2023年12月に見た映画その2

NO選挙 NO LIFE』『シン・ちむどんどん』『PERFECT DAYS』が2023年の最後です。前の2本はまとめて9条の会HPに書いたものを再掲します。

NO選挙 NO LIFE』『シン・ちむどんどん』

 西神ニュータウン9条の会HPにまとめて書きました。

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選挙の表と裏

 選挙を追うドキュメンタリー2本の紹介です。

 『NO選挙』は、国内外や国政、地方などの選挙(主には候補者の活動)を25年追い続けてきたフリーのジャーナリスト畠山理仁の取材スタイルを追いかけるドキュメンタリ―です。

 2022年の参議院の東京選挙区選挙とその年の沖縄県知事選挙が舞台です。

 『シン・ちむ……』は、その同じ沖縄県知事選挙を、ラッパーのダ-グレスタ-と時事芸人のプチ鹿島が、3人の候補者、立会演説会、支援者などに取材するドキュメンタリーです。

 選挙は民主主義の有効な手段ですが、現在の選挙制度では国民の意思が反映されているのか疑問です。投票率が低いのは国民の問題ではなく、行っても行かなくても同じという雰囲気、学校での主権者教育がないためだと思っています。

 この2本は選挙をちょっと違う切り口で見せました。

選挙を利用する

 参議院東京選挙区定数6に34人が立候補しました。畠山はすべての候補者に直接取材する姿勢で、一人一人の主張と素顔を見せていきます。300万円の供託金没収覚悟で、自分の言いたいことを訴える人たちは「変」な人が多かったです。

 「バレエ大好き党」「議席を減らす党」「沖縄の米軍基地を東京に引き取る党」等がありました。NHK党が5人も候補者をたてているのが驚きです。でも比例区得票率2%を超えて、政党助成金33千万円貰っています。

米軍基地問題の本質

 この2本の映画は、22年の沖縄県知事選挙を撮りました。米軍の辺野古新基地建設の是非が焦点であり、それに反対を表明している現職の玉城デニー知事が当選します。

 3人の候補者の主張を公平に撮りますが、選挙戦では米軍基地がどれほど市民生活を圧迫し歪めているかはわかりません。だが自公推薦の候補者を応援しているのは、建設業界であることが、演説会等ではっきり見えます。

 『シン・ちむどんどん』は、選挙とは別に沖縄の米軍基地の酷い実態を取材しました。

 そして選挙の後で2チャンネルの創設者「ひろゆき」が辺野古を訪れ、反対運動を冷笑するツィートを流し、それに27万人が「いいね」をしたことを紹介します。

 ここに沖縄の困難はあります。無意識に基地問題を「沖縄の問題」にすり替えているのです。

PERFECT DAYS

 監督がヴィム・ヴェンダース、主演が役所広司カンヌ映画祭の男優賞ですから、どんな映画をつくったのかと興味津々で見ました。

 「あんまり好きになれない」というのが率直な感想です。

 役所広司が東京の公衆便所清掃の受託している会社の作業員、平山正木を演じ、彼の平凡な日常生活を追う映画です。小さな古いアパートで独り暮らし、朝早くから作業道具を積んだ軽自動車で担当する公園の公衆トイレを回ります。

 コンビで仕事するようですが、平山はほとんどしゃべりません。受けはいいようです。作業に「かいぜん」を加え手際が良く、仕上げは完璧です。昼食はいつも決まった神社の片隅でコンビニのサンドイッチを食べます。仕事を終えて帰ってくると、銭湯に行き、地下鉄の改札前にある小さな居酒屋でホッピーと少しの肴を食べます。すぐに帰って、家で文庫本を読んで寝ます。

 決まり切った生活スタイルです。家にある植木に水をやり、持って出るものは並べています。朝はアパートの前にある自動販売機の缶コーヒーを飲むだけ。木漏れ日をフィルムカメラで撮っています。

 休日にコインランドリーでまとめて洗濯をし、古本屋で文庫を物色し、馴染みのスナックに行き一曲歌います。ママは石川さゆりでした。自分からしゃべるような友人はいないようです。

 ルーティンのようですが、同僚が退職したり、姪が家出して来たり、ママの別れた夫から恋人に間違われたり、と彼の周りがどんどん変わり、色々あります。

 平山がこれまでどんな人生を歩んで来たか、説明はありません。でも姪の母、彼の妹はある一定規模の企業の経営者のようです。2階建てのアパートに住んで、2階の二部屋で寝起きをして、そこには文庫本が並んでいます。一階は炊事場で顔を洗う以外、ほとんど使っていませんが、奥の部屋には荷物は相当あるようです。

 訳ありで謎に包まれた男の生き方を「パーフェクトデイズ」などと言うのか、私にはわかりません。物は無いようですが、開き直ったように時間を贅沢に使っています。

 でも男は何歳になっても欲があり、不安を隠しそして迷っている方がいいです。