8月の映画

4月から再任用職員となり週休3日で、これまで以上のペースで映画をたくさん見ています。
8月は前半にイベントがあったのですが、後半盛り返しました。『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』『野火』『ニュースの真相』『シン・ゴジラ』『一瞬の夢』『罪と罰』『”記憶”と生きる』『袴田巌 夢の中の世の中』『暗殺』9本でした。
以下に感想を書きますが、私の信条として「ネタばれ」までいきます。それを了解して下さい。
『野火』は例会作品で、機関誌に解説を書きました。感想も機関誌に投稿する予定です。
ジャーナリズムとは
8月のベストは『ニュースの真相』です。これは実話に基づくものでジャーナリズムとは何かまで、を考えさせるものです。

2004年米国大統領選挙の真っ只中に「ベトナム戦争の時代に、ブッシュ大統領候補が父親の権力を使って兵役を免れた」とテレビの報道番組が流しました。それは1枚のメモをきっかけとして、「60ミニッツⅡ」の取材チームが、さまざまな関係者の証言を積み上げた一大スクープでした。
しかし、それは周到に仕掛けられた罠でした。そのメモは「にせものだ」と持ち込んだ本人が証言したのです。番組は世間の批判を受け、テレビ局は内部委員会を設けて関係者を「取調べ」ます。結局、番組の責任者、プロディーサーや伝説的ジャーナリストとして地位を築いてきたアンカーマンは首になります。
メモの真贋だけが問題として焦点を当てられ、見事にブッシュの軍歴の問題が消えました。
誰がどういう目的で、これを仕掛けたのかは明らかにされません。結果として、この選挙でブッシュは再選されます。
この映画の原作を書いたプロデューサーなど取材をしたメンバーは、ブッシュがベトナム戦争行きを回避したと確信しています。ジャーナリズムの役割は、政財界の有力者の子供がさまざまな手段を弄して兵役を回避してきた、という事実、蓋然性を明らかにすることです。そこを巧妙に隠くそうとする「勢力」があることを示唆します。内部委員会のメンバーからも、そういう問題は指摘されず、むしろそれは「やりすぎ」のような言い方をされます。
まるで朝日新聞の韓国人「従軍慰安婦」問題と同じです。あるいは30数年前の森村誠一悪魔の飽食」偽写真事件を思い出しました。

伝説的アンカーマンを演じたのはロバート・レッドフォードです。年齢は隠しようがないですが、実に堂々とした存在感を示していました。
その他は

『トランボ』は、ドルトン・トランボ自身に焦点が絞られて、彼の才能、人格などから面白く仕上がっていますが、マッカーシズム全体がきちんと描かれていないような感じでした。彼と一緒に闘ったハリウッドテンや彼らを追い詰める映画人なども出てきますが、ちょっと分かりにくい感じです。
シン・ゴジラ』は、大ヒットしているようなので見ました。第1作を除いた、これまでのゴジラ映画とはちょっと違っていました。半分ぐらいは大自然災害、原発事故等に対応するかのような政治家、官僚機構が活躍する映画でした。
それが悪いとは言いませんが、実際に最前線で働く人として出てくるのは自衛隊ぐらいなので、それはまあやむを得ませんが、なにか現在の支配層を持ち上げるような感じ、印象を私は持ちました。
ゴジラは何の目的で東京に上陸し歩き回るのかは分かりません。彼に仕掛けられる、自衛隊在日米軍の攻撃をことごとく跳ね返すシーンはゴジラの恐ろしさを出していました。劣化ウラン弾という言葉は出てこなかったような気がします。
中近東の戦場では、無人攻撃機の下にいるのは、ゴジラではなく人間が逃げ回っているのです。それを想像してしまいました。