2023年1月に見た映画その2

1月の残り『暴力脱獄』『警官の血』を書きます。

『暴力脱獄』

 ポール・ニューマン主演の痛快な悪漢映画でした。1967アメリカン・ニューシネマと呼ばれるものの一つです。

 酔っぱらって駐車メーターを壊したルーク(ポ-ル・ニュ-マン)は刑務所に入れらます。彼は徹底した反骨精神の持ち主で、精神的にも肉体的にもタフでした。

 刑務所のボスに逆らい、彼とボクシングをしてコテンコテンに殴られながらもギブアップしません。ゆで卵50個食べるという賭けにも挑戦して、成功します。

 「変わり者」から、仲間は敬意の目で見るようになります。

 次は刑務所への挑戦です。軽い刑なのに、彼は脱獄を繰り返し、その度に捕まって、懲罰房に入れられる、それを繰り返します。

 所長の怒りを買って、過酷な労働と懲罰房など徹底的にいじめられます。両足に二重の鎖をつけられて、絶対に逃げられないようにされました。

 ルークはそれに屈服したように看守たちに媚びを売ります。命令に従順となり、囚人たちからも失望の声がでます。

 みんな見事に騙されました。ルークはまたも脱獄します。しかし今度は捕まえられるのではなく、射殺という形で映画も幕を下ろしました。

 ルークの行動は、映画の中では、まるで無意味な抵抗のようですが、それをベトナム戦争の時代を背景として、社会的な抵抗と見ると、また違う意味が持つ、そんな映画でした。 

『警官の血』

 私の贔屓の佐々木譲の原作を韓国がつくりました。

 それなりに面白いのですが、韓国と日本では戦後の歴史も警察組織の事情も異なるので、原作とは違う主題になったと思いました。でもインタビュー記事を読むと原作者は、満足しています。

 原作は祖父、父、息子という3代にわたる警官の物語でした。昭和史を描くような大河小説です。映画はそこから「息子」の主題を取り出して描くものでした。


 警官殺害事件の裏で糸を引く人物として浮上した、広域捜査隊のエース刑事パク・ガンユン(チョ・ジウン)に対し、監察から密命を受け、彼の班の一員に送り込まれて、内偵調査するのは、殉職した警官の父を持つ新人刑事チェ・ミンジェ(チェ・ウシク)です。

 2人は新種の麻薬捜査をするも、捜査費が足りず、ガンユンは遂に警官として越えてはならない一線を越えてしまいます。浮かび上がってきたのは警察内部にある非合法捜査を支援する闇の組織でした。

 どう対応したらいいのか、警察の「正義」とは何か、ミンジェは戸惑います。

 市民、国民の命と暮らしを守る民主警察という物差しは、日本と韓国では同じか違うのか、私にはわかりません。

 しかし戦後の韓国は長く軍事独裁政権であり、検察部門が日本に比べて大きな権限を持っています。そして刑事警察よりも公安警察の比重が高くありました。それゆえに警察権力が市民生活を弾圧する要素は韓国の方が強いかったと思います。

 この映画を見る限り、それは変わってきていると思いました。