『プロミスト・ランド』

4月17,18日の4月例会は『プロミストランド』神戸初公開でした。なかなか見事な、真向から現代の問題を描いた映画です。
企画、脚本、主演を務めたマット・デイモンの心意気が伝わってきます。

シェールガス批判
CO2の排出が少なく、天然ガスの5倍以上の埋蔵量があるといわれるシェールガス、石油にかわる21世紀のエネルギーと期待されています。
今後それを活用しようと言う、世界を支配しているだろう米国の巨大資本に対して、この映画は、人間の英知から先制的に警告を発した、と思います。
だから面白くて分かりやすい、しかもハリウッドの世界的なスターが出ているのに、大手が配給せず、神戸も映画サークルが初公開になりました。
映画のストーリー等は映画サークルのHPを見てください。ここではポイントを絞って、私の感想を言います。
http://www.kobe-eisa.com/
映画のネタバレになりますから、どんでん返しが楽しみな人は以下を読まないでください。
例会学習会で田結庄先生に、シェールガス採掘の問題点を詳しく教えてもらいましたが、詳細については企業秘密ではっきりしていない、という話でした。
シェールガス採掘時の土壌、地下水の汚染は相当の酷いものです。すでにニューヨーク州は採掘を禁止しています。
でも映画はその辺りは若干はぐらかします。それはおそらくこの映画が企画、製作されて時点では、公害の因果関係は、まだまだ未確定な部分が多いということでしょう。
しかしこの映画でもはっきりと描かれますが、シェールガスは、ものすごい利益を生むということです。そしてその利益のわずかな部分を土地の所有者に採掘料、補償金として払うだけで、貧しい地方の住民、農家は飛びついてくる、そのあとは国土の荒廃が待っている、そういう図式です。
マット・デイモンたちはそれに警告を発したのです。
しかも利益を上げるために大企業はあらゆる「手」を使う、と見事に映画的な面白さを出しました。
日本と同じ構造
米国の地方も貧しくて、そこで生活することは大変です。広大な農地を持つ農家であっても食べていくだけで精一杯、子どもを大学にやるゆとりもない、と映画は言います。
マット・デイモン演じる大企業の社員は、シェールガスの補償金を払うことで、その田舎を救えると信じて働いています。
ある農夫はいいました。「そんなに良いものなら、大都市でも掘れば良いじゃないか、そうしないのはなぜだ」
この映画を見た日本人は、きっと原発を連想すると思います。「原発村」と言う言葉がありますが、米国と日本は似ています。
地方の利益誘導は、差別意識に基づいて「何もない田舎」を狙ってくるのです。それは沖縄の基地問題とよく似ていると、私は思います。
権力の詐術
住民をだます手口は単純ですが巧妙です。
ある人に小さな間違いがあれば、その人の全てを否定しがちです。その心理を利用して、一つのうそ、あるいは間違いをわざと作り出すことで、本質的な真実を隠してしまいます。
あるいは、沖縄返還の密約を暴露した西山事件で、政府は見事な問題のすり替えをしました。
この映画は、そんな手口を紹介します。
原発公聴会で、電力会社が「やらせ」をしたという事件がありました。それなどかわいいものです。この映画は住民の世論誘導のためには、90億ドルの大企業はこんな手を使うと、もっとどぎつい「手口」を紹介してくれます。