『夕陽のガンマン』『トランスフュージョン』『フューチャー・ウォーズ』『続夕陽のガンマン』『幸せのイタリアーノ』『キャロル・オブ・ザ・ベル』 『ぼくの家族と祖国の戦争』『こわれゆく女』『ラヴ・ストリームス』の9本を見ました。学校が休みですから時間が出来たのです。シネマ神戸で6本見ていますが、本数が多いのは2本立てを見たからです。でも数の割にはいい映画は少なかったですね。
なるべく簡単に書きました。でもいい映画はちょっと力が入ります。
7月に見た『荒野の用心棒』に続く マカロニウエスタンの「ドル箱三部作」の3本のうちの2本です。この3本はストーリーも登場人物も全く別の映画です。セルジオ・レオーネ監督・脚本、エンニオ・モリコーネ音楽であり、主演がC・イーストウッドという共通点があるだけです。
この二本はC・イーストウッドに加えてリー、ヴァン・クリーフが主演級に加わりました。映画館かテレビの映画番組で見たのかもしれませんが、ストーリーは全く覚えていませんでした。
昔はどうかわかりませんが、今の私は両方とも「物足りない」という感想です。黒澤明の『用心棒』をリメイクした『荒野の用心棒』のストーリーはまだしも、この2本は「どうかな」と思いました。
『夕陽のガンマン』はイーストウッドとクリーフ(元大佐)が賞金稼ぎで、二人で組んで銀行強盗団から銀行から強奪した大金を横取りする話です。
『続夕陽のガンマン』も賞金稼ぎですが、前の映画とは違う人物です。イーストウッドが「善玉」で、クリーフは冷酷な「悪玉」、もう一人「卑劣漢」イーライ・ウォラックが加わり、この3人が南軍が隠した20万ドルの金貨を争奪する話で、3時間の大作でした。
2本ともまったくといっていいほど女性が出てきません、脇役にもいません。マカロニウエスタンの特徴でしょうね。
『トランスフュージョン』
タイトルは「輸血」という意味でしょうか。
オーストラリア軍の特殊部隊にいた主人公は、妻が交通事故で死に、息子を育てるために軍もやめますが、まともに働くことが出来ず、荒れた生活になります。軍の元同僚に誘われて犯罪に手を染めました。
息子もいい加減な育ち方をしています。泥沼に陥るような映画でした。
『フューチャー・ウォーズ』
よくわからない映画です。
500年先の26世紀から、地球を守るためにタイムトラベラーが来るというSF映画です。その時代に原発事故で地球が破滅状態になったので、その元凶になった原発を推し進めた21世紀のフランスの国会議員を殺しに来たのです。
歴史を変えてはいけないという時間警察との鬼ごっこという喜劇的要素が大の映画でした。時間警察は何を守ろうとしているのかもわかりません。歴史を変えるとパラドックスを描いたわけでもありません。原発反対もそんなに伝わりません。
500年も原発が持ったということ自体が、私はおかしいと思いました。
『幸せのイタリアーノ』
49歳のプレイボーイ、女性を誘惑することを友人たちとの賭けのネタにする下品な男です。でも女にはモテるのかもしれません。やり手の大企業社長、金持ちでスポーツマン、頭もいい、気さくなユーモアセンス、顔も渋めの独身中年男です。しかも標的にした女性に適度に連絡を取る小まめさがありました。
それが車いすに乗った障碍者と勘違いされて、同じ障碍者の美人と出会い、最初はいつもの「誘惑してやろう」でしたが、彼女に本気で恋してしまうという話です。
原題は「あなたの元へ走る」という意味です。
彼女も車いすながらバイオリンはコンサートミストレスですし、車いすテニスのチャンピオンです。もちろん飛切の美人です。
男はもちろんですが、女も障碍者ですが恵まれた環境にいますから、典型的な恋愛映画でした。
『キャロル・オブ・ザ・ベル』
市民映画劇場8月例会です。良かったという意見と分かりにくいという声も聞きました。俳優たちの顔立ちが似ている感じで、誰がどうなったのかを追っていくのも大変ですし、ポーランド、ウクライナの歴史的な知識も多少必要です。
私は2度目の鑑賞で、解説なども読んでいましたので、付いていくことが出来ました。 私が見た映画と戦争の関連を書いていきます。
ポーランドの東の端の都市スタニスワブフ(現在はウクライナ)に住む3組の家族の運命を描く映画です。弁護士のユダヤ人が大家で、その家にポーランド人の軍人家族とウクライナ人の音楽家家族が引っ越してきました。
一九三九年九月ナチスドイツがポーランドに攻め込んで第二次世界大戦が始まります。ドイツと密約を交わしていたソ連軍もポーランドに攻め込んで東半分を占領します。この時、ソ連軍はポーランド軍を解体します。「カティンの森事件」に見るように、ソ連はポーランド軍の中枢幹部を殺害しました。
一九四一年六月ドイツはソ連に宣戦布告し、またたくまにスターリングラードまで攻め入りました。この時にユダヤ人夫婦は連れ去れらます。ナチスの「ユダヤ人問題の最終的解決」により、アウッシュビッツに送られたのです。
ウクライナ夫婦は反ドイツのレジスタン活動を咎められて、夫は銃殺されました。
この地を占領したドイツ軍は、支配を確実にするために将校が家族を連れてやってきます。無神経にも自分たちが殺したウクライナ人の妻を子どもの音楽教師にしました。この辺りドイツ軍家族の考えが分かりません。
独ソ戦は一九四二年のスターリングラード攻防戦のドイツ敗北により、戦況は一転します。一九四四年にはドイツ軍は押し戻されて、スタニスワブフは再びソ連軍に占領されます。
ソ連軍はドイツと闘ったウクライナ人のレジスタンスを敵視しました。スターリンのソ連はウクライナ人の自治、独立を認めていないのです。この時にウクライナ人妻の音楽教師はシベリア送りとなったのです。
映画ではわかりませんが、ソ連支配下のウクライナではホロモドール(一九三二、三三年、穀物をソ連に奪われて数百万人が餓死した)が起きていました。
第二次世界大戦後も、ソ連はウクライナの独立を許さず徹底的に弾圧したようです。ウクライナ民謡を歌う少女さえも敵視しました。
この映画もそうですが『カティンの森』『夜明けの祈り』でも、ソ連軍の悪辣さを描きます。東西冷戦構造の崩壊は、新たな歴史の事実に迫っています。
この映画の特徴は、ソ連軍とロシア人を敵対する人間ではなく卑しい人間と描きました。
(つづく)