2023年5月に読んだ本その2

22世紀を見る君たちへ―これからを生きるための「練習問題」/平田オリザ』『日本人の笑い/暉峻康隆』と『世界5月号』『前衛5月号』を書きます。

22世紀を見る君たちへ―これからを生きるための「練習問題」/平田オリザ

 西神ニュータウン9条の会が平田さんを講演に呼び、私がその司会を務めました。そのために事前に一冊ぐらい読んでおこうと図書館で借りました。

 予想以上に面白く読みました。さらに講演を聞いて、平田オリザさんの魅力は劇作家を越えたものであると思いました。

 この本も演劇に関するものではなく、演劇を使った教育を考え実践してきた平田さんの考え方をまとめた本でした。

 大学の入試で演劇を使った事例がありました。四国学院大学の演劇コースの入試です。どういう風にするのかと思うと、受験生を67人のグループにして、テーマを与えたディスカッションドラマをつくらせるというものです。

 推薦入学の受験生なので、その考え方は知識の量をはかるのではなく、生徒の本質を見極める試験、と言っています。

その他にも「学び合い」「論理的にしゃべれない人の気持ちを汲み取る能力」など重要なことが書かれてありました。

『日本人の笑い/暉峻康隆』

 江戸川柳のいわゆる「ばれ句」を中心に書かれた本です。最初は1961年に出されて、暉峻康隆さんは高名な江戸文学の大学教授です。それにしては柔らかいというか、ちょっと品に欠ける文章でした。でも面白かったです。

 気になった川柳を書いておきます。

・宝船しわになるほど女房こぎ

・門口で医者と親子が待っている(これは解説を読むまで全く分かりません)

・神代にもだますは酒と女なり

・老いが恋わすれんとすれば時雨かな(蕪村)

・金につまづいて踊り子転ぶなり

・残念かいいか常盤泣いてさせ

・歯は入れ歯目はめがねにて事たれど

『世界5月号』

 この号の特集は二つ「新しい戦前と憲法」「見えない貧困」があり、「大江健三郎さんを追悼する/小森陽一」とか、面白い読み物が多くありましたが、紹介するのは映画です。

「インタビュー『トリとロキタ』ジャン=ピエール&リュック・タルデンヌ監督に聞く/聞き手・中村一成

 サブタイトルが「友情(アミティエ)という、たった一つのホーム」となっていました。

 少年トリと少女ロキタは、西アフリカからきた未成年の移民です。トリは在留許可を得ていますが、ロキタはその姉と偽ってビザを得ようとしますがなかなかうまくいきません。

 彼らは生きていくためにいろんなことをする、欧州社会は彼らをどのように扱うか、そういうことを描く映画でした。

 私は、見た直後は「よくわからない」という評価ですが、でもとても気になる映画でした。彼らが生きるために、金を儲けるために、子どもなのに欧州にやってくるという発想についていけなかったからです。

 しかしそういう現実があると、この映画は突き付けたのです。二人はたまたま知り合っただけで、男女の関係でもない、幼い無償の「友情」だけで結びついている姿も、異様に見えます。

 人権が普遍的なものとするのか、すべて問いかけられていると思いました。

『前衛5月号』

座談会「欧州左翼との新たな交流・連帯を求める旅その2 欧州左翼党大会―軍事ブロック・軍拡に反対、大陸を超えた共同/緒方靖夫、田川実、吉本博美」

 4月に続く欧州の左翼党との交流で、202212911日に開かれた欧州左翼党第7回大会に出席して、その時の様子を3人が話しています。

 欧州左翼党は2004年に結党され、現在、24か国の25党が正式加盟、12党がオブザーバーで、多様な左翼・進歩党が参加しています。西欧だけでなく、旧ソ連の一部を含めた東欧の政党も参加しているフォーラムです。欧州の有力な左翼政党がすべて参加しているというわけでもなさそうです。

 やはりウクライナ戦争が大きなテーマですが、それに対し意見の一致はありません。政権与党であるフィンランド左翼同盟は、フィンランドNATOに入ったために欧州左翼党から抜けています。しかし大枠として左翼が「対案」を示すことが大事だといいます。

