2023年10月に見た映画

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』『あしたの少女』『旅するローマ教皇』『沈黙のレジスタンス』たった4本だけしか見ていません。色々と忙しい10月でした。でも特色ある面白い映画ばかりでした。簡単に書いていきます。

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

 米国で実際にあったひどい事件です。

 警官が、無理やり部屋に押し入って、無抵抗の年老いた黒人を殺すという、ちょっと信じられないような事件を再現ドラマのように作り上げた映画でした。

 1人暮らしの老人ケネスは保険会社と契約して、倒れた時に助けに来てもらうような装置を部屋につけていました。

 ある朝、誤ってそれを作動させてします。しかしケネスはそれに気づかず、そのまままた寝ていました。保険会社は反応がないので、警察に連絡して様子を見てもらうように手配しました。

 3人の警官が貧民街のアパートにやってきます。その前に、ケネスは「間違いだ」と保険会社に連絡しますが、それでは止まらず、保険会社は警官に直接いってくれということです。

 ケネスは元海兵隊でしたが、警官の黒人差別の酷さは知っていましたから、警官たちがドア越しに部屋に入れてくれというのを頑強に否定して「大丈夫だから帰ってくれ」と突っぱねました。

 すると警官たちは「こいつは怪しい」と思って何としても部屋に入ると決めました。そこから騒動が大きくなります。

 ケネスは保険会社に何度も「まちがい」と連絡し、また彼の子どもたちもやってきて、警官たちに帰ってくれと言います。しかし警官たちは逆に、特殊部隊を呼び寄せて、ドアを壊して押し入りました。

 そして逃げるケネスを押し倒して殺してしまいました。

 個々の警官の差別意識もありますが、恐ろしいほどの差別の歴史が積み重ねった米国の姿です。 

『あしたの少女』

 韓国映画です。舞台を日本に置き換えても十分わかる、強欲な現代資本主義社会の闇を強烈に批判する映画です。実話をもとに、明確なテーマを提示しました。

韓国には高校生が卒業する前に、就職したい会社で働く、研修のような制度があるようです。

 はっきりとは描きませんが大手の携帯電話会社のコールセンター業務を受け持つ子会社に働きに行ったようです。解約の電話をうまくはぐらかすのが仕事です。明るい女子高生にはそんなことが出来ず、色々な事件に出会い、鬱になり、ついには自殺してしまいます。

 その後、女刑事が自死だとわかっても、少女の足取りを丹念に追い、何を見聞きしてきたかまで探り始めます。そして彼女がどのように働いていたかを掴み、これは法律違反だと確信します。しかしどこもそれを取り上げようとしない韓国社会の構造を暴きました。

『旅するローマ教皇

 現在のフランチェスコ教皇を追うドキュメンタリーでした。

 201377才で教皇に就任し、9年間で3753か国というまさに世界各地を駆け巡る姿が映されました。貧困や戦禍など、さまざま困難にある人々の前に姿を見せました。

 彼の訪問によって何かが変わった、政治や経済がどうのこうのはない思いますが、自分の言葉で呼びかける姿が、多くの人々を励ましたことは間違いありません。

 日本にも来ています。写真はその時のものです。

 『ローマ法王になる日まで』を上映し、フランチェスコ法王と一緒に働いたことのある神父さんに話を聞きましたが、このような旅をする人だと思います。

『沈黙のレジスタンス』

 映画サークルの10月例会です。パントマイムの天才、マルセル・マルソーが第2次世界大戦下、ドイツに占領支配されていたフランスで多くのユダヤ人の子どもを救ったという実話に基づく映画です。

