2023年3月に見た映画その2

『妖怪の孫』『茶飲友達』『ロストケア』『赦し』『ボケますからよろしく』残りが5本です。これも軽く書きます。

『妖怪の孫』

 妖怪=岸信介の孫、安倍晋三の実像に迫るドキュメンタリーです。しかし彼が愚かでくだらない男であるはよく知っています。もりかけさくら等、国会の虚偽答弁も含めて本当につまらない、嘘つき男です。

 映画は的確に描きました。しかし選挙で、そんな男にリベラルはことごとく負けました。それはなぜか、そのあたりをもっと踏み込んで欲しいものです。

 岩盤支持があったこともメディアが厳しい報道をしなかったこともありますが、国民が無責任で嘘を平気でしゃべる彼をなぜ受け入れたのか、そこを知りたいと思います。

 国民の気質や社会的状況になるのかもしれません。こういう映画は権力側の「不都合な事実」だけでなく、それを許している側の弱点も明らかにするべきだと思います。

『茶飲友達』

 若い元風俗嬢がつくった老人専門の売春組織、運営する若者たち、キャストとして働く老嬢、客となる男の話です。

 若い女たちが、老嬢をどうやってスカウトするのか、客はどのようにして集めるのか、若い男が、高齢の女性を売春婦として高齢の男のもと送り届けます。面白い映画です。そして、それは高齢者の現状、生き方を的確にとらえているように思います。

 女性は水商売が初めてという人もいます。歳はとってもその恥じらう姿はとてもかわいいと思ってしまいました。

 男も女もほとんど独り者の寂しい生活です。

 しかし、それが崩壊するのがあっけないのは、なぜなのか、もしかしたら彼らに犯罪意識が弱く、警察の手入れを想定してないから、ではないかと思いました。

 ここで描かれる高齢者について、ちょっと考えました。

『ロストケア』

 最低の映画だと思ってしまいました。

 42人を殺した介護士、斯波(松山ケンイチ)と検事、大友(長澤まさみ)の対立がなんとも情けない映画です。原作があり、それとはちょっと違うようですが、私は読んでいません。映画だけで考えます。

 デイサービス等で介護施設に通っていた老人が立て続けに死にます。さらにセンター長が殺されるという事件が発生し、彼らの家に盗みに入っていたことも明らかになります。

 犯人は誰か、それがメインの映画ではありません。施設の関係者を順々に調べていくと、割とあっさりと殺人犯が見つかりました。

 それはその施設の、一見まじめそうに見えた介護士、斯波宗徳です。検事の尋問で、彼の正体が明らかになっていきます。

 斯波は、認知症になった父親の介護のために会社を辞めて、そして収入がなくなります。父親のボケはますますひどくなり、生活保護も受けられず、絶望した彼は父親を「安楽死」させます。これが警察にばれずに、心不全として処理されました。

 介護士となった斯波は、家族が困っている老人たちを次々に殺しました。それは「喪失の介護」ロストケアだと言い放ちました。さらに彼は検事に向かって言いました。

「殺人はダメだというが、国家も死刑によって俺を殺そうとしている」

 社会にとって不都合な人間は殺していい、それが死刑という制度です。この映画はそれを告発している面もありました。

 この映画はなぜだめか。国家の威信を支える検事が、斯波に告解するからです。

 彼女は、自分を捨てて出ていった父親を見捨てた、という過去を持っています。育ててくれた母親を介護施設に預けてことも負い目に感じています。だからと言って、殺人者に自分の気持ちを分かって貰おうというのはダメです。もう検事としてはやっていけないと思いました。

 国家の威信はそんな甘いものではないと、私は思うのです。

『赦し』

 違うだろ、という映画です。

 女子高生が同級生の女子を殺し、その罪で服役した居たのが、7年後に再審請求によって裁判が開かれるという映画です。

 事実を争うのではなく懲役20年という量刑を争う再審です。そんなものがあるのかという疑問がありましたが、それは置いておいて、彼女の殺害動機が、今回の裁判で明らかにされるというものです。

 私はその時点で、おかしいと思ってしまいました。殺人があり、その事実を認めていたら、裁判は、その動機を解明するはずだと思っています。それが再審で問われるのが奇妙なのです。

 被害者の両親は、加害者を「殺したい」ほど憎んでいます。父親はそれに凝り固まり、母親は諦めよう、と思っていて、その違いから二人は離婚していました。

 加害者は被害者に執拗ないじめを受けていたことが明らかになります。そして被害者の両親はそのことを知らなかった、ということです。

 出演者はまさに熱演の映画で、タイトルのにあるよに殺人に対する「赦し」をテーマにしていました。でもそういうテーマに都合によい全体の枠組みが不自然なので、冒頭に書いたように「違うだろ」と思ってしまいました。

『ボケますからよろしく』

 ドキュメンタリーです。東京で映画製作にかかわる女性が、呉に住む年老いてボケていく自分の父母をカメラに収めています。

 当たり前ですが、ものすごく身近で、そうだよなと共感するところばかりです。

 映画サークルの特別企画で、御影公会堂で上映したのですが、上々の入りでした。2030代はいませんが、老人ばかりということでもないです。

 介護する側の人たちも見たいという要求があるのでしょう。