「義務」へと変質している。中国は監視カメラ17千万台、顔認証を進めている。EUは慎重⑥科学技術の研究開発費、米国58兆円、中国55兆円、日本17兆円。

【手記 自治体としてパンデミックに立ち向かう(上)PCR検査の拡充へ】保坂展人(世田谷区長)

 面白いのですが5月号(中)6月号(下)を読んでから書きます。

フィルム・ノワールの階級政治 『暗黒街の弾痕』ほか/渋谷望

 久々に映画に関する論文が載りました。フィルム・ノワールと言われる194050年代の犯罪映画について書いています。今に通じることもあります。

 犯罪者は社会によってつくられるという側面を描くものです。最初に、些細なことで(友達に誘われる、貧しさ、好奇心など)犯罪に手を染めたものが、レッテル張りや支配層、多数派による排除などによって、さらに厳しい状況に追いやられる構図です。

 邦画では黒澤明の『酔いどれ天使』が挙げてありました。

片山善博の「日本を診る」【137

【オリパラ組織委員会新会長選出の正当性を問う】

 森喜朗前会長にの辞任に伴う、新会長の選出が組織原則を踏み外していることを指摘しています。しかもそれをマスコミなどがあまり批判しないのを見て、私は日本人の民主主義のレベルが低いと思いました。

 組織委員会憲法とも言うべき定款では「理事会の決議による」そうですが、定款にない「候補者検討委員会」なるものがつくられて、実質的にそこで決められました。そこには権限のない評議員もいます。しかも一部のメンバー以外は公開されていません。

 そういう根回し的なことが、堂々と通る社会です。

●メディア批評【第160回】 神保太郎(ジャーナリスト)

 森喜朗発言に伴う一連の騒動を書いています。彼の一連の言葉は女性蔑視、女性差別であることははっきりしていますが、最初、日本のマスメディアは容認していたようです。それが、海外のメディア、SNSの拡大によって辞任に追い込まれました。

 しかし彼は傲慢にも後継者指名まで行きました。当然、バッシングは広がります。

 それを見た一部の人たちは必死でかばいます。「おじいちゃんがかわいそう」「ボランティアでやっている」なんて嘘八百も平気で流されました。「ヒステリックになる社会はおかしい」私の近くでもそういう声がありました。

 記事は「五輪幻想のディストピア」として東京オリパラ全体の状況までも批判しています。

フォッサマグナ/藤岡換太郎』

 NHK番組「ブラタモリ」が好きでよく見ています。それでこの本を読みました。

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明治初期にドイツから招いた若き地質学者ナウマン(日本で発見した小型象にその名を遺す)が発見した、日本列島を真っ二つに分断する「巨大な割れ目」フォッサマグナ(巨大な地溝)は、その成因、構造などはいまだに謎に包まれていて、一般向けに書かれた解説書はなかなかつくられない、らしい。それに藤岡さんは挑み、推論を展開しています。

ナウマンは、長野県の平沢で激しい嵐に見舞われた翌朝、眼下に広がる異様な地形に「こんな光景がこの世にあるのだろうか。こんな大きな構造は見たこともない」と、それが世界に二つとない稀有な地形であることを確信したそうです。甲斐駒ヶ岳など標高差2000mの南アルプスが、間近に迫っていたからです。

フォッサマグナ」はこの国の「背骨」のど真ん中を横断する、深さ6000m以上におよぶ巨大地溝(堆積物がたまっていて、どこまで深いか不明)で、地質だけでなく、動植物の分布から文化に至るまで日本列島を東西に分断しています。

 この前後の地層は123千年前からのものですが、フォッサマグナのそれは2000万年前です。

日本と日本人にきわめて大きな影響を与えつづけ、日本列島の将来は語れないのですが、ナウマンの発見以来、この地形は幾多の研究者の挑戦を拒みつづけ、その成り立ちも、本当の境界線はどこにあるのかさえも、いまだに謎(西は糸魚川-静岡線ですが、東は不明)に包まれています。確かなのは、世界を見渡しても、このような地形はほかに類がないということだけです。