 割と単純な話ですが、「リヨンの虐殺者」といわれたナチス将校の拷問が、その残酷さをよく描いていました。

 クライマックスは子どもたちを率いて冬のアルプス、スイス国境を超えていくところです。事の真偽はわかりませんが、崖から飛び降りて助かるところは映画的でした。

 例会学習会で「スイスに行ってそれからどうなる」という増本先生の話もありました。永世中立国スイスといえども戦時下の国際関係は複雑です。

 この映画はそんなことは問わない、それはそれでいいと思いました。

西神ニュータウン9条の会HP2024年2月号

 標記のHPの紹介です。2024年になったと思ったらもう2月で、しかも11日になっています。日々何をしていたのかと思うほど早く時間が過ぎていきます。

 これも1日の更新されたのを確認してすぐに紹介しようと思ったのですが、気づいたら今日になっていました。私の感想を書きますが、以下のリンクに直接飛んでもらっていいので。

西神9条の会 (www.ne.jp)

 エッセイが9本で、川柳「ジョー句」も9句、それから今月の歌「しあわせは運べるように」、おしゃべりコーナー、ギャラリーも能登大震災募金となっています。

=能登半島地震に思う= 地震列島に原発はいらない!  島田 徹(竹の台)

 ネパールも大陸プレートの上にあるので、地震国ですが、日本は4枚のプレートがぶつかり合うところですから地震の巣の上に住んでいるみたいなものです。ですからマスメディアは、そのことを繰り返し言い続け、私たちはそれを意識して生活する習慣が必要です。

心に染みる言葉(7) ムヒカ元ウルグアイ大統領 西元善郎(竹の台)

 世界一貧しい大統領は世界一豊かな心と言葉を持っています。

まりさんのパリ通信(60)バックパック旅行記⑩  「ワンネス」  パリまり(パリ在住)

 一人旅は自分を見つめ直す旅なのかな。最近したことがない。家庭を持って以降、一人の出張はあっても旅はないですね。

ハガキ、手紙の文化をつぶさないで  山口洋司(狩場台)

 私も年賀状派です。決まり決まった年賀状でも、メールよりいいですね。郵政民営化はこのようになるのは見えていました。国鉄もそうですが、貧乏人が利用しても儲からないものは潰すか大幅値上げです。それでも日本人は民営化が好きなのですね。

幕末の神戸港跡と近代神戸   ヒストリアン(狩場台)

 開発しつくされたような港に、こんな遺跡があったのです。駅からはちょっと遠いですが、春の日差しを感じながら、様変わりしたこの辺りを歩いてみようと思います。

PFAS(ピーファス)汚染について④   脱プラサークル

 大気や水の汚染は気づいた時には被害が出ています。早くから警鐘を鳴らさないと、大企業優先の日本社会ではモノが言えなくなってしまいます。もっともっと騒いで、国や神戸市を動かしましょう。

新年早々、おしゃれな喜劇を楽しみませんか  加藤健一と佐藤B作の最高傑作  米田哲夫(竹の台)

 カトケンやB作は、上手な俳優で、テレビや映画でも楽しませてくれます。でも「おしゃれな喜劇」は私にはうまく馴染めないのです。落語の呼吸とちょっと違う感じがします。

憲法と映画(86)『モロッコ、彼女たちの朝』世界を変える一歩  つだわたる(美賀多台)


 映画を見た直後は、どう評価していいのかわからないところもありましたが、原題を考えるとこのように思いました。

撮影罪とは その2   関 通孝(西神中央法律事務所)

 よくわかります。盗撮は肖像権の問題ではなく、人権を犯しているという事です。

 

2023年9月に見た映画その2

『聖地に蜘蛛が巣を張る』『クーダ殺し屋の流儀』『離れ離れになっても』『福田村事件』残り4本です。

『聖地に蜘蛛が巣を張る』

 イランの実話に基づくサスペンス映画でした。

 

イランの聖地マシュハド(人口350万人、イラン第2の都市)で、娼婦の連続殺人事件が起きます。犯人から「街を浄化する」という犯行声明があり、一部の市民はそれを英雄視します。

 殺人犯の男、その家族も含めた、女を蔑視するイスラム社会の暗い深みを描いています。

 娼婦連続殺人事件を取材するために、女性の新聞記者がよその街からやってきます。警察にいくと、からかわれる様に扱われ、彼らはまるでやる気がないように見えます。彼女自身も社内でも差別されていました。

