『英国王のスピーチ』

 3月3日シネリーブルの第1回目に見ました。米国アカデミー賞を取ったから結構一杯でした。ですが米国の「権威」ある賞で、アメリカの実態を批判しない映画賞ですから、それに相応しい映画です。
 色々と考える映画ですが、昔フランスの俳優がレストランのメニューを読み上げて、聴く人々に感動を与えたという話を思い起こしました。同時にそれと相反しますが、吃音の支部長の話に感動したことを思い出しました。
http://kingsspeech.gaga.ne.jp/
 第二次世界大戦の前の時代です。その頃『麦の穂をゆらす風』であったようにアイルランドでは独立運動を戦う人々が、英国王の名の下で殺され拷問を受けていたし、アジアやアフリカの植民地でも限りなく人々が搾取され殺されています。私はそのことを思い起こさずに入られません。だからこの時代の英国王を賛美する映画には、それがどんなに感動的に上手に作られていても、支持できません。
 ラジオのディスクジョッキーが、ラストの演説に感動した、といっていました。今時のアナウンサーですから、仕方がないです。
 あの原稿はイギリス官僚が書いていて、しゃべった英国王は吃音を乗り越えるから、映画的には感動的です。しかし、これは戦争に向かって国民を鼓舞するものですから、せめて「悲しいです」といってほしいですね。
 それともまさか、しゃべっている内容はどうでもいいから、うまくしゃべるのが仕事であると思っているのでしょうか。模しそうだとしたら、あの『スペシャリスト』と同じではないかと思います。
 イギリス映画はかなり率直にイギリス王家を描きます。1996年の『英国万歳』では、王家の遺伝子は精神病の系譜だと描いています。この映画でも王家の内幕を描きます。ただそれがみんな魅力的な人間に描かれるのです。
 私は反発を覚えますが、日本のマスコミも攻めてこの程度には天皇家を報道してほしいものです。