 本の章立てを書いておきます。

序章 ナウマンの発見/第1章 フォッサマグナとは何か/第2章 地層から見たフォッサマグナ/第3章 海から見たフォッサマグナ――日本海の拡大/第4章 海から見たフォッサマグナ――フィリピン海の北上/第5章 世界にフォッサマグナはあるか/第6章 〈試論〉フォッサマグナはなぜできたのか/第7章 フォッサマグナは日本に何をしているのか/コラム「フォッサマグナに会える場所」

『声に出して笑える日本語/立川談四楼

 アナウンサーなどの言い間違え、無知からくる誤解、それから落語界のしゃれ言葉など実話に基づくおかしな日本語を集めたエッセイです。

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 2009年の発行ですから「云々」を誤読して「でんでんムチムチ」と言われたことは入っていません。でも政治家の無知をあざ笑うコーナーがもないのが残念です。

 いくつか気に入ったものをピックアップしておきます。

「海のモズク」「悲しみのズンドコ」「汚名挽回」は「名誉挽回」と「汚名返上」が混乱しています。「先立つ不幸」。カップルで「一泊旅行」と「一発旅行」「私は差別する人と黒人が大嫌いだ」

 落語界等その筋のしゃれ言葉もあります。

 蕎麦屋でそば前の注文で「ヌキ」。台ヌキということで、てんぷらそばのそばがないものだそうです。

 居酒屋の張り紙「春夏冬升々半升」はアキナイマスマスハンジョウ。

 「こなから」は「二合半」と書く。もとは「小半」と書いて「こなから」と読み四半分の意味で、1升の四半分で二合半、ちょうどいい酔いですね。

 

『はちどり』の背景として

 21日22日市民映画劇場5月例会『はちどり』を上映します。1994年の韓国、そこに生きる人々を描いています。中学2年生の少女が主人公で、彼女の体験と成長が中心です。詳細は神戸映画サークル協議会のHPを見てください。

2021年5月例会『はちどり』 | 神戸映画サークル協議会(神戸映サ) - KOBE Cinema Circle Association (kobe-eisa.com)

私はこの映画の背景を書きました。といっても映画とはほとんど関係ない、現在の日韓関係について考えた文章です。それをここに載せておきます。

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5月例会『はちどり』背景

「映画から昨今の日韓関係を考える」

自由な映画表現

 韓国映画の国際的評価が非常に高くなっています。『パラサイト―半地下の家族』がカンヌ映画祭グランプリ等、『はちどり』もベルリン国際映画祭等で評価されました。市民映画劇場でも毎年、韓国映画を上映し二〇二〇年『無垢なる証人』は一位の評価です。

 傑作が生まれる要因は政治体制が民主化されたことが一番大きく、娯楽作品から『一九八七、ある闘いの真実』など近現代史を問い直す映画、この映画や『八二年生まれ、キム・ジヨン』のような普通の人々の心情、社会の有様を描く映画まで幅広いテーマが取り上げられ、自由に描かれています。

 それらは日本でも上映され、好評を博しています。

 その一方で、領土問題や従軍慰安婦、徴用工問題などで両国の国民感情的には良好とは言い難い情勢になっています。

日韓基本条約から日韓パートナーシップへ

 戦後の日韓関係を振り返ると、日韓基本条約(一九六五年)と日韓パートナーシップ(一九九八年)が大きな画期となりました。

 日韓基本条約は東西冷戦が厳しい時代で、米日韓の軍事同盟強化という目的があり、戦後処理と外交関係の正常化が図られます。この時、日本は植民地支配に対する賠償という言葉を使わずに、無償三億ドル、有償二億ドルの経済援助を行いました。朴正煕政権はこれを資金に経済発展を進めました。

 日韓の歴史的認識はすれ違ったままでした。

 その後、侵略戦争を否定してきた自民党一党政権が崩れた日本では、従軍慰安婦に対する河野談話(一九九三年)、戦後五〇年の村山談話(一九九五年)で不十分ながら侵略戦争や植民地支配に対する反省が述べられました。

 韓国は軍事独裁政権から民主的な文民政権へと大きく変わりました。

 それが日韓パートナーシップに結びつきます。小渕首相は植民地支配に対して「痛切な反省と心からのおわび」を表明し、金大中大統領は「真摯に受け止め」て、平和憲法のもとでの日本を評価しました。