 彼女は自分が売春婦に扮し、囮となって犯人を突き止めようとしました。犯人に誘われてバイクに同乗します。同僚に追跡してもらいますが撒かれます。

 映画は早くから犯人を明らかにして、彼の生活と犯行動機、犯行を映していきます。女性記者と対比するようです。

 映画の焦点はなぞ解きではなく、イラクイラン戦争に従軍し、その後は肉体労働者として働く犯人像でした。家族を持つその男は、娼婦の一掃こそが神の刑事だと信じ込んでいました。ラストシーンはその男の思いは息子に受け継がれたと描きました。

 この監督はイランに失望しているとみました。 

『クーダ殺し屋の流儀』

 米国映画です。

 冷酷で腕利きの殺し屋クーダが、ちょっとかかわった、自分の娘の同じ年ごろの家出娘を救い出すために、それまで属していた組織と戦うという、ありきたりのストーリーです。

 脇役の若い男の話も、女に惚れてという、ありきたりでした。

 でもアクションが派手で面白く見てしまった。

『離れ離れになっても』

 映画サークルの例会です。イタリア映画で、高校時代から仲の良かった3人の男と1人の女の40年間のつかず離れず、愛憎を交えた人生を描きました。イタリアらしい映画でした。

 男3人は、弁護士から大企業の社長に出世した男ジュリオ、真面目に働くがいつまでも正規で雇ってもらえない教師パオロ、映画業界で働き始めるが、失業を繰り返し家族に見捨てられる男リッカルドです。女ジェンマは、最初はパオロと暮らしていましたが、いつしか力強いジュリオに乗り換えました。

 それぞれが悲喜こもごもの人生を経て、4人は再開します。ともに新年の花火を見るというラストシーンでした。

 人生万事塞翁が馬という映画でした。

『福田村事件』

 関東大震災の時に、普通の日本人に約6000人の朝鮮人が虐殺されました。大混乱の中で理不尽に殺されたのは朝鮮人だけではありません。それはなぜかということを描く映画でした。大災害の何を語り継ぐべきかを明確に示す映画です。西神ニュータウン9条の会HPに投稿としたものを再掲します。

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過去を描き、現代を照射する

 びっくりしたのは、映画の内容より、この映画を見る人が多いということです。公開当初は小さい元町映画館が一杯だと聞き、2週間ほど後にシネリーブルで見ました。この時も半分程度の入りでした。

 実際にあった陰惨な事件の映画と分かっているのに、関心が高いということで、ちょっとうれしくなりました。

 関東大震災から100年であり、自公政権小池都知事朝鮮人虐殺の事実を意図的に隠そうとしている一方で、それに反発したマスメディアがこの映画をより多く紹介したということもあったようです。

フィクションが告発する

 映画の中心は福田村の虐殺事件ですが、朝鮮人たちや社会主義者が殺されていること、日本の朝鮮支配の残酷さにも触れています。さらに村の男女の絡みあいまでも出てくるので「ちょっと盛り過ぎ」と思います。

 映画は震災前の福田村、在郷軍人会の存在の大きさ、村人の日常生活等から描きます。地元紙の新聞記者は、社会主義者朝鮮人に対するデマが広がっている、と危惧し憤慨しています。

 讃岐の行商人たちは被差別部落出身で、かなりい加減な薬を売っているとまで描きます。

 震災後の東京都下では、官憲が社会主義者を無理やり逮捕し、朝鮮人が放火や暴力行為をしているというデマを、意図的に広げ煽っていたと描きました。それを自警団と多くの日本人が信じ込んで、朝鮮人と見れば無差別に虐殺しました。

 村人が行商人たちを殺すシーンは、誇張しすぎの感じがあります。しかし当時、日本にいた朝鮮人8万人に過ぎず、その内56千人が殺されたことから、社会全体が異常であったことがわかります。