 また北欧でも新自由主義との闘いがあるようです。

 日本共産党の「軍事ブロック強化、軍事費増大に反対」は受けたようです。米国が主導する中国、ロシア排除よりも、包摂です。NATOの拡大にも反対です。

 でもこれを読んで気になったのは、欧州全体で進んでいる極右政党の支持が増大していることの分析があまりなく、その一因となっている移民問題について触れていないことです。

西神ニュータウン9条の会HP2024年3月号

いつもの標記のHPの紹介です。今月は8編のエッセイ、8句の川柳と「西神の野鳥」はメジロです。今月の歌は「いぬふぐりの歌」です。

「おしゃべりコーナー」では、ニュータウンの各地区の中心にあったスーパーマーケットが撤退について考えています。資本主義社会では企業活動の自由は認められています。利用者の生活よりも優先されます。では誰が生活を守ってくれるのでしょうか。

来月4月20日の「第16回記念の集い」のチラシも添付されていますので是非見てください。講談師の神田香織さんをお呼びします。

エッセイの感想を簡単に書いています。

 「抑止力」という考えはもうやめよう! イスラエル軍元兵士が語る非戦論   鈴木哲雄(学園都市)

 本の紹介です。現在のガザのジェノサイドは、イスラエルの自衛の戦争、抑止力による戦争です。軍事力による抑止は国家体制や社会、そして国民の意識すべてを軍事化していくのです。そして「敵」をせん滅するまで行きます。

 日本もそれに近づいていると思います。

 心に染みる言葉(8) 李登輝さん 西元善郎(竹の台)

 台湾の戦後政治の指導者の紹介です。私は全く知りませんでした。

まりさんのパリ通信(61)バックパック旅行記⑪  イタリア・ベルガモ パリまり(パリ在住)

 アラ還女子のイタリア、バックパック旅行です。私の想像を超えてすごいというしかありません。

価値観が変わった ~阪神淡路大震災 山口洋司(狩場台)

 あの時のことは色々と考えます。地震大国の日本では、自治体のもっとも重要な仕事は、いつでもこの程度の震災が来ることを想定しておくことだと思っています。

落とした小銭入れが奇跡の生還、今度は自力で川崎 環(美賀多台)

 落し物が戻ってくるのは本当に不思議です。

PFAS(ピーファス)汚染について⑤ 脱プラサークル 脱プラ子

 日本では国際標準と比較してPFASの被害を予防する感覚が非常に低い、特に国や自治体がなにに遠慮しているのかと考えると、PFASを垂れ流している米軍(自国の基準をまったく気にしない)ではないかと思ってしまいます。

憲法と映画(87)『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』   反戦映画を考えた
つだわたる(美賀多台)

 この映画は若い人に人気があるようです。戦争を知らない我々は、戦争の何を知るべきか、伝えるべきかを考えます。映画の作り手たちに注文をつけます。

遺言書について その1 関 通孝(西神中央法律事務所)

あまり気にしたことはないのですが、遺言の基本は知っておきたいと思います。

第37回小田原尊徳マラソン大会

 2024年3月10日標記の大会でハーフマラソンを走ってきました。2時間8分52秒と前回とほぼ同じで、ちょっと残念な結果となりました。

 コースはほぼ酒匂川の土手の道を2周するという平坦ですから、前回よりもいい記録が出ると思って、6分/㎞、2時間6分程度を目標に走りましたが、後半に大きく失速しました。


 13㎞まではほぼ6分/㎞だったのですが、それ以降はだめでした。それでも最後の1kmになって力を振り絞ろうとしたら、ふくらはぎがピリッと来たので、力を入れずに走りました。


 やはり左足が完治していません。これまであまり痛めたことのない腿裏が強く張っている感じです。

 コロナ前に比べると年齢も体重も増え、半年のブランクもあるから、走力が落ちるのは、ある程度は仕方がないのですが、自分自身はもう少しやれると思っているのです。

 相対的にみると全参加者で686/1059、60才以上の男で79/150ですから、まあまあです。

 天気は良くて、でも気温はそれほど上がらずいい環境でした。富士山がきれいに見えていました。

 

