『ダーク・ウォーターズ-巨大企業が恐れた男』『偶然と想像』『99.9 刑事専門弁護士』『swallow/スワロウ』『天使の涙』『大コメ騒動』『ライダーズ・オブ・ジャスティス』『ボストン市庁舎』8本です。よく見ました。とりあえず3本を書きます。
『ダーク・ウォーターズ』
実話に基づく映画です。米国の世界的な多国籍化学薬品大企業デュポン社が引き起こした環境汚染と闘った弁護士の物語です。20年もの年月をかけて勝利を勝ち取りました。

しかし大企業と闘うには、ものすごいエネルギーが必要であると描かれています。
1998年オハイオ州シンシナティにある大手弁護士事務所に勤めるロブのもとに、田舎の祖母の知り合いだという農場経営の粗野な男テナントが訪ねてきます。
テナントは、自分の農場の牛の様子がおかしい、次々に死んでいく、隣に立つ工場の廃液のためだから、訴えてくれと頼みます。
ロブは本来、企業側に立つ弁護士で、いったんは断りますが、テナントの農場があるウェストバージニア州を訪ねました。ジョン・デンバーの「カントリー・ロード」が流れます。
荒廃した川や農場の状況を目の当たりにしたロブは、知り合いのデュポン社顧問弁護士に資料を要求しました。
膨大な資料が届き、デュポン社が垂れ流す汚染物質もだんだん明らかになってきます。しかもその危険性をデュポン社も知っていたのです。

莫大な利益を生むフライパンに使われているテフロンの危険性が暴かれました。
勝てるかどうかわからない、しかも膨大な労力を必要とし、報酬も期待できない仕事を引き受けて頑張りとおすのは、並大抵ではありません。しかもロブはもっと楽して高い報酬を得る仕事を知っているのです。弁護士魂かなと思いました。
おもわず大手サラ金の弁護士であった大阪の二人、政治家となって弱い者いじめの好きな橋本、吉村と比べてしまいました。
『偶然と想像』
濱口竜介監督の短編オムニバス映画。『魔法(よりもっと不確か)』『扉は開けたままで』『もう一度』です。国内でも国際的にも評価が高い監督ですが、私はちょっと「合わないな」と思いました。
三つとも、私の好きな奇妙な味の映画なのですが、素直に面白かったという評価ができないのです。その一つの理由はセリフが多く、映像で語る映画ではありません。もう一つは描かれる人間像に惹きつけられない、魅力を感じないのです。

『魔法(よりもっと不確か)』は、別れた男女の心残りが奇妙な関係で表現されました。親友が、別れた男と付き合い始めたと聞いた女が、その男に会いに行きます。

男の事務所の中で、二人のこれまでの行き違いなどが、ウィットにとんだセリフでやり取りされます。どちらも頭がよくて、男は経営者で、女性社員の受けもよいようです。
女からちょっかいを出しましたが、それでよりを戻すのか、親友との関係を見守るのか、踏ん切りをつけないまま、映画は二通りのラストシーンを作りました。
『扉を開けたままで』は、主婦が自ら仕掛けたハニートラップに嵌って離婚まで行ってしまう、謎多き結末です。

彼女は大学生となって学びながら、若い同級生と不倫をしています。その男にそそのかされて、芥川賞を受賞した指導教授にハニートラップを仕掛けます。その小説の官能場面を朗読して、その気にさせようというものです。
しかし教授は教官室の扉を閉めず、それに引っ掛かりませんでした。ところが、その朗読の録音を教授がメールで送ってくれといいます。
そのメールを学内の違う人に送ってしまいました。その結果、教授は離職し彼女は離婚しました。
しばらくして彼女と不倫男が通勤バスで再会するも気まずく別れます。
『もう一度』は、高校時代の同窓会のために仙台に帰ってきたキャリアウーマンが、帰る途中の仙台駅前で、その同窓会を欠席した親友と再会して、彼女の家に行ってしばしの団欒を楽しみます。
しかし、途中から二人とも人違いしていることに気づいて、大笑い、で終わり、とならずに、お互いに気に入って、改めて友達にあるという話です。

三つとも「そんなことあるはずがない」と思うけれども「あったら面白い」話です。人間の深部にふれるような内容があるわけではなく「なるほどねえ」で終わります。
出世作である『ハッピー・アワー三部作』も見ましたが、そこで描かれる主人公となる数人の女性像もに同じような感想を持ちました。共感共鳴しなくてもいいのですが、もう少し私が「魅力的」だと感じる登場人物がいればいいのですが、そこが合いません。
でも、もう少し見ていこうと思います。
『99.9 刑事専門弁護士』
テレビドラマの映画化です。
テレビでは珍しく最高裁事務総局が出てきました。そこが、憲法の定める裁判官の独立をゆがめ、支配しているという瀬木比呂志さんの小説を読んでいたから、批判的に描いていたので「これは」と思いました。そして映画ではどこまで行くか、と思って、期待してみました。

しかしがっかりです。「名張毒ぶどう酒事件」をモチーフにしていますから、えん罪事件を生み出す、検察や裁判所という裁く側の問題を描くのかと思いましたが、そうではありません。そして冤罪の怖さも描き足りないと思いました。
犯罪が起きた時に再現を作り出して、そこから捜査側の矛盾をあぶりだしていくという、割とオーソドックスが方法です。しかし警察や検察が、被告の不利になるような証拠は出さない、とか裁判所の検察びいきなどを描くのを避けていました。
その点が、娯楽作品だからやむを得ないとしても、テレビドラマよりもつまらなくしています。