2021年3月に読んだ本その2

その2で『世界3月号』『犯罪乱歩幻想/三津田信三』『日韓が和解する日/松竹伸幸』を紹介します。

『世界3月号』

特集①「21世紀の公害」特集②「軍事化される琉球弧」

特集①「20世紀後半からのヒトの活動の爆発的な拡大は、新たな地質学的時代――人新世――の幕開けを議論しなければならないほどの環境変化を引き起こしている」と前文は書いています。

 人新世が地質学的な時代区分として使われていると知りました。そしてここで紹介されている新たな公害も、改めて認識しました。電波、化学物質、低周波、マイクロプラスチック、「香害」、農薬など、まずは小さな生物への影響、子どもへの影響があります。

 私の友人も化学物質過敏症で苦しんでいます。年が行けば抵抗力が弱まり症状が出てきたそうです。街中も歩けません。

特集②「かつて、「本土決戦」の時間稼ぎ、「捨て石」として沖縄は戦場とされ、4分の1を超える住民が犠牲になった。軍事拠点の存在は米軍の攻撃を招き、軍隊は住民を守らず、むしろ軍隊があることで住民の犠牲は膨大なものとなった」そして今も、沖縄だけでなく「鹿児島南部から沖縄最西端の与那国島にいたる琉球弧の島々」が日米が一体化しての巨大な軍事拠点にされようとしています。

 石垣島西之表市、宮古島の反対運動の人たちの座談会が載っています。本土のようにマスコミや国会でも取り上げられない実態、補助金目当ての誘致が報告されています。

片山善博「日本を診る」136回「首相もマスコミも頓珍漢な「緊急事態宣言」」

 現行憲法のもとで私権を制限することは大変な事態で、コロナ禍の「緊急事態宣言」はそれほど重大な状況ということです。それを首相もマスコミもわかっていない、という現状を嘆いています。

   今はマンボウ「まん延防止等重点措置」が神戸でも出されていますが、私権を制限することに平気になっていますし、市民もそれほどの抵抗感はないようです。「コロナ禍だから仕方がない」と簡単に思い込むようです。

 見回りに来たら「支援金を持ってきたやろな」と言ってやればと、私は思うのです。

『犯罪乱歩幻想/三津田信三

「屋根裏の同居者」「赤過ぎる部屋」「G坂の殺人事件」「夢遊病者の手」「魔鏡と旅する男」「骸骨坊主の話」「影が来る」7つの短編

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 江戸川乱歩のオマージュ作品で、その雰囲気を味わいたくて読みましたが、少し期待外れです。でもよく考えると、私が持っている乱歩イメージと違うだけで、この程度の奇妙さと謎が乱歩かもしれません。

 表紙のイメージは現代的で中身もそんな感じですが、文体は現代的ではなく乱歩に似せています。

「屋根裏の同居人」は、親から譲り受けたアパートの管理人室に移り住み、誰もいないはずなのに、部屋が少しだけ乱される日々が続きます。犯人は財産狙いの従兄弟でした。

「赤過ぎる部屋」では、危険を楽しむクラブのゲストの男の話です。彼は命にかかわるような悪戯を仕掛ける男です。犯人として捕まることはない仕掛けで、確率的にしか死ぬ、もしくは大けがをする可能性があるという犯罪を楽しむ男です。

夢遊病者の手」が一番良かったです。夢遊病患者の男が殺人を犯した、と医者に告白します。現場となるアパートに住み始めた切っ掛け、そこにいる奇妙な住人たちのこと、そして殺人の前後のことを話します。それを聞いた医者が謎解きをします。

 住人が一人二役をしていると医者が見抜きます。そして話のすべてが、その男の妄想である可能性を示唆して話は終わります。

『日韓が和解する日/松竹伸幸

 日本と韓国の関係が悪くなっています。韓国映画、映画サークルの5月例会『ハチドリ』を見るにあたって、その背景としてその日韓関係のことを書こうと思い、これを読みました。

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 少し前までは大勢の観光客が来ていたし、韓流ドラマは毎日のように流れています。韓国映画の人気もあります。それがどうしてこうなったのか。それは従軍慰安婦問題、徴用工問題で韓国の大法院が日本企業に賠償責任を求める判決を出したためです。

 この本の後で『池上彰が聞く韓国の本音』をななめ読みしました。両方読んで大体納得しました。大法院は日本の植民地支配が違法で、それによる行為に対して補償ではなく、慰謝料を払うことを命じたのです。

 これまでの日韓関係では、1964年の日韓基本条約1998年の日韓共同宣言も、植民地の問題には触れずに来たのです。それが文在寅政権のもとで、植民地支配を違法とという判決が出て、それに対して日本政府が経済的な報復、輸出規制に出て、一気に反日反韓の国民的な感情が両国で吹きあがったということです。

 この本では国際法は過去の植民地支配を違法とは認めていない、と言っていました。そのうえで、両国の和解のために必要な視点を「根本的な解決の道筋」「当面する解決の条件」さまざまに提言しています。

 4月になって『韓国VS日本 対立が亡くならない本当の理由/池上彰』を読みましたが、これはちょっとひどい本でした。その紹介は「4月に読んだ本」で書きます。