 福田村は埼玉県の東側、千葉県の西端にある、今の野田市です。彼らが朝鮮人をどれほど知っていたのか、わかりませんが、伝播してきたデマを信じ込み、人殺しまで行く心理こそが恐ろしいと思いました。

現代に問いかける

 この虐殺を目の当たりにした新聞記者は、自分が「デマをデマと書かなかったからだ」と言いました。

 この映画の焦点はここだと思いました。森監督は、これまでも現代のマスメディアが支配層に忖度して事実の報道をしないことに危惧しています。東京新聞の望月衣塑子記者を追った『i-新聞記者ドキュメント-』でもそれを描きました。

 デマを黙認し、事実を報じないマスメディアは、殺人に加担するとまで言っているようです。現在のパレスチナに通じます。

2023年5月に読んだ本

田辺聖子の人生あまから川柳/田辺聖子』『探偵は女手ひとつ/深町秋生』『文字助の話/立川談四楼』『空白の起点/笹沢左保』『22世紀を見る君たちへ―これらかを生きるための「練習問題」/平田オリザ』『日本人の笑い/暉峻康隆』6冊と『世界5月号』『前衛5月号』でした。

 2回に分けて書きます。

田辺聖子の人生あまから川柳/田辺聖子

 お聖さんの川柳愛がよくわかる本でした。しかも「人生あまから」と言ってるように、人の奥底それぞれを表現した川柳を集めていました。こういう本を読むと、その傾向の川柳が思い浮かんできました。さっそく私の川柳日誌に書き込みました。


 この本で引用されて、私が気に入った川柳を書いておきます。

・何がおかしいとライオン顔を上げ

・行水をつくづく犬に眺められ

・酔っ払い真理を一ついってのけ

・娘もうほんまのおいどして歩き

・貧乏もついに面だましいとなり

・出世せぬ男と添うた玉子酒

『探偵は女手ひとつ/深町秋生

『紅い宝石』『昏い追跡』『白い崩壊』『碧い育成』『黒い夜会』『苦い制裁』

 山形に住み働いている探偵、椎名留美を主人公にした連作短編集でした。もっと悪役が活躍するのかと思いましたが、身近な犯罪を扱っています。

 結構楽しく読みました。

 留美は元刑事で、同じ刑事だった夫と死別して、娘と二人暮らしのシングルマザーです。浮気調査などの探偵らしい仕事よりも農作業の手伝い、雪かき、デリヘルの運転手と言った便利屋の仕事が多い、と愚痴ります。

 でも刑事時代の伝手を生かして情報を取り、その時代に知り合った元番長を協力者にしています。さらに署長とも繋がっています。

『紅い宝石』は、山形らしくサクランボ泥棒。

『昏い追跡』は、万引きを見つけられた少女、なぜそんなことをしたか。

『白い崩壊』は、デリヘル嬢たちの拉致という、最も危ない話。

『碧い育成』は、麻薬の栽培。

『黒い夜会』は、ホストを罠にはめる悪人。

『苦い制裁』は、ストーカーを受けたという男はセクハラ野郎。

 どれもどこにでも居そうな小悪人たちが立ち回る話です。

『文字助の話/立川談四楼

 桂文字助立川談志の弟子(元は三升家小勝の弟子で、師匠の死後に談志門下)を弟弟子の談四楼が書きました。私は『赤めだか/立川談春』で、その名前だけは知っていました。かなり無茶苦茶な人間だなという感じがあったので、この本を読みました。

 予想通りというか、予想以上の噺家でした。

 三升家小勝の弟子になり、その師匠の没後、立川談志の弟子になり立川談平と改名し、1979年に真打昇進し桂文字助を襲名します。かなりいい名前のようです。その辺りが噺家としても、普通の社会人の範疇でもピークの感じです。

