市民映画劇場5月例会『カティンの森』

 すごい映画でした。アンジェイ・ワイダ監督の執念を感じました。そして祖国ポーランドに対する深い愛情、それに対する責任、映画監督としての仕事、それらが結実した映画だといっていいと思います。


 ワイダ監督自身が言っているように「カティンの森」事件は過去の出来事であり、この映画の主人公は、残された家族です。この虐殺はスターリンが「指導」するソビエトの犯罪であることは明らかになっています。ですから、その経緯を明らかにすることだけが、ワイダ監督がこの映画を作った目的ではありません。この映画は現代に生きる人々に強いメッセージを持って作られた、と私は思います。
 真実を隠すことは不幸を生む。それが国家であれば、国民全体を不幸にする。しかも、その国は国際関係でも歴史的にも、あらゆる面でその汚名をかぶることになる。それを再び拭い去ることができるのは、その子孫である。というようなことを感じます。
 「カティンの森」事件は戦争下に起きた非常に残虐な事件です。しかし残酷さにおいて同様、あるいはそれ以上のものをわれわれは知っています。最近の例会では『花はどこへいった』がベトナム戦争の姿を明らかにしています。おそらくイラク戦争も同じようなことがあったと思います。
 映画『カティンの森』は、戦争の残酷さだけではなく、人間の残酷さを告発しているといっていいと思います。戦争直後の反政府、反ソビエト活動に対する弾圧が映画では描かれますが、映画で言われる「自由ポーランドなどない」のとおり、その後のポーランドに対する批判があります。ポーランド人の苦しみを、人類史的に普遍化したように思います。

 ラストの虐殺シーンは、生と死、殺すものと殺されるものがいることを見るものの意識にとどめるため、と思いました。
 映画サークルの参加者は、前月よりも増やした。がまだ少なすぎる。この力作に助けられたが、基礎体力が不足している。もう100人の来ていただきたい。