 3月末は大分の国東半島に行きます。今シーズンはこんな調子でしょうから完走を目指して走ります。

 

2023年12月に見た映画その2

NO選挙 NO LIFE』『シン・ちむどんどん』『PERFECT DAYS』が2023年の最後です。前の2本はまとめて9条の会HPに書いたものを再掲します。

NO選挙 NO LIFE』『シン・ちむどんどん』

 西神ニュータウン9条の会HPにまとめて書きました。

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選挙の表と裏

 選挙を追うドキュメンタリー2本の紹介です。

 『NO選挙』は、国内外や国政、地方などの選挙(主には候補者の活動)を25年追い続けてきたフリーのジャーナリスト畠山理仁の取材スタイルを追いかけるドキュメンタリ―です。

 2022年の参議院の東京選挙区選挙とその年の沖縄県知事選挙が舞台です。

 『シン・ちむ……』は、その同じ沖縄県知事選挙を、ラッパーのダ-グレスタ-と時事芸人のプチ鹿島が、3人の候補者、立会演説会、支援者などに取材するドキュメンタリーです。

 選挙は民主主義の有効な手段ですが、現在の選挙制度では国民の意思が反映されているのか疑問です。投票率が低いのは国民の問題ではなく、行っても行かなくても同じという雰囲気、学校での主権者教育がないためだと思っています。

 この2本は選挙をちょっと違う切り口で見せました。

選挙を利用する

 参議院東京選挙区定数6に34人が立候補しました。畠山はすべての候補者に直接取材する姿勢で、一人一人の主張と素顔を見せていきます。300万円の供託金没収覚悟で、自分の言いたいことを訴える人たちは「変」な人が多かったです。

 「バレエ大好き党」「議席を減らす党」「沖縄の米軍基地を東京に引き取る党」等がありました。NHK党が5人も候補者をたてているのが驚きです。でも比例区得票率2%を超えて、政党助成金33千万円貰っています。

米軍基地問題の本質

 この2本の映画は、22年の沖縄県知事選挙を撮りました。米軍の辺野古新基地建設の是非が焦点であり、それに反対を表明している現職の玉城デニー知事が当選します。

 3人の候補者の主張を公平に撮りますが、選挙戦では米軍基地がどれほど市民生活を圧迫し歪めているかはわかりません。だが自公推薦の候補者を応援しているのは、建設業界であることが、演説会等ではっきり見えます。

 『シン・ちむどんどん』は、選挙とは別に沖縄の米軍基地の酷い実態を取材しました。

 そして選挙の後で2チャンネルの創設者「ひろゆき」が辺野古を訪れ、反対運動を冷笑するツィートを流し、それに27万人が「いいね」をしたことを紹介します。

 ここに沖縄の困難はあります。無意識に基地問題を「沖縄の問題」にすり替えているのです。

PERFECT DAYS

 監督がヴィム・ヴェンダース、主演が役所広司カンヌ映画祭の男優賞ですから、どんな映画をつくったのかと興味津々で見ました。

 「あんまり好きになれない」というのが率直な感想です。

 役所広司が東京の公衆便所清掃の受託している会社の作業員、平山正木を演じ、彼の平凡な日常生活を追う映画です。小さな古いアパートで独り暮らし、朝早くから作業道具を積んだ軽自動車で担当する公園の公衆トイレを回ります。

 コンビで仕事するようですが、平山はほとんどしゃべりません。受けはいいようです。作業に「かいぜん」を加え手際が良く、仕上げは完璧です。昼食はいつも決まった神社の片隅でコンビニのサンドイッチを食べます。仕事を終えて帰ってくると、銭湯に行き、地下鉄の改札前にある小さな居酒屋でホッピーと少しの肴を食べます。すぐに帰って、家で文庫本を読んで寝ます。

