今年の映画

 今年に入って、休暇の消化という面もありましたが、映画をたくさん見ました。数えてみると、4月例会の『ストックホルムでワルツを』を入れて30本でした。
 印象に残っているのは『ベテラン』と『ボーダレス、ぼくの船の国境線』です。
 『ベテラン』は韓国映画で、韓国では2015年で一番のヒット映画、1300万人が見たといいます。

 ストーリーはきわめて簡単で、大財閥の御曹司が犯した殺人をベテラン刑事が執拗に追い続けると言うものです。
 韓国は財閥支配が非常に強い国で、その横暴に対して、警察もマスコミも手が出せない、いわばタブーに挑戦する映画に韓国民衆は拍手を贈った、というものでしょう。
 アクションと謎解きもなかなか面白いし、財閥側の人間関係もひねっていました。
 『ボーダレス ぼくの船の国境線』はイラン映画ですが、悲惨な戦争の真っ只中のファンタジー、というべき映画です。


 国境沿いの川に討ち捨てられた船を住まいに一人のペルシャ人少年が生きています。
 そこへアラブ人の少女がやってきて、そして赤ん坊も連れてきます。二人は最初対立しますが、言葉も通じない中なのに、少しずつ仲良くなっていきます。
 そこへ脱走した米兵がやってきます。彼も言葉は通じません。
 対立する国の3人の人間ですが、実はみんな戦争の被害者であることがわかりあい、心が通じ合います。
 しかしラストは悲しい現実を暗示して終わります。
 中近東のいつ果てるとも知れない戦争を知っていますから、この映画では一切戦争シーンはなく血も流れないのですが、周囲から聞こえてくる機関銃の音だけで、その恐ろしさを想像します。
 登場人物に希望が託される映画でした。