 そこから師匠の談志を「困らせた」というぐらいに、酒毒がまわり無茶苦茶の人生へと「転落」していったようです。敵味方の見境なく喧嘩を売り、借金を重ね、ついには妻子にも去られます。

 談四楼が見てもいい奥さんだったようです。さらに彼のもっとも理解者であった贔屓筋などへ喧嘩を売って独りぼっちになり、生活保護を受けた噺家になりました。

 喉頭癌で入院させられた時に、嫌がって「窓から飛び降りるぞ」と脅かして脱走したといいます。でも部屋は一階だったという落ちもありました。

 202176才で死去しています。

 この本は談四楼が文字助の話をツイッターに書き溜めたもので、そのもとは「文字助コンフィデンシャル」で、それは今でも読めます。

『空白の起点/笹沢左保

 これは笹沢左保のデビュー第5作で1961年に雑誌「宝石」で連載されています。作家2年目ですが、これで直木賞候補になっています。「推理小説でしかない小説」(いわゆる本格派)では珍しかったようです。

 確かに奇抜な謎の設定でした。

 列車の中から、崖から突き落る男を目撃した女は、その男の娘だったというのが、物語の始まりです。その男は自分に多額の保険をかけていて、娘が受取人だったことから、その列車に乗り合わせていた保険会社の調査員が、真相の究明に拘り始めます。

 かなりの偶然と無理筋のような犯罪、動機と私は思いました。若い時はともかく今は「本格派」は面白くないです。

2024年第52回たつの市梅と潮の香マラソン

 1月28日標記の大会のハーフを走ってきました。タイムは2時間16分33秒でした。

 


 ここの大会は何度も走っていますが一番悪いタイムです。天気も良く、寒さはちょっと和らいだ感じ、環境は悪くありません。

 昨年は4分台でした。11月の伊賀上野ラソンでも書きましたが、昨年の5月から約5か月間全くは知れなかったことの影響かなと、良い方に考えています。11月は22分を超えていましたからそれより早くなったと思えばいい、ということです。

 今回は走り出した時から「だめかな」と思いました。最初は6分/㎞前後で走るのは同じですが、いつもの「足ならし」の感じがなく、今日は「これが精一杯」の感じでした。それ以降もピッチは全く上がらず、どんどん抜かれていきました。

 私は、大体どこのレースでも、最初は抑えて後半に頑張るというペース配分なのです。今回は前半でピッチが上がらず、一番厳しい、岩見坂を登り降りてきて、後半の海岸沿いの道は、もっと遅くなると言う体たらくでした。

 それでも後3㎞から頑張りました。タイムは早くはならないのですが、粘り強く走って、19人抜いて5人に抜かれるという(多く歩いている)結果でした。

 前をよたよた走っている人を見れば、もう少しもう少しと気合が入ります。

 60才以上の男子で130位/約200人ですから、それだけ見たら悪くはないのです。

 11月以降、練習してきましたが、まだ体力は戻っていないし、膝も完全ではなく、しかも体重が3㎏ほど重たいのも影響しているのでしょう。

 ということで2月1回、3月2回のハーフマラソンを予定していますが、それまでに体調を整えようと思います。

 今回は残念です。歳のせいにせず捲土重来を期すことにします。

2023年4月に読んだ本その2

77冊から読む科学と不確実な社会/海部宣男』『川柳を始める人のために/時実新子』と『世界4月号』『前衛4月号』を書きます。

77冊から読む科学と不確実な社会/海部宣男

 2011年以降に、主に毎日新聞の書評欄に掲載された自然科学系の本77冊です。どれも面白そうで、読んでみたいと思いました。とりわけ全く知らない分野は興味深いです。

 海部さん自身が著名な天文学者で、しかも書評家としても評価されています。確かに本のテーマに沿った紹介はわかりやすい文章です。そして視点は科学と社会を見据えるものです。

 最初に言いましたが、どれも読みたいと思いましたが、中でも興味をひかれた、必ず読もうと思った本を上げておきます。でもこれを追求していたら推理小説などを読む暇がなくなりそうです。