 決まり切った生活スタイルです。家にある植木に水をやり、持って出るものは並べています。朝はアパートの前にある自動販売機の缶コーヒーを飲むだけ。木漏れ日をフィルムカメラで撮っています。

 休日にコインランドリーでまとめて洗濯をし、古本屋で文庫を物色し、馴染みのスナックに行き一曲歌います。ママは石川さゆりでした。自分からしゃべるような友人はいないようです。

 ルーティンのようですが、同僚が退職したり、姪が家出して来たり、ママの別れた夫から恋人に間違われたり、と彼の周りがどんどん変わり、色々あります。

 平山がこれまでどんな人生を歩んで来たか、説明はありません。でも姪の母、彼の妹はある一定規模の企業の経営者のようです。2階建てのアパートに住んで、2階の二部屋で寝起きをして、そこには文庫本が並んでいます。一階は炊事場で顔を洗う以外、ほとんど使っていませんが、奥の部屋には荷物は相当あるようです。

 訳ありで謎に包まれた男の生き方を「パーフェクトデイズ」などと言うのか、私にはわかりません。物は無いようですが、開き直ったように時間を贅沢に使っています。

 でも男は何歳になっても欲があり、不安を隠しそして迷っている方がいいです。

2023年12月に見た映画

60アイヒマンが処刑された日』『フラッシュオ-バ-炎の消防隊』『フジコ・ヘミングの時間』『NO選挙 NO LIFE』『シン・ちむどんどん』『パーフェクトデイ』6本でした。やはり学校が休みになるとちょっと見やすい感じです。年末はそれなりに用事があるので、そこはいけませんでしたが、それまでに頑張ってみた感じです。

 短く書けばいいのですが、映画サークルに書いたものと9条の会に書いたものを再掲するので、ちょっと長くなり、2回に分けます。

60アイヒマンが処刑された日』

 ちょっとわからない映画でした。ナチスドイツのユダヤ人虐殺の責任者であったアドルフ・アイヒマンイスラエルの秘密組織に捕まり処刑された後、その遺体を焼却処分しました。

 映画は、火葬の習慣のないイスラエルで、そのための炉を小規模な町工場でつくったという話でした。

 リビアからやってきたアラブ系の少年が、それに関わり、いわばドタバタに近いような日常的な出来事があって、無事にアイヒマンを処刑し遺体も焼きました。

 最後は現代に飛んで、かつての少年が雑誌社に、その事の真相を売り込みに来たという締めくくりでした。

 そういうことを言って、現代のイスラエルでどのような影響があるのか、わかりません。

『フラッシュオ-バ-炎の消防隊』

 中国の映画です。化学工場のコンビナートで大火災が発生して、消防士たちが生死をかけて消火に挑む映画でした。

 姫路の日本触媒の火災を連想しましたが、それをはるかに超える規模の工場群であり、火災です。訓練された消防士と最新鋭の大規模な消火ロボット・機器が総動員でやってきます。ミサイルのようなものもありました。

 そういった機器と消防士たちの使命感、団結、思いやりなども含めて何か国威発揚の感じのする映画でした。

フジコ・ヘミングの時間

 市民映画劇場12月例会です。機関誌に解説を書いたので、ちょっと長いですが、それを再掲します。

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フジコ・ヘミングのプロフィール

 太い指が白と黒の鍵盤の上で踊ります。「艶やかなピアニスト」とは不似合いですが、その指が唯一無二の、フジコ・ヘミングの魅力的なメロディを奏でます。

 『フジコ・ヘミングの時間』は彼女の独白と演奏で綴るドキュメンタリーです。この映画は二〇一八年に公開されていますが、その現在の生活スタイル、生き方考え方が描かれ、時折、彼女が子ども時代に書いた絵日記を挟み込んで、生い立ちを語ります。

