3月24日に書いて以降に見た映画をあげておきます。今月はなかなか良い映画が多い月でした。
3月『アルマジロ』『フライト』『偽りなき者』
4月『ワーカーズ』『ザ・ウォーター・ウォー』『キリマンジャロの雪』『よりよき人生』『故郷よ』
『アルマジロ』『フライト』『偽りなき者』
『アルマジロ』はアフガニスタンにNATO軍として「平和維持活動」に従軍したデンマーク軍隊のドキュメンタリーです。もちろん許可を得ての撮影で、本当に間近で一人ひとりの若者を撮っています。
彼らの任務は最前線にある村のパトロールですが、戦闘が1回あります。作り物ではないので、派手ではありませんが迫力はあります。手榴弾を雄放り込まれてぼろぼろになったタリバン兵士の死体(はっきりとは見せませんが)に、戦争の恐怖を感じました。
その戦闘の後の「反省会」で、表彰があったり、家族への秘密漏洩があったりと色々と出てきます。軍隊の内部事情も映し出します。
最後に、若い兵士たちの「その後」が出ます。彼らは恐怖を感じたと思いますが、再び戦場に赴いた人が数人いたことに、驚くと同時に人間性というものを感じました。
このような軍隊の内部、戦闘をリアルに撮って映画として公開できるデンマークは、すごい国だと思います。自治の意識が高いのでしょう。そんな国民性でも戦争を否定できないという現実を感じます。ほとんど自分たちの生活に関係ない、デンマークの安全保障とも離れているアフガニスタンの戦場に、死ぬ危険性があるにもかかわらず、わが子を送り込むことを「国民の義務」として、現在のデンマーク国民は承認しているのです。
『偽りなき者』もデンマークです。これは、幼い少女クララの嘘によって町の人の大多数から変質者に見られ落としこめられた男と、彼の周囲の人々の物語です。かなり厳しく人間を見ています。
友人の子どものちょっとした嘘によってルーカスは、少女に性的ないたずらをした変質者にされます。その「噂」は瞬く間に広がり、彼は職場を首になり、友人から殴られ、商店から締め出され、さらに愛犬が殺されます。町中が敵になった状態です。
彼は精神的にも経済的にも追い詰められていきますが、彼は気も狂わんばかりの状況の中でも、街を出ることもなく一歩も引きません。
彼の潔白を信じるものは少ないですが、います。その「噂」がまったく合理的ではないということと、彼を信じる息子の存在も心強いものがあります。彼はそれを頼りに、ひたすら毅然とした姿勢を崩しません。
そして噂も消えた頃に、息子の「成人」を祝うパーティがあり、近しい友人(クララの父も)が集います。そこで慣習に従って鹿狩りがあり、その時に誰かに狙われたようにルーカスを銃弾がかすめます。
そういう人間がいるという終わり方です。
人は何をどのように信じるのか、あるいは信じないのか。人間関係の濃淡だけではない、人間性の要素を突いています。
『フライト』はデンゼル・ワシントンの好演で、引き締まった映画でした。でもアル中の飛行士なんてシャレになりませんが、本当にいるのかな、と思います。なにしろ規制緩和ですから、飛行機に乗るのも自己責任です。
『ワーカーズ』『ザ・ウォーター・ウォー』『キリマンジャロの雪』『よりよき人生』『故郷よ』
『ワーカーズ』は労働者生活協同組合が製作した、働くことの意味を明らかにするドキュメンタリー映画です。主役は労協に働く人々ですが、同時に彼らの労働の対象となる地域であり、そこで生きる人々との協同が、生きること生活することであると追求する映画です。
地域のコミュニティをつなぐ仕事、学童保育、介護など、身近で不可欠な仕事を担う人々ですが、それはどういう人なのか、比較的うまく言っている事例を取り上げていますが、その裏にある苦労も垣間見えます。
一つだけ例を挙げると、運動の指導員をしている元高校体育教師です。彼の挫折と再生は、労働の持つ力であるように思いました。やはり誰かの役に立っているという感触が生きていくうえで大きな力になるのだと思いました。
『ザ・ウォーター・ウォー』は非常に面白い映画でした。元町映画館で昼の時間しか上映しない、非常に見にくい映画でしたが、強く勧められて、午後半休を取って見ましたが、見てよかったいい映画でした。
2000年ボリビアに映画ロケの一隊が入ります。コロンブスが西インド諸島にやってきて、その後スペインが中南米一体を侵略占領し、植民地化した、という映画です。
ちょうどその時、中南米は「ワシントン・コンセンサス」の嵐が吹き荒れ、ボリビアも多国籍企業による水道の民営化が進められていました。それを阻止する民衆の怒りのデモ、暴動と警察による武力弾圧が衝突します。
映画のロケ隊は武力による原住民の虐殺、植民地化を作ろうとし、現実は多国籍企業による「合法的」な住民の搾取、それに対する抵抗という二重写しです。
これは明確に「ワシントン・コンセンサス」=植民地支配であることを批判したものです。
緊張する画面作りのいい映画でした。
『キリマンジャロの雪』
『よりよき人生』
『故郷よ』
(続く)