4月に見た映画

 4月に見たのは『ルート・アイリッシュ』『ピナ・バウシュ夢の教室』『サウダーヂ』そして例会の『トロッコ』です。
 どれもなかなかいい映画でした。中でも『サウダーチ』はJ・セイルズの『希望の街』を連想させるスケールを感じました。地方の都市の姿を丸ごと、それも地を這うような視線から描こうとしたような映画です。「サウダーヂ」という題名は、ポルトガル語で「郷愁」とか「憧れ」「追い求めてもかなわぬもの」といった意味だそうです。それはよく表しているように思います。
でも『希望の街』とは出口が違いますから、いい映画だけれども高い評価といきません。
 日本の田舎の中心都市(おそらく甲府)で働く土建労働者を主人公にして、彼や彼の友人たちの周囲で起きる事件を描きます。同時にその都市が生き物のように彼の生活と絡み合っているように描いていることが、この映画の一番いいところです。
 商店街のシャッター、土建労働者、外国人労働、若者の風俗、猥雑な盛り場など、都市の影の部分がいいですね。詳しい感想は映画サークルの機関誌に描きます。


 『ルート・アイリッシュ』はイラク戦争を描くケン・ローチの映画です。軍隊が撤退して軍事請負の民間会社が残っています。彼らがどんなことをしているのかを告発した映画です。テレビや新聞でははっきり出ないことが描かれます。殺人も許される無法地帯です。
 とてもスリリングな映画ですが、恐ろしいことにこの映画主役たちもとことん心が荒みきっていると描きます。
 だからラストに、ケン・ローチをして主役が自殺をするしか選べなかった、というところに、この現実の恐ろしさを感じました。
 ルートアイリッシュというのは、バクダッドの街から空港へ行く、世界一危険な道のあだ名です。


 『ピナ・バウシュ夢の教室』は、世界的な舞踏家ピナ・バウシュが、ダンスに関しほとんど素人の子ども達を指導して、ダンスショーを作り上げていくドキュメンタリーです。子供たちが生き生きしているのがいいです。


 映画にするのですから、そんなことは当たり前ですが、個性の引き出し方が面白かったし、ダンスの表現の魅力もちょっと感じました。
 最後は『トロッコ』です。


 例会参加者が750人と、ぎりぎり採算点にたどりつきました。それは喜ばしいことです。そして映画自身も暖かい気持ちにさせてくれます。それは、芥川龍之介の原作とちょっと違う魅力を付け加えたことで出てきたのではないかと思います。
 一つは舞台を台湾に持ってきたこと、二つは父の死は背景に持ってきたことです。それでいっそうトロッコに乗る子どもの気持ちの高揚心や一つ成長する姿が、ぐっと来ました。