 これを契機に人や文化の交流が解禁されて盛んになりました。一九九九年に『ラブレター』(岩井俊二)が上映されて大ヒットします。そして日韓共催ワールドカップサッカー大会(二〇〇二年)『冬のソナタ』(二〇〇三年)大ブームがあり、来日する観光客(最大二〇一八年七五〇万人)も増えました。

相互の理解をすすめるために

 韓国では日本の植民地支配を違法として、徴用工に対する賠償を日本企業に求める大法院判決(二〇一二年~)が下りました。日本政府は、それに反発して対抗措置が取られ、国民的にも韓国に対し批判、不快感が強くなっています。

国際法的には過去の植民地支配を違法とは認めておらず、法的には日本側に理があります。しかし不快感は、私たちの明治以後、近現代史の知識不足にも起因します。『主戦場』(ミキ・デザキ)を見れば、無知無関心につけこんだ従軍慰安婦否定論者の歴史の偽造が明らかです。

 映画等では日韓の庶民レベルの心情は似ています。相互の理解をすすめるために、歴史を共有した上で独自文化の尊重が大事です。(Q)

参考文献:『日韓が和解する日/松竹伸幸』『池上彰が聞く韓国の本音/池上彰

2021年4月に読んだ本その1

『傍流の記者/本城雅人』『赤めだか/立川談春』『日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由/池上彰』『世界4月号』『フォッサマグナ/藤岡換太郎』『声に出して笑える日本語/立川談四楼』の6冊を紹介します。まずは3冊分です。

『傍流の記者/本城雅人』

 ミステリーではなく全国紙の社会部を舞台にする、新聞社の企業小説で『敗者の行進』『逆転の仮説』『疲弊部隊』「選抜の基準」『人事の嵐』『記憶の個室』の連作短編集です。

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 東都新聞社会部に優秀な記者ばかりがそろった黄金世代の同期六人。警視庁の植島、検察の図師、調査報道の名雲、遊軍の城所、人事の土肥、社長秘書の北川をそれぞれ担当部局で活躍していますが、各辺ごとに中心人物を変えながら新聞社内部の葛藤を書いています。

 「貫くべきは己の正義か、組織の保身か。出世か、家族か、それとも同期の絆か――。中間管理職の苦悩、一発逆転の大スクープ、社会部VS.政治部の熾烈な争い……火傷するほど熱い新聞記者たちの闘いを見よ。痛快無比な企業小説」という持ち上げた書評もありますが、社内の丁々発止の面白さですね。それがジャーナリズムの役割とどう関係しているのか、彼らの記事の社会的な影響力はどうなのか、その点が物足りないと思います。

『赤めだか/立川談春

 談志、談四楼を読んで、続いて今や江戸落語トップランナーともいえる立川談春立川談志入門から前座修業までを書いた自伝です。面白いし立川一門の中もわかるようになっています。

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 講談社エッセイ賞も取っていますし、テレビドラマにもなっています。

 当然、師匠談志とのかかわりが濃くてまた面白く、彼の「名言」や奇行がふんだんに出てきます。今、立川流の中で一番マスコミに露出の高い志らくは、昔から根性が悪かったようです。

 私は、談春の同期で廃業する談秋との話が一番しんみりときますね。それと1年間築地のシュウマイ専門店で働いた話。配達途中で落としたシュウマイを、ぱっぱとごみを払って持っていく感覚、食べ物商売のものではない、無茶苦茶ですが、そこで世間の常識や気配りを学んでいきます。

 そんな経験をして落語家、談春がつくられたのが面白いですね。 

『日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由/池上彰

20209月発行ですから、この問題に対する池上彰の最新版の考え方といっていいでしょう。フジテレビ「池上彰スペシャル」を書籍化したものです。これは装いを凝らした嫌韓本のたぐいです。

