安倍首相の「70年談話」

安倍首相の「70年談話」について、新聞紙上で色々と評価が出ています。しかしどれも甘い評価であると、私は思います。
あの談話は、安倍首相の不誠実な性格をよく現したものだというべきでしょう。主語が不明だとか、曖昧だとか言っていますが、それは当たり前のことです。嘘とごまかしこそが、あの男の正体です。
韓国83%、中国57%
8月25日の[毎日]は、「言論NPO」が実施した日中韓有識者(日本307人、中国337人、韓国159人)のアンケート結果を載せています。見出しが韓国、中国の評価しない割合です。日本では46%が評価し、42%が評価しない、と答えています。
韓国89%、中国65%
談話は4つのキーワード(反省、おわび、侵略、植民地支配)を出しています。それに対して中韓の人々が「反省する内容と感じなかった」という割合が見出しです。
同日の[朝日]は、本社世論調査の結果を載せています。日本人は「評価」40%、「評価しない」31%です。
保守、反動、馬鹿の3人
談話が出された直後8月15日[毎日]は、三谷太一郎(東大名誉教授、前宮内庁参与)、佐伯啓思(京大名誉教授、元文科省中央教育審議会委員)、熊谷奈緒子(国際大学準教授)の談話、寄稿を載せました。
話の内容と肩書きから、左派はいません。
熊谷さんは「日本の歴史認識を提示し、国民がそれを理解し共有していくことに資するという意味で、大変画期的なものである」と持ち上げます。そして「反省の伴わない謝罪は虚偽であり、過去の直視を伴わない反省はありえない」という言葉は、安倍首相に対する批判ではありません。なぜなら「既にさまざまな形でその時々の葛藤と努力の上に真摯な謝罪を何回も行ってきた日本」という認識をお持ちです。
ちょっと大学教授とは思えません。御用学者ともなると、こういうことを平気で言えるのでしょう。
米型歴史観から脱せず
佐伯さんは、安倍談話が「平和、自由、民主、人権を報じた戦後日本が大きな国際貢献をしたとし、その延長線上に、『積極的平和主義』を位置づけようとする」ことが、米国に呪縛された「戦後レジューム」と断じています。
「一時期、アジアに対して『侵略』を行ったのは事実である。しかし対英米戦争(大東亜戦争)まですべてを含めて、アジアや世界の征服を意図した『侵略戦争』だといわれると、簡単に納得するわけにはいかない」とむき出しの反動的歴史観を提示します。
村山、小泉談話から後退
三谷さんは、村山、小泉談話を「全体として継承する」といいながら「侵略や植民地支配についての明快な表現から後退した」と、従来の保守派から批判しています。
「談話の中で責任の主体がはっきりしていない」と常識的な指摘をしています。
そして「日本はさまざまな分野で専門家に対するシビリアンのコントロールが弱体化しつつある」という重要な指摘をしています。佐伯さんもこれぐらい言えばよかったのだが、安倍談話によっぽど腹を立てたのでしょう。
歴史取り繕うな

さらに同日の[毎日]は武村正義(元官房長官)、高村薫(作家)、佐藤優(元外交官)、宮城泰年(聖護院門跡門主)、火箱芳文(元陸上幕僚長)の談話、村山元首相、被爆者、戦争体験者、在日、中国人等の意見を集めて特集を組んでいます。でもなぜか安部談話を真向から否定する人が少ない。村山さんだけの感じです。
(続くかも)