 六〇歳を超えて、改めて、その才能を世界的に認められたピアニストの魅力が一杯です。解説や背景などは不要の映画ですが、彼女がたどった人生を追ってみます。

ベルリンで生まれる

 本名はゲオルギ-・ヘミング・イングリット・フジコ。一九三二年十二月五日ベルリンで生まれます。母の大月投網子がピアニストとしてベルリンに音楽留学をして、父ジョスタ・ゲオルギ-・ヘミング(建築家で画家のスウェ-デン人)と出会って結婚しました。

 フジコの後に二つ下の弟、大月ウルフが生まれます。

 家族は、フジコが五歳の時に母の母国である日本に帰国します。東京で暮らし始め、彼女は母からピアノを習い始めました。一〇歳から父の友人であった世界的なピアニスト、レオニード・クロイツァ氏に師事します。

 しかし父は、戦時下の日本から家族を残してスウェーデンに帰ってしまいます。それ以来会うことはありません。 

 戦争が終わった後、一六歳の時に中耳炎で右耳の聴力を失うが、東京音楽学校(現:東京芸術大学)に進みます。一九五三年にNHK毎日コンクールに入賞するなど、在学中に多数のコンクールで賞を得て、将来を嘱望されていました。

 学校を卒業して演奏活動に入りますが、一九六一年にベルリン音楽学校(現:ベルリン芸術大学)に留学します。その時に無国籍になっていることが分かり、関係者の配慮で赤十字の難民という扱いで日本を出ました。(後にスウェーデン国籍を取得)

 ベルリンでの生活は、奨学金と母からの仕送り百ドルという貧しい生活で、周囲の人々ともなじめなかったようです。「どん底の人生」と書いています。

 学校は優秀な成績で卒業しました。しかし苦しい生活は続きます。

 一九七〇年世界的な音楽家レナード・バーンスタイン等の推薦を受けて、ウィ-ンでリサイタルを行います。しかし、その直前に風邪をこじらせて左耳の聴力を失うというアクシデントに見舞われました。(治療によって現在は四〇%ほど回復)

 失意の日々ですが、ピアノ教師で生活しながら、地道に欧州各地でコンサート活動を続けました。

 母の死後一九九五年に日本に帰って来ました。母の残した東京都の下北沢の家で暮らし始めます。

今も現役ピアニスト

 一九九九年二月にNHKが『フジコ~あるピアニストの軌跡~』を放映します。これに大反響があり「フジコ・フィーバー」を日本中に起こしました。同年の夏にリリースしたデビューCD『奇跡のカンパネラ』が大ヒットします。これは二百万枚というクラシック界異例の記録的な売り上げを達成しています。

 これを契機にフジコ・ヘミングは世界的に認められます。世界の名だたるオーケストラと共演し、二〇〇一年にカーネギーホールに三千人を集めるリサイタルを成功させました。

 世界各地を飛び回る音楽活動を続けました。

 彼女のオフィシャルサイトを見ると、現在でも驚異的なコンサート活動を行っています。九一歳になる十二月に、国内六カ所を回ります。

 これを書くためにフジコ・ヘミングのエッセイ集を読みました。多くの苦難を越えてきた、その生き方考え方も魅力的ですが、文体がとてもいいのです。ふわふわしていて、品があって軽やかに言葉も踊っているような感じでした。

参考:公式サイト、エッセイ集『たどりつく力』『やがて鐘は鳴る』『私が歩んだ道、パリ』

第19回さくら市マラソン大会

 2024年2月23日、標記のハーフマラソンを走ってきました。タイムは2時間9分41秒であまり良くないのですが、ちょっと充実感を感じています。それは昨年4月末に、足をケガして以降3度目のハーフマラソンですが、タイムが改善されてきたからです。

 11月の伊賀上野は2時間22分、1月の龍野は16分でした。両方とも10㎞以降の後半は、足に力が入らない状態でしたが、今回はちょっと違いました。

 今回はランナーズ時計を忘れたので、正確なペースはわからないので感覚だけで書きます。

 まだ膝裏に違和感を持ちながらで、前半は抑え気味で完走だけはしようと走り始めました。おそらく6分/㎞ぐらいだと思います。不安な出発です。7㎞ぐらいから峠の登りで、ここでペースは落ちます。そして下りで少し早くなり、平坦なところでは、また元に戻ります。このままでいいかと思いましたが、10㎞を過ぎると力が余っている感じになってきました。

