2023年10月に見た映画

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』『あしたの少女』『旅するローマ教皇』『沈黙のレジスタンス』たった4本だけしか見ていません。色々と忙しい10月でした。でも特色ある面白い映画ばかりでした。簡単に書いていきます。

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン

 米国で実際にあったひどい事件です。

 警官が、無理やり部屋に押し入って、無抵抗の年老いた黒人を殺すという、ちょっと信じられないような事件を再現ドラマのように作り上げた映画でした。

 1人暮らしの老人ケネスは保険会社と契約して、倒れた時に助けに来てもらうような装置を部屋につけていました。

 ある朝、誤ってそれを作動させてします。しかしケネスはそれに気づかず、そのまままた寝ていました。保険会社は反応がないので、警察に連絡して様子を見てもらうように手配しました。

 3人の警官が貧民街のアパートにやってきます。その前に、ケネスは「間違いだ」と保険会社に連絡しますが、それでは止まらず、保険会社は警官に直接いってくれということです。

 ケネスは元海兵隊でしたが、警官の黒人差別の酷さは知っていましたから、警官たちがドア越しに部屋に入れてくれというのを頑強に否定して「大丈夫だから帰ってくれ」と突っぱねました。

 すると警官たちは「こいつは怪しい」と思って何としても部屋に入ると決めました。そこから騒動が大きくなります。

 ケネスは保険会社に何度も「まちがい」と連絡し、また彼の子どもたちもやってきて、警官たちに帰ってくれと言います。しかし警官たちは逆に、特殊部隊を呼び寄せて、ドアを壊して押し入りました。

 そして逃げるケネスを押し倒して殺してしまいました。

 個々の警官の差別意識もありますが、恐ろしいほどの差別の歴史が積み重ねった米国の姿です。 

『あしたの少女』

 韓国映画です。舞台を日本に置き換えても十分わかる、強欲な現代資本主義社会の闇を強烈に批判する映画です。実話をもとに、明確なテーマを提示しました。

韓国には高校生が卒業する前に、就職したい会社で働く、研修のような制度があるようです。

 はっきりとは描きませんが大手の携帯電話会社のコールセンター業務を受け持つ子会社に働きに行ったようです。解約の電話をうまくはぐらかすのが仕事です。明るい女子高生にはそんなことが出来ず、色々な事件に出会い、鬱になり、ついには自殺してしまいます。

 その後、女刑事が自死だとわかっても、少女の足取りを丹念に追い、何を見聞きしてきたかまで探り始めます。そして彼女がどのように働いていたかを掴み、これは法律違反だと確信します。しかしどこもそれを取り上げようとしない韓国社会の構造を暴きました。

『旅するローマ教皇

 現在のフランチェスコ教皇を追うドキュメンタリーでした。

 201377才で教皇に就任し、9年間で3753か国というまさに世界各地を駆け巡る姿が映されました。貧困や戦禍など、さまざま困難にある人々の前に姿を見せました。

 彼の訪問によって何かが変わった、政治や経済がどうのこうのはない思いますが、自分の言葉で呼びかける姿が、多くの人々を励ましたことは間違いありません。

 日本にも来ています。写真はその時のものです。

 『ローマ法王になる日まで』を上映し、フランチェスコ法王と一緒に働いたことのある神父さんに話を聞きましたが、このような旅をする人だと思います。

『沈黙のレジスタンス』

 映画サークルの10月例会です。パントマイムの天才、マルセル・マルソーが第2次世界大戦下、ドイツに占領支配されていたフランスで多くのユダヤ人の子どもを救ったという実話に基づく映画です。

 割と単純な話ですが、「リヨンの虐殺者」といわれたナチス将校の拷問が、その残酷さをよく描いていました。

 クライマックスは子どもたちを率いて冬のアルプス、スイス国境を超えていくところです。事の真偽はわかりませんが、崖から飛び降りて助かるところは映画的でした。

 例会学習会で「スイスに行ってそれからどうなる」という増本先生の話もありました。永世中立国スイスといえども戦時下の国際関係は複雑です。

 この映画はそんなことは問わない、それはそれでいいと思いました。