「命の終わりを決めるとき」朔立木 光文社

 この本には、表題に沿った2つの中篇が収められている。作者は殺人事件などを身近に知りうる立場なのだが、それぞれの作中人物の心理を書き分ける筆力も相当のものだと思う。
 両方とも実際に会った事件から材を得ている。そして検察や警察を鋭く告発している。
『終(つい)の信託』は医者が手を下した「安楽死」を扱っている。
 優秀な女医が喘息で苦しむ患者に、そのときは「先生に決めていただきたい」と頼まれ、それを実行した。そんな彼女を取り調べる検事とのやりとりを描く。
 じつに検事がいやらしい。落とすこと、マスコミに受けること、上の評価を得ること、のために様々な「て」を使う。
 彼女のこと、彼女と患者のことが詳細に描かれて、その対比が大変うまくて、読んでいて怒りを感じる。
 もう一つ『よっくんは今』は、本当に好きな男を殺した、お嬢様の内面をえがいた。