それともう一つ、新聞記事も論評しておこう。私の何かに触った新聞や雑誌、マスコミ報道も俎上に載せよう。
 8月19日朝日新聞の「核なき世界」シリーズの「『核の傘』後の手探り」(論説委員・吉田文彦)が第1号だ。朝日新聞はひどくなっているという意見もあるが、これはその中でも最悪ではないか。
 日本の外交戦略の批判したものだが、どういう姿勢でおこなっているか、というと、唯一の被爆国の新聞として、核兵器をなくそうという世論をリードしようという立場とはまったく正反対であると、先に言って置く。
 原水爆記念日の菅首相の演説を「核なき世界への具体的な貢献をうたった」と評価する。後のインタビューで「核抑止力」にすがった彼の言葉は誰もが知っているし、毎日新聞の岸井主幹でさえも批判したのに、それとはまったく違う。菅首相の本質的なことは、意図的にさけて評価をする。そしてこれまでの日本の核外交を「非核外交を強調する日本は、米国の核戦略家にとって時に煙たい存在だった」と、国連での日本政府の核兵器廃絶に対する態度をごまかしている。つい最近まで、国連の核廃絶決議に、アメリカに追従する自民党日本政府の態度は、属国そのものだった。
 そのうそは、後での菅政権をもっと右に引っ張るためのものである。
 これまでの自民党の核外交をうそを言って持ち上げる一方で、菅首相の私的諮問機関が「三原則のうちの『持ち込ませず』の事実上の見直しを促すような文言」を出したと批判する。
 まるでちぐはぐな感じであるが、そして結論は「『核なき世界』への道筋が、通常戦力のバランスに悪影響を及ぼさないようにする必要もある」と核廃絶が軍拡を呼ぶ、とまで遠まわしでいう。
 まったく事実と違うことをいい、自らの立場をごまかしながら、「核なき世界」が幻であるがごとき印象を与える。世間は、この朝日新聞の記事をどう評価するだろう。