 この辺りまで来ると、後半に力を出す人が次々に抜いていきます。彼らにはついていけません。

 12㎞あたりの給水を最後に、休みを取らずに走りました。しっかりとペースを守り、足の痛みは忘れました。そして今回は最後の5㎞から力を振り絞るような走りが出来たのです。

 それほどペースを上げることが出来たわけではないですが、頭の中で映画『ロッキー』のテーマをや『走れコータロー』を流しながら走り続けました。12人抜いて1人抜かれました。

 残り2㎞のところで抜かれた一人は若い女性でした。彼女に必死で食らいつこうとしましたが、それはダメでした。最後は陸上競技場の1周でしたが、よれよれながらラストスパートできました。

 この日は、全国的に冷え込んで、さくら市も夜からの雪が積もっていました。道路には積雪はありませんが、田んぼなどは雪化粧です。そしてレース中も雪が舞って居ました。だからといって走りにくいことはありません。

 相対的な順位でいうと、50歳以上の男で171/229ですからまあまあです。

 栃木県さくら市、人口4万人ちょっとの町の1200人程度の小さなマラソン大会でした。


 3月は小田原と国東半島を予定しています。もう少し頑張れそうな感じです。

 

 

 

2023年11月に見た映画

『私はモ-リ-ン・カ-ニ-正義を殺すのは誰』『パリタクシ-』『ナイト・オン・ア-ス』『小さな麦の花』『ぼくは君たちを憎まないことにした』『ぼけますから、よろしくお願いします。おかえり母さん』6本です。ちょっと長くなりますが1回で紹介します。

『私はモ-リ-ン・カ-ニ―正義を殺すのは誰』

 フランスの実話に基づく映画です。モーリーンは小柄な女性ですが、フランスの巨大原発企業の労働組合書記長を務めるやり手でした。

 モーリーンは原発の技術が会社の幹部によって中国に移転されようとしていることを知ります。そんなことがやられれは会社は潰れ、5万人の労働者が首を切られる、と考えて、会社内部はもちろん、政治家など、あらゆる手を使ってでも止めようと走り回ります。

 そんな時に、彼女は自宅で暴漢に襲われ凌辱されます。彼女は果敢に戦おうとしますが、最初は被害者の扱いであったものが、心神喪失による証言のあいまいさを突かれ、警察当局から「自作自演」と決めつけられて容疑者の扱いになります。

 失意のモーリーンですが、新しい証拠を探して、闘い続けてついに無罪を勝ち取りました。しかしその間にアレバは解体再編されていました。

 国家的な謀略とともに、自由、平等、博愛の国であるフランスの女性への差別意識も感じます。そして戦後日本の「下山事件」を思い起こしました。

 厳しい攻撃があると思うが、こんな映画をつくるフランスの民主主義の分厚さを感じます。

『パリタクシ-』

 パリのタクシー運転手が、自宅から老人施設に移る92才の老嬢の相手をするという話です。一日の間に彼女の人生が語られ、パリ市内の思い出の場所に次々に寄っていくという小粋な映画でした。

 上品な老嬢ですが、彼女の人生は、刑務所に入るなど波乱万丈でした。

 一方、運転手の方は、借金まみれの生活で、違反切符がたまり免許取り消し寸前です。いい加減人生を生きています。

 そんな二人がだんだんと打ち解けてい様子がとても感じよい映画でした。 

『ナイト・オン・ア-ス』

 1992年に『ナイト・オン・ザ・プラネット』という邦題で公開されています。

 ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキを舞台に、タクシー運転手と乗客たちの人間模様を描くオムニバスでした。ジム・ジャームッシュらしいハチャメチャさが多い映画で『パリタクシー』とは違う味です。

