自治体学校

7月26,27,28日と仙台で第56回自治体学校がありました。これで7回連続参加です。テーマは「被災地で学ぶホンモノの地方自治」ということでした。

初日は記念講演「日本国憲法地方自治−この「多重危機」の中で考える」講師は杉原泰雄さんです。そしてリレートークとして「原発災害の現状と自治体の役割」(馬場有浪江町長)「地域の中の保健師」(岩間順子、大槌町保健師)「日常を取り戻すために 日常を失わないために」(小島直広、河北新報記者)でした。
記念講演で、憲法学者憲法学会では地方自治を軽視してきた、ということが意外でした。中央集権的であったということです。自民党政権はそうであったというのはわかっていましたが、中央政府の「民主化」、福祉国家造りが優先課題である、ということです。
杉原先生の話の中で革新自治体の価値が触れられませんでした。1960年代70年代の意義は、中央に攻め上るため、ということだったのでしょうか。共産党の「70年代の遅くない時期に」というとは、そういう意味だったのかもしれません。だから80年の「社交合意」以後に、革新自治体が見事にひっくり返るのは、そういうことかな、と思いました。
リレートークでは大槌町保健婦さんの「息もするのも苦しい」という過酷な状況に、阪神淡路の時に自ら命を絶った人たちのことを、少し考えました。私はそういう状況に追い込まれなかったので、何も言いようがありませんが、「保健師は地域にとって、生活を支えるかけがえのない職種であると教えていただいた」と言う言葉を聞いて、安心しました。
2日目は「どうする?産業再建−復興の現場から考える循環型地域経済」に参加しました。

地域経済を循環型にするとか、被災地の復興状況や多くの人の奮闘、あるいは課題等がかなり明確にわかる分科会でした。そういう意味では良かったのですが、ある意味で根幹的なことですが、私自身が独占大企業や国全体の産業政策と地域経済の関係が、もう一つわかっていないので、それだけでうまくいくのかな、という疑問が残っています。
被災地の地場産業は、全体として大体7割程度の復興、再開を果たしているようです。しかし「全体として」と言う意味は建設業が増えているが、いわゆる地場産業、ここでは水産加工業は減っていると言うことで、先々まだまだ厳しい状況が続くようです。
その中で、我々が直接支援できて確実に被災地に役立つことは、被災地の産品を買うと言うことです。
地場産業の復興の課題は人の確保と、販路の確保だそうです。我々は、そこへいって買っても良いが、今はインターネットでの販売もしているそうで、それに協力して欲しいと言っています。
この日、報告されたのは瀧澤英喜さん、三陸漁業生産組合をやっておられて、HPは「三陸とれたて市場」で出てきます。
3日目は特別講演「福島第一原発の汚染水問題の現状」(柴崎直明、福島大学教授)でした。地質学の専門家が見た東電の驚くべき体質、問題意識(安全神話にいかにどっぷりとつかっているか)と、汚染水処理のあまりにも問題が多すぎる対応策が報告されました。

 原子力発電所は大変重要な建造物ですから、その基礎は安全すぎるといわれるほど慎重に地層調査をして作っているものと思っていました。
 しかし立地を決めるのに地質調査によって安定した岩盤なので、ここに決めた、ということではないようです。電気の大消費地、東京に程近く、人家が少ない、広い土地が手にはいる、という工学的条件よりも経済学的条件によって決められたようです。
確かに調査、設計、工事は丁寧に行われたようです。工事の責任者が工事の困難さや問題点を専門誌にレポートを出しています。
しかし完成後の保守点検、維持管理は建物自体は見ていたのでしょうが、その足元の地層、地質についてはまったく関心が行かなかったようです。
柴崎さんの話によれば、[3.11]直後から汚染水対策が始まっても、地質調査図がなかったそうです。
いろいろと手ずるをたどって、昔の図面を探し出したそうですが、東電自身がそれを保管していなかったと言うことは、如何に「安全神話」に浸かりきっていたか、ということの証明です。
現在の汚染水対策の問題点を指摘がありました。そして「自治体による独自の監視」と言われても、とても手が回る状況では内容に思いました。これはきわめて深刻な状況です。とても「コントロールできている」なんていえません。