2020年11月に見た映画

『ステップ』『ひとよ』『ストレイ・ドッグ』『海底47ⅿ古代マヤの死の迷宮』『サーホ』『82年生まれ、キム・ジヨン』『テルアビブ・オン・ファイア』『プリズン・エスケープ』『滑走路』『ホモ・サピエンスの涙』10本でした。今月は例会の『テルアビブ・オン・ファイア』以外に、これと言った映画がなくて、だらだらとして説明になってしまいました。

『ステップ』

 原作が重松清ですから見に行きました。でも平凡な映画でした。

 若くして妻が死に、残された2才の女の子を男手一つで育てる男の映画でした。彼女が高校生になる時期に男にも好きな女が現れて、娘と色々ありながら幸せをつかみました。出てくる人間(保育士、妻の両親、会社の上司、部下等)がみんな優等生で面白みに欠けます。何よりも主人公の男が品行方正です。

『ひとよ』

 この2本はパルシネマで見たのですが、こちらはもう少し複雑な家族を描きました。暴力的な夫から子どもを守るために夫を殺す女です。自首して刑務所に入り15年後に家に帰ってきます。残された子ども、もうみんな大人ですが、彼らの複雑な受け止め方を映画にしました。原作は芝居(劇団KAKUTA、桑原裕子)として書かれたものです。

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 殺人者の子ども、として世間の批判を受けてきた子どもをたちは、心に傷を負って生きてきて、それぞれに母親に対する受け止め方が違う、そこまではわかります。

 長男は会社員、雑誌記者となった次男は作家になりたいために、母親の殺人事件をネタに暴露記事に仕立てていました。長女は美容師にならずスナック勤務。父がつくったタクシー会社は子どもを継がず、母の甥が経営している。

 子どもを守ることはこれしかないと信じた母、稲村こはる(田中裕子)は強い女でした。それに引き換えて子どもは弱かった、と感じました。

父の暴力も子どもによって違いがあり次男は「殺さなくても、我慢すればよかった」と言いました。

   「人殺しは出ていけ」みたいなビラが貼られ、地域社会は受け入れていなことを示唆しますが、何か違和感がありました。一晩で貼るには大人数がいりますし、タクシー会社は15年も持っているからです。

白石和彌監督の新しい家族の映画という評価がありますが、これまで見た『麻雀放浪記2020』『彼女がその名を知らない鳥たち』『日本で一番悪い奴ら』と同様、よくわからない映画でした。

『ストレイ・ドッグ』

 ニコール・キッドマンがこれまでと違って、堕落したような薄汚い女刑事を演じています。でもそんな、堕落するような設定ではないように、私は見ました。原題は「Destroyer」ですから「破壊者」。邦題は「野良犬」という意味です。

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 17年前に銀行強盗団に潜入捜査を失敗して、相棒を死なせることになります。その相棒を彼女は愛し、子どもも宿していました。心に大きな傷を負います。

しかしその後、子どもを産み、別の男と結婚し離婚して、子どもとうまくいっていないという人生でした。アルコールにおぼれている感じです。それが心の傷のためなのかもしれませんが、それではあまりに弱い刑事です。

映画は再び帰ってきた強盗団のボスと対決するのですから、ちょっとちぐはぐです。

刑事はどのように生きるのか、失敗と言っても色々あります。その種類、あるいは周囲の人物によって立ち直り方も違うと思います。愛する人を失ったのは大きな痛手ですが、その後17年も刑事を続け、復讐も片隅にあるなら、もう少し違う人生でしょう。納得しがたい人物設定でした。

 しかもラスト、ボスを殺しますが、それが冒頭のシーンだったと、過去と現在が錯綜する撮り方をして、思わせぶりだと、思いました。

『海底47ⅿ古代マヤの死の迷宮』

 メキシコの洞窟、海水が入り込み、水に沈んだ遺跡の洞窟へ潜る4人も娘。そこは光の届かない闇の世界で、わずかな生き物は目が退化しています。

 突然地震が起きて帰ることが出来なくなってしまいます。その時、盲目のホオジロサメがいることがわかりました。4人は懸命にサメを避けつつ出口を求めて洞窟をさまよいます。空気も残り少なくなってきた、と言うハラハラドキドキの映画でした。

『サーホ』

 インド映画、よくわからないが3時間もある大作。インドの闇社会の黒幕の内部の暗闘、その息子の巻き返し。そして警察も絡んできた戦闘、暴力ですが、よくわかりませんでした。

82年生まれ、キム・ジヨン

 いい映画だろうと思いますが、私にはわからない映画でした。

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韓国の中流家庭の平凡な主婦キム・ジヨンは、いつの間にか心の中に別人格を持つようになっていました。なぜそのようになったのか、様々なプレッシャー、心の葛藤が彼女を追いこんだということですが、それがわかりません。

韓国の女性の置かれている状況をうまくとらえて描いているようで、原作も映画もヒットています。

 彼女の夫は優しいし、周囲の人間も普通です。会社では能力に合った活躍の場を与えられなかったかもしれませんが、結婚して子供も出来て、家に入ります。そんな人は、韓国では当たり前だと、映画も描いています。

義母との関係がしんどいのかも知れませんが、日本でもよくあることです。

いわば普通の韓国女性の悩みを描いているのかもしれません。彼女の異変に気づいた夫は、彼女のプレッシャーを与えないように気を使います。この映画では男もやさしいのです。だから「いいではないか」ということではない、という主張を感じました。

『テルアビブ・オン・ファイア』

 パレスチナの実情を喜劇に絡めて描きました。何も知らずに見ても、それなりに面白いのかもしれませんが、パレスチナの実情を知れば、なぜこんな映画を作ったのか、いろいろと考えてしまいます。どこかできちんとした感想を書きます。

『プリズン・エスケープ』

アパルトヘイト下にあった南アフリカの刑務所、黒人解放運動にかかわった白人が収容されています。そこから脱走した実話に基づく映画でした。

彼らは、牢獄に幾重もある扉を突破するために、何種類もの鍵の合鍵を木でつくります。看守が持っている鍵を記憶して、木を削ります。

看守に見つからないように鍵の効果を確かめたり、逃走経路を確認したりします。全編ハラハラドキドキの映画ですが、それだけでした。

『滑走路』

 32才で自死した萩原慎太郎の歌集をもとにした映画だそうです。彼の自伝ではありません。

 中学生時代にいじめにあっていた男二人のその後、そしてその時に、彼らと少し絡む女性のその後、という3人の平行した人生を描く、なんとも言えない映画です。

一人はいじめのトラウマで高校、大学ともうまく入学できず、非正規雇用の労働者となり、ついには自死します。

もう一人は猛勉強で国家公務員のキャリアとして厚生労働省で働き、非正規労働者問題を担当します。仕事で自死した男の実像


を探っていて、それが同級生で、自分がいじめにあっていた時に救ってくれた友で、その友がいじめに対象になったという関係でした。

そして、3人目は中学の時に同級で、その後転校していった女学生、彼女は切り絵作家として成功しますが、夫とはうまくいかず離婚します。

その3人が出てきますが、絡み合っているわけでもありません。いじめ、非正規をテーマにしている、と宣伝されていたので見ましたが、よくわからない映画です。 

ホモ・サピエンスの涙』

 ちょっとわかりにくい映画でした。細切れのシーンで関連性がないので、どんな映像であったかも思い出せません。

 チラシにある恋人同士が抱き合って空中を飛んでいるシーンだけが残っていますが、彼らがどうしてそこにいるのかわかりません。