『マイバックペイジ』

 こういうのを、もしかしたら我が儘というのかもしれない。描いていることは真っ当な事で、不満はないのだけれども、あの時代や日本の中にある変革の力を描くのなら、いや描くまで言わないが、70年代をもう少し正面から見るのなら、あの時代から現代に続いている問題(例えば福島原発事故につながる問題)を意識しているような描き方がほしかった。
 「いやな感じの事件」にだけに焦点を絞るのではなく、彼らとは別のところで回っている時代の歯車、あるいは彼らを目くらましとして使いながら、60年代末から70年代にかけての本質的な問題みたいなものを感じさせてほしかった。
 原作があるから、それにとらわれざるを得ないとしても、川本三郎が見ていないことを監督、山下敦弘なら描くことが出来ると思うのだが。私的には、その局面は安保条約の本質であり、労働運動の高揚である。


 「1971年。若きジャーナリストと革命家。二人の出会いが引き起こした衝撃の事件。激動の時代に翻弄された若者たちのすべて。」とこの映画の公式HP(監督の名前間違うなよ)に書いてあったが、売るためにはこう書くのだろう。確かに若者が引き起こした「いやな感じの事件」であるが、彼らはジャーナリストでもなければ革命家でもない。偽者だ。あの時代、本物のそういう人たちはいたと思う。この映画でも中平は一味違う。そこの問題をどう考えるはさておくとして、若者の失敗を描く青春映画としては非常に素晴らしい。その点で評価したい。