ロサンゼルスは映画の女ディレクターと女運転手、ニューヨークは黒人と東ドイツ移民の運転手、パリは大使館に行くという黒人二人、その後に盲目の女性と黒人運転手、ローマはおしゃべりな運転手と神父、ヘルシンキは酔っぱらった労働者3人と不運な運転手という組み合わせでした。

 コントのような映画です。

『小さな麦の花』

 検閲のある国の映画は、注意してみますが、同時に監督の言いたいことは何だろうと考えます。この映画は用心しながら言いたいことを言った、そう思いました。

 現代中国の農村の話です。

 ちょっと障害ある女と結婚した貧しい男は、一頭のロバを相棒に、小さな畑を懸命に耕して二人寄り添って暮らします。そして日干しレンガを積み上げて、とうとう家まで建てました。二人の幸せが始まるかと思いましたが、突然事故で彼女は死んでしまいました。

 男は失意のあまり家を壊しロバを放り出して、どこか都会に行ってしまいました。

 何とも言えない映画です。じんわりと心を打ちます。少なくとも農村社会でも貧富の格差が大きいこと、政府の政策が貧しい人を助けるものになっていない、小さな声で、そこを突いています。

『ぼくは君たちを憎まないことにした』

西神ニュータウン9条の会HPに投稿したものを再掲しておきます。

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憎悪の連鎖は止める

 20151113日に起きたパリ同時多発テロ、郊外のスタジアムや市街地の飲食店、そしてコンサートホール、バタクランにテロリスト集団が爆弾を投げ込み、自動小銃を乱射します。130人の死者、300人以上の負傷者が出ました。

 この時に、ジャーナリストのアントワーヌ・レリスの妻エレーヌは、バタクランで殺害されています。

 アントワーヌは妻の死を確認した直後に、犯人グループに対し「君たちに憎しみを贈らない」というメッセージをSNSにあげました。それが大反響を呼んだのです。

 後に、彼は妻の死からの2週間、自らの体験や思いを綴ります。それを原作として作られた映画です。

 愛する者を奪われた人間の苦しみ、悲しみそして怒りがよくわかる映画でした。しかもそれを耐え忍んで、敵を憎まない、自分の生き方を貫きたいという強い意志と、弱い人間としての苦悩も伝わってきました。それをメッセージにしました。

平凡だが愛に満ちた生活

 映画は、アントワーヌと妻エレーヌ、幼子のメルヴィルの生活をていねいに描きます。都心のアパートメントの部屋、愛情豊かで、多少のいざこざを抱えた平凡な生活です。

 それが一転して恐怖の街に変わります。エレーヌとの連絡が取れないアントワーヌの苛立ちが描かれますが、映画はテロの現場や殺戮はいっさい見せません。テロリスト集団が誰かさえも、明示しません。

 そして彼の「君たちに憎しみを贈らない」とメッセージは一晩で20万もシェアされました。それを読んだ多くの人が賛同します。テレビや新聞等のマスメディアも大きく取り上げ、彼は英雄のように扱われました。

 しかしアントワーヌとメルヴィルの生活は、エレーヌを失った悲しみで一杯です。それが十二分に伝わりました。

敵を憎まない

 アントワーヌはエレーヌを失った悲しみと苦しみを噛みしめても、誰かをに憎むことを明確に拒否します。テロリストを詮索もしません。ただこの悲しみをメルヴィルと一緒に乗り越えようとする姿だけが描かれました。

 それが彼の生き方だと映画は明確に示しました。私は深く共感したのです。

 

『ぼけますから、よろしくお願いします。おかえり母さん』


 映画作家が、自分の父母を撮ったいわばプライベートなドキュメンタリーです。前作は段々と体も心も年老いて行く二人の様子がコミカルな感じでしたが、その続きのこの作品は、母親が認知症となり、最後は死んでいくところまで見せました。100才になる父親は、しかし大人気です。

 御影公会堂で上映しましたが、たくさんのみなさんがきました。大体高齢者です。近々ボケる人、その介護をしなければと思う人たちかな。それと福祉、介護の関係者と思われる若い人です。

 これはそういう映画です。