2023年9月に見た映画

『刑事マルティン・ベック』『バカ塗りの娘』『こんにちは、母さん』『聖地に蜘蛛が巣を張る』『クーダ殺し屋の流儀』『離れ離れになっても』『福田村事件』7本でした。大体このペースがいいです。映画はいろいろあります。西神ニュ-タウン9条の会HPに投稿した映画が2本あるので、長くなります。ですから2回に分けます。

『刑事マルティン・ベック』

 北欧のサスペンス映画です。元警察官が警官を狙い撃つ事件が発生して、ヘリコプターも動員して、犯人を囲みこんでの大捕物で逮捕するという映画です。

 謎があまりなく、犯人の動機は早くわかります。しかし警官が警官に復讐するという話は異常ですが、その背景にはあまりない深みがありません。

 ですから謎解きや合理的な解決ではなく、ミステリーでもなくハードボイルドです。しかしそれにしても平凡でした。

『バカ塗りの娘』

 ドキュメンタリーではないですが、そこを意識したような感じの映画でした。「バカ塗り」とは何度も漆を塗りを重ねる青森の漆器のことをいうそうです。

 津軽塗職人の父と娘の話で、すでに母も兄も頑固な父を嫌っても出て行っていて、娘は街のスーパーのアルバイトです。

 気力も希望もない生活ですが、娘が漆塗り職人を継ぐと言い出して事態は動いていきます。伝統工芸の苦労は「売れないだろな」ぐらいしかわかりません。しかし彼女の作品が高く評価される幸運もあります。唐突に兄がゲイで同性婚をする話も挿入されます。

 名人だった祖父が死にますが、それはそれだけです。

 何がテーマがよくわからない映画でした。 

『こんにちは、母さん』

 山田洋次90歳の映画です。主演の吉永小百合も実年齢に近い役で出ています。いい絵がという評価ではないのですが、西神ニュータウン9条の会HPに書きました。

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サユリ賛歌の映画

 若い時から山田洋次監督の映画は見続けてきました。『男はつらいよ』シリーズは映画館で全て見ています。神戸を舞台にした『吹けば飛ぶよな男だが』も好きですし『幸福の黄色いハンカチ』は生涯のベストスリーに挙げています。

 喜劇だけではなく『学校』シリーズや『家族』『故郷』等では市井の人々の生活や人生を描きながら鋭い社会批判が盛り込まれていました。

 国際的な評価では黒澤明監督が高いかもしれませんが、私にとっては最高の映画監督です。ぼそぼそと話す彼の講演も何度も聞いていて、映画に対する思いや、世の中や人間の見方など共感しています。

 温かい人間観察と冷静な社会批判があると思います。

 しかし最近の作品は首をかしげるものが多くなっていました。90才を越えて作ったこの映画は、どうかなと思いながら見ました。

母と息子

 大企業の人事部長を務める昭夫(大泉洋)は、久しぶりに東京の下町の実家で一人で暮らす母、福江(吉永小百合)を訪ねます。彼女は、楽しそうに近所の人たちとホームレスを支援するボランティア活動をしていました。しかも彼女と同年代の牧師に恋しているのです。

 会社では人員整理の矢面に立ち、家庭は妻と別居中で離婚の危機という昭夫は、しばらく会っていない母のもとで、心休めようと思ったでしょうが、その変わりように戸惑いました。昭夫の娘も妻の家を出てきます。

 映画の結末は、母の恋は失恋に終わり、昭夫は友人を救うために、自らが会社を辞める選択をし、妻とは離婚しました。そして実家で母と娘と一緒に暮らすという、見方によればハッピーエンドとなりました。

緩さばかり

 ものすごく緩い映画でした。昭夫の会社がどんな事業をしているのか不明で、離婚の原因もわかりにくいものです。昭夫の心情に踏み込みません。

 エリート社員の辛さと対照的な、老いてなお可愛い母の恋や、下町の人情がユーモラスに描かれる人情劇でした。

 東京大空襲の傷跡は見せますが、軍事大国に舵を切った日本の現実は見当たりません。

 息を吐き、まあいいかと思いました。