日本のネトウヨに迎合する『反日種族主義』を書いた李栄薫(李承晩学堂の校長)の主張を踏襲するだけで、韓国内にある李栄薫らを批判する人々をきちんと取材していません。

やはり池上彰さんは酷い、と思います。

本の章立てを紹介すると「はじめに―日韓対立はいつまで続くのか」①「なぜ日本に厳しく、北朝鮮に甘いのか」②「反日の象徴「不買運動」のその後」③「意外と知らない!?徴用工問題」④「若者世代に変化のきざし」⑤「「反日種族主義」と嘘の歴史教育」⑥「日本と韓国が分かりあうために」で、「池上彰からのラストメッセージ」として「韓国は韓国の歴史を見直そうとしている。私たちの側にもやるべきことはたくさんある」となっています。

でもこの本では、日本のヘイトスピーチ嫌韓本が持っている歴史の偽造、明らかな嘘については一切触れていません。池上彰さんが映画『主戦場』に出てくる、従軍慰安婦問題を否定する恥知らずの面々と同じような顔に見えてきました。

反日種族主義』は2019年に韓国で出版され10万部、同年に日本でも文芸春秋社から出版されて40万部売れています。内容は日本で出版されている嫌韓本と同様のようです。一度、本屋で立ち読みしてみます。図書館で検索すると予約待ちがたくさん入っていました。

これに正面から反論する韓国の研究者が『歴史否定とポスト真実の時代 日韓「合作」の「反日種族主義」現象/康誠賢他』を2020年初めに出しています。日本でも202012月に出版されています。

   それについても池上さんは触れていません。今度はそれを読んでみます。

 

 

2021年4月に見た映画その1

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』『ノマドランド』『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事』『ミナリ』『お名前はアドルフ』『ストックホルム・ケース』『グレタGRETA』『無頼』『赤い闇スターリンの冷たい大地で』『ソニア ナチスの女スパイ』10本になりました。とりあえず半分の5本について書きます。

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

 よくわからない映画でした。邦画です。

 出ている人々の生活は、ひと昔し前ぐらいの設定で、こちら側に住んでいる人々が、川向こうの町と戦争をしているという話です。

 兵隊となっている人々は、朝から出勤して戦場である河原に向かい、鉄砲と大砲を打ち合って夕方になると帰ってくる、という日常を送っています。これが何の暗示なのかさっぱりわかりません。

ノマドランド』

 評価が高くて、ベネチア映画祭グランプリ、米アカデミー作品賞監督賞など多く受賞しています。監督のクロエ・ジャオは中国系米国人ですが、中国批判をしたことがあったそうで、そのために今回のアカデミー賞受賞が中国では報道されないと聞きました。酷い国になりました。

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 映画は、普通の家を持たずキャンピングカーを家代わりにして、米国のあちらこちらを旅しながら生活をする人々、高齢の男女を描いています。ノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』(ジェシカ・ブルーダー)が原作です。ノマドは放浪者、遊牧民という意味、フランス語です。

 主人公ファーンは60代、彼女は夫と死別し、ネバダ州エンパイヤという町に住んでいました。リーマンショックの時期に、町を作り経済活動を支えていた石膏採掘企業が倒産して、町はゴーストタウン化しました。彼女も生活ができないと判断し、そして家を捨て普通の生活を捨てて、家財道具をキャンピングカーに乗せて、当てのない放浪の旅へと出たのです。

 それは彼女の選択ですが、あまりノマドの暮らし方は知りません。でも色々な人と出会う中で、その生活に慣れていきます。

 とても静かな映画です。ファーンを演じるのはフランシス・マクドーマンドで『スリービルボード』で演じた過激な女性とは変わって、あまり表情を変えない役柄でした。

 ノマドたちは彼女と同様に高齢者で独り者が多いようです。定まった収入はなく、ファーンは通販会社の配送センターや公園の清掃など、臨時のアルバイターとして働きわずかな現金収入を得ているようです。おそらく年金と合わせてかつかつの生活でしょう。

 ファーンは突然の車の故障に、修理代を姉に借りに行きます。「ここで一緒に住もう」という誘いも断ります。

 お金もないし、医療保険にも入っていない、独りぼっち、厳しい生活と大きな不安を抱えながら「普通の生活に戻らない」彼女の心中をわかりやすくは描いていません。でも人間の誇りみたいなものを感じました。

