『脚本「明日」/原作:井上光春、脚色:小松幹生』『「正しい戦争」は本当にあるのか/藤原帰一』『現代落語論/立川談志』『葛藤する刑事たち/村上貴史編』『漂う子/丸山正樹』『世界6月号』『前衛6月号』
脚本が1冊、本が4冊と雑誌2冊ですが、読める量はこんなものですね。とりあえず3冊分を紹介します。
『脚本「明日」/原作:井上光春、脚色:小松幹生』
神戸演劇鑑賞会8月例会の運営サークルに参加して、その脚本を読みました。その感想はこのブログの「8月2日」に書いていますので、それを読んでください。
芝居と脚本とは違うということを知りました。舞台回しもセリフのやり取りも、脚本をから受けるイメージを越えていました。
脚本通りにしゃべっているのに、言葉を追うだけではわからないこともありました。それはまた芝居の感想の時に書きます。
『「正しい戦争」は本当にあるのか/藤原帰一』
2003年に発行されているのですが、20年を経ても古くなっていません。藤原先生の国際政治を見る目、歴史認識が非常に優れていると思いました。
章立ては以下のようで、藤原さんがインタビューに答えるという対話形式となっています。そのためか非常に読みやすい本でもありました。
①「正しい戦争」は本当にあるのか②日本は核を持てば本当に安全になれるのか③デモクラシーは押し付けができるのか④冷戦はどうやって終わったのか⑤日本の平和主義は時代遅れなのか⑥アジア冷戦を終わらせるには
「平和を保つのも軍隊なら戦争をつくるのも軍隊だ、という、国際政治のもっとも基本的な逆説」が、現在の混乱、誰も(圧倒的多くの人)が戦争をしたくないと思っているのに、戦争の準備をし、戦争へと踏み込んでいってしまう要因です。
なるほど、そうだと思いました。
全ていいのですが、私にとっては蒙を開かれた思いがあったのは次のことです。
東西冷戦の終結とソビエト崩壊を結びつけていましたが、そうではありません。ゴルバチョフ主導のペレストロイカがあり、冷戦終結の道筋がつけられ、その後のソビエト崩壊に乗じた米国の謀略が「米国一強」という戦争の時代をつくったということです。
気になった言葉は以下のものです。
・米国は「正義の代行」をしているが、米国は国際法に従わない。
・日本人は自分が死なないと、戦争への関心が薄い。
・軍隊が必要かどうかは一般論ではない。
・平和をもっと具体的に考える。
・平和は理想ではない。
・デモクラシーや人権の普遍性を前提にして、他者を排除したら意味がない。
・米国の圧力で東側が壊れたわけではない。
・日本は自分たちの力で民主的な政府、憲法をつくれなかった。
・憲法に対しても安保に対しても支持が高い。戦争はいや。自分たちの安全第一。
・戦争責任と国際連合、日本人は自分たちを犠牲者としてしか見ていない。
・歯止めをなくすのが改憲。
・政府は内側から倒される。
『現代落語論/立川談志』
「笑わないでください」という副題の付いたきわめて真面目な落語論です。1965年に書いていますから、談志28才、入門13年です。生意気と言われるわけだと思いました。
章立ては①「落語の観方聞き方」②「真打になるということ」③「昔の噺家・今の寄席」④「観客・芸・人気ないしは笑いについて」⑤「私の落語論」
多岐にわたっているようですが、主には現代(1960年代)の日本における噺家、寄席、落語についての話です。
談志の落語愛がよく伝わってきました。しかしこの本の中でも矛盾したことを語っています。
本格派、古典落語が大好きですが、チャップリン喜劇のドタバタをもっと評価すべきといいます。落語界から出て他分野で活躍して、また戻ってくればいい、という柔軟性もあります。
植木等、牧伸二、漫画トリオ等を評価していますが「志ん生、文楽に比べたらものの数ではない」と言い切ります。
本当に落語を愛した人です。見直しました。