『アマゾン文明の研究』

 アマゾン平原には古代文化がありました。これは初めて聞きました。まだ研究は進んでいませんが、面白そうです。(後日読みました)

イチョウ奇跡の2億年史』

 よく知っている、身近なイチョウの謎です。

耳嚢

 江戸時代に書かれたエッセイ。世間話や妖怪噺の聞き書き。(読み始まましたが、途中で挫折。ボリュームが多すぎるのと、昔の書き方で読みにくい)

『ヒトの中の魚、魚の中のヒト』

 人体進化、形成の秘密を明らかにする。

『土』

 「土壌とは微生物などの生物活動がある土を言う」という紹介がありました。土質学とは違う土です。

『隠れていた宇宙』

 宇宙の無限性と多世界宇宙を論じ切った本です。

『川柳を始める人のために/時実新子』

 もともと川柳に関心がありましたが、20224月から教室に通いだして、定期的にその関連本を読んでします。時実新子、面白い人でした。

彼女の川柳に対する姿勢がよくわかる本で、その書きぶりも、知的でさっぱりとして直情的なところもあります。かなり刺激を受けました。

 川柳には時事や人生、社会性があり、ユーモア、エスプリ、機知、穿ち、皮肉などが込められたものと思っていましたが、彼女のように人情と生活臭を率直に出すのも良いなと思いました。

 特に自分史を川柳で綴っていくのも面白いと感じます。

『世界4月号』

特集は二つで『痛みからつながる―女性と法の現在』『学校 息苦しさからの脱却』です。それらはちょっと手に負えません。

 小泉純一郎元首相のインタビュー「原発ゼロ、やらない岸田首相こそ『変人』だ」もありました。もう少し「秘密の暴露」があるのかと思いましたが、その内容は平凡でした。福島の事故までは日本の原発は「安全で安い」と思っていたが、それが全てうそだとわかった、と言っています。やはり変人です。

 『壊れる世界 第6回―戦争が変える世界/藤原帰一』を書きます。

 まだガザの虐殺が始まっていない時期の論文です。

 ウクライナ戦争が欧州だけでなく大きく世界を変えていると書きます。第二次世界大戦後に多くの戦争があったが、これは「世界戦争としての地域紛争」の一つと位置づけました。そしてその波及効果を分析しています。

 まず戦争が長期化しロシア軍の脆弱性が露呈しています。モスクワの影響力が弱まり、ユーラシア圏域の「不安定性」が増しました。

 そして戦前からあった欧州のNATOとロシア、東アジアの米中競合という、別々の二つの対立が結びつく動きが出てきたことです。ロシアの弱体化を中国が支えざるを得ない選択肢が出てくる、と指摘しています。

『前衛4月号』

『欧州左翼との新たな交流・連帯を求める旅―平和、軍拡反対、ジェンダー平等、党活動まで幅広く/緒方靖夫・小島良一、米沢博史(座談会)』3月号4月号

 2211716日にかけて欧州6か国の左翼・進歩政党7党(フランス、ベルギー、オランダ、スウェーデン、ドイツ、オーストリアと欧州左翼会派)を訪ね、その会談の模様を派遣された3人の座談会という形式で2カ月に分けて載せています。

 会談の内容よりもまず、それぞれ欧州左翼の党の経緯、動向がコンパクトにまとめられているのが良かったです。

 会談で読み取れる一番大きな課題はウクライナ戦争の対応です。いづれの党もロシアのウクライナ侵略は信じられない行為だということです。いわば「想定外」であるために、政策的な対応に苦慮している感じです。軍事同盟反対、NATO反対という政策をどうするかということです。

 軍事派遣は反対ですが、現在のウクライナ支援の対応にも、それぞれ違いがあるように思いました。

2023年9月に見た映画

『刑事マルティン・ベック』『バカ塗りの娘』『こんにちは、母さん』『聖地に蜘蛛が巣を張る』『クーダ殺し屋の流儀』『離れ離れになっても』『福田村事件』7本でした。大体このペースがいいです。映画はいろいろあります。西神ニュ-タウン9条の会HPに投稿した映画が2本あるので、長くなります。ですから2回に分けます。