 もちろんベースには米国社会の新自由主義万歳の「自己責任」にもとづく貧しさがあります。だからと言って、それを声高には言っていません。いわば個人の自由を建前とする現在の米国社会が縛っている息苦しさからの解放、逃走のような映画でした。

『生きろ 島田叡―戦中最後の沖縄県知事

 西神ニュータウン9条の会HP5月号に紹介を書きましたので、詳細はそちらを読んでください。簡単に紹介します。

 アジア太平洋戦争の終戦間際、民間人を巻き込んだ沖縄戦を、戦中、最後の沖縄県知事島田叡の生き方を通じて描くドキュメンタリーです。

 島田叡は沖縄県知事に任命されて、1945131日、沖縄の地に立ちます。敗勢は明らかで「死にたくないから、だれか代わりに行ってくれ」とは言えない、と家族の反対を押し切って赴任します。43歳です。

 三高、東大、内務官僚と進む典型的なエリート官僚ですが、死を覚悟して沖縄に行きます。県民のために精一杯働き、一般国民に対しても軍が公然と玉砕を求める中で、県職員や県民に命を大切にしろと言います。気骨があったと言われています。

しかし軍の要請(命令)には逆らえず、県民は悲惨な地上戦に巻き込まれました。

『ミナリ』

 米国に移住した韓国人一家を描く映画で、時代は1980年代です。監督・脚本のリー・アイザック・チョンは韓国系アメリカ人、ミナリは韓国語で香味野菜のセリのことです。

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 米国に移住してひよこの性別鑑定士等でお金をためた韓国人一家が、田舎に土地を買って農業を始める話です。新天地にきたから一発当てて生活を向上させたいと、夫ジェイコブは必死に働きます。

 トレーラーハウスに移り住んで、適当な農地(前の所有者は破綻した)を買います。妻と二人の子供(小学生低学年?、女の子と男の子、彼は心臓が悪い)、そして韓国から妻の母親も呼び寄せます。しかし妻モニカは「こんな生活いやだ」と争いは絶えません。

 変人の米国人を雇って韓国料理店向けの野菜を作り、地域のキリスト教会にも顔を出して、苦しくても何とかなるかな、と話は進展していきます。

 しかし土地の地下水が枯れ、母親が倒れます。さらに農作業小屋が火事になるという不運が頻発しました。

 どうなっていくのか、思う間もなく映画は終わりました。最後に川べりに植えた韓国から持ってきたセリが青々と茂り始めた、が希望かなと思いました。

 身一つでやって来た韓国移民、人生は努力し苦労したからと言ってうまくいくとは限りません。80年代に35万人がやって来たと言いますが、この映画のようないろいろなことがあって、この地に根を下ろして粘り強く暮らしてきたのでしょう。 

『お名前はアドルフ』

 4月例会でした。ドイツ人にとってアドルフという名前は特別なのだ、ということで映画は始まります。ヒトラーファーストネームですから、普通は気にしますよね。でもこの映画の本当に怖い所は、夫婦、姉弟、親友などの非常に近しい人間がお互いに心の奥底に秘めていた思い、というか恨みつらみを吐露してしまうことでした。

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『お名前はアドルフ』の主な舞台

 この映画は子供にアドルフという名前を付けるといえば、大学教授で左派の義兄(姉の夫)と姉がどんなことをいうか、弟が仕組んだパーティの座興です。本当は死んだ父の名前を付けるつもりでした。

 このパーティの参加者は5人、姉夫婦、弟夫婦、そして姉弟と家族のように一緒に育った男です。姉夫婦の姉は国語の教師、夫は大学教授で幼馴染、弟は事業で成功した金持ち、その妻は女優、男は音楽家です。みんなインテリか金持ちの上流階層の人間です。

子供の名前「アドルフ」で議論しているときは、まだよかったのですが、そこから一人ひとりお互いに個人的欠陥をつく攻撃の大渦が、すべての人を巻き込んで始まりました。さらに・・・。

 そんな身も蓋もない大喧嘩の後で、人間関係がどうなるのか、これが本当にテーマかもしれません。その後も、普段と変わらぬ関係が続くという大人の映画でした。

   痛い所を突っ込まれ批判されても、それを受け止める人間力が大事です。言論の自由、批判の自由から自分が除外されているわけではありません。