2024年5月に見た映画

『ミセス・クルナスVSジョージ・ブッシュ』『ほかげ』『せかいのきく』『湖の女たち』『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』『無名』『正義の行方』

 目標の月7本をやっと達成できました。でもこれはという映画はなかなか出会えません。やはり市民映画劇場はいい映画を上映すると自画自賛してしまいました。

 『ほかげ』『せかいのきく』はキネマ旬報で高い評価を得ていましたので期待しながらパルシネマ2本立てを見に行きましたが、全くダメでした。

 2回に分けて書きます。

『ミセス・クルナスVSジョージ・ブッシュ

 実話に基づく映画です。本来は深刻なテーマですが、コメディタッチに仕上げています。その点では見やすい映画でした。

 2001911日の米国同時多発テロのあと、ドイツのブレーメンで暮らすトルコ移民クルナス家の息子が、パキスタンに旅行に出かけて、テロ組織の一員として米軍に捕まって、グアンタナモ収容所に送られてしまいます。

 息子はそんなことは無関係、えん罪です。母が必死で駆け回り、ドイツの弁護士の協力を得て、米国ブッシュ大統領を米国の裁判所に訴えることまでやって、2006年にやっと息子は帰って来ました。

 全く無罪です。しかし映画は米国は補償も謝罪もしていないと流しました。

 この映画では同じようなムスリムであるというだけで米軍に逮捕監禁されている人がたくさんいると描きました。

 こんな国が法治国家、民主国家と言えるものだとよく思います。

 母親を太っちょにして、言動をコミカルにしています。ドイツ・フランス資本ですが米国の国家犯罪をこんな風に作るのかと思いました。

 以下に書く邦画とは全く違います。

『ほかげ』

 脚本、監督が塚本晋也であり、趣里が主演でしかも、キネマ旬報でも評価が高いので期待して見に行きました。

 敗戦直後の日本が舞台設定です。

 戦争未亡人になった女が居酒屋らしき店を開き、売春で生活を立てていて、そこに物品を差し入れる男、出入りする戦争孤児、何もやることのない元教師の復員兵、戦争時の上官で今は豊かで平和で暮らしている男を殺す男等が出てきます。

 でも画面が暗いし、彼ら、登場人物以外の人々の生活や思いがあまり描かれません。その辺りから「なんだかなあ」と思ってしまいました。

 監督の思いばかりが先走った映画のように思います。

『せかいのきく』

 これも高い評価ですが、私はあまり面白いと思いませんでした。

 江戸時代の江戸市中、糞尿を買い取り近隣の百姓家に売りに行く、汚わい屋の若者たちを主人公にした青春映画です。

 彼らと長屋で逼塞している浪人者の娘おきくを描いているのですが、どうも、私は映画全体が違うという思いを持ちました。 

 坂本順治、脚本監督ですから、おそらく私が間違っているのかもしれませんが、こういう仕事、商売は、いわゆるエタ非人たちの独占であり、よそからは介入できないと思っています。さらにこの仕事に携わる人は差別されているが、社会的に必要です。

 ですから値段の交渉はあっても、高圧的暴力的な扱いはないのでは、と思っています。

 なぜなら彼らが来なくなれば、江戸での生活が出来ないからです。

 そんなことを考えながら見ていると面白くありませんでした。

 おきくの黒木華など魅力的ですが、そこまで見ることもできませんでした。

『湖の女たち』

 吉田修一の原作で、ミステリーというよりもちょっと違う要素を強く出した映画でした。


 湖のほとりに立つ老人介護施設で、100才の老人が人工呼吸器を止められて殺されました。警察はその容疑者として、その時に宿直していた介護士たちを取調べます。

 それとは別に、老人が20年前に50人もの死者を出しながらうやむやになった昔の薬害事件の関係者であったことから、雑誌記者が追っていきます。

 担当刑事もそれに関わっていたことも明らかになります。

 普通の刑事ものと違って、物証を探す科学捜査もなければ、殺人の動機探しなどもあまりありません。むしろ刑事と被疑者の「歪んだ」関係、性愛を描くことに力点が置かれていました。

 しかし事件は意外な展開を見せるという話です。そこに731部隊を見せるなど手の込んだ演出もありますが、研究者や家族の系譜とかに関係なく、優生学が世代を超えて現代にも蘇る、というとんでもない終わり方でした。

 意外なミステリーとして面白いのかもしれませんが、映画にするときはもっとすっきりしたほうがいいと思いました。