『刑事マルティン・ベック』

 北欧のサスペンス映画です。元警察官が警官を狙い撃つ事件が発生して、ヘリコプターも動員して、犯人を囲みこんでの大捕物で逮捕するという映画です。

 謎があまりなく、犯人の動機は早くわかります。しかし警官が警官に復讐するという話は異常ですが、その背景にはあまりない深みがありません。

 ですから謎解きや合理的な解決ではなく、ミステリーでもなくハードボイルドです。しかしそれにしても平凡でした。

『バカ塗りの娘』

 ドキュメンタリーではないですが、そこを意識したような感じの映画でした。「バカ塗り」とは何度も漆を塗りを重ねる青森の漆器のことをいうそうです。

 津軽塗職人の父と娘の話で、すでに母も兄も頑固な父を嫌っても出て行っていて、娘は街のスーパーのアルバイトです。

 気力も希望もない生活ですが、娘が漆塗り職人を継ぐと言い出して事態は動いていきます。伝統工芸の苦労は「売れないだろな」ぐらいしかわかりません。しかし彼女の作品が高く評価される幸運もあります。唐突に兄がゲイで同性婚をする話も挿入されます。

 名人だった祖父が死にますが、それはそれだけです。

 何がテーマがよくわからない映画でした。 

『こんにちは、母さん』

 山田洋次90歳の映画です。主演の吉永小百合も実年齢に近い役で出ています。いい絵がという評価ではないのですが、西神ニュータウン9条の会HPに書きました。

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サユリ賛歌の映画

 若い時から山田洋次監督の映画は見続けてきました。『男はつらいよ』シリーズは映画館で全て見ています。神戸を舞台にした『吹けば飛ぶよな男だが』も好きですし『幸福の黄色いハンカチ』は生涯のベストスリーに挙げています。

 喜劇だけではなく『学校』シリーズや『家族』『故郷』等では市井の人々の生活や人生を描きながら鋭い社会批判が盛り込まれていました。

 国際的な評価では黒澤明監督が高いかもしれませんが、私にとっては最高の映画監督です。ぼそぼそと話す彼の講演も何度も聞いていて、映画に対する思いや、世の中や人間の見方など共感しています。

 温かい人間観察と冷静な社会批判があると思います。

 しかし最近の作品は首をかしげるものが多くなっていました。90才を越えて作ったこの映画は、どうかなと思いながら見ました。

母と息子

 大企業の人事部長を務める昭夫(大泉洋)は、久しぶりに東京の下町の実家で一人で暮らす母、福江(吉永小百合)を訪ねます。彼女は、楽しそうに近所の人たちとホームレスを支援するボランティア活動をしていました。しかも彼女と同年代の牧師に恋しているのです。

 会社では人員整理の矢面に立ち、家庭は妻と別居中で離婚の危機という昭夫は、しばらく会っていない母のもとで、心休めようと思ったでしょうが、その変わりように戸惑いました。昭夫の娘も妻の家を出てきます。

 映画の結末は、母の恋は失恋に終わり、昭夫は友人を救うために、自らが会社を辞める選択をし、妻とは離婚しました。そして実家で母と娘と一緒に暮らすという、見方によればハッピーエンドとなりました。

緩さばかり

 ものすごく緩い映画でした。昭夫の会社がどんな事業をしているのか不明で、離婚の原因もわかりにくいものです。昭夫の心情に踏み込みません。

 エリート社員の辛さと対照的な、老いてなお可愛い母の恋や、下町の人情がユーモラスに描かれる人情劇でした。

 東京大空襲の傷跡は見せますが、軍事大国に舵を切った日本の現実は見当たりません。

 息を吐き、まあいいかと思いました。