市民映画劇場5月例会『夜明けの祈り』感想

 

ちょっと前になりますが2019年5月に上映した映画の感想を書きましたので、ここに載せます。

ポーランドにいたフランス兵

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些細なことが

 

 映画の本筋ではなくとも、映画全体の社会状況、そこに描かれる都市と歴史、文化がどういうものか、気になってしまうことが、私にはよくあります。

この映画で言えばフランス人女医マチルダは何のためにポーランドの片田舎に来たのだろうと思うのです。

赤十字ですから戦傷者全般を治療するために来たと思いましたが、フランス兵の治療が終わり彼らは引き上げると言います。

「なぜ東部戦線にフランス兵がいたのか」という疑問が私に残りました。

実話に基づく映画ですから、大枠は事実に沿っているはずです。しかし私はポーランドソ連、フランス等の歴史的関係、第二次世界大戦の経緯などの知識が不十分で分からないことが多々ありました。

例会学習会「ポーランド歴史と国民性」で知りえたことを参考に、映画全体を考えてみました。

ソ連ポーランド

 

まずこの映画の中心である「ソビエト兵がポーランドの修道女を集団レイプした」動機です。戦争の狂気が男たちを「野獣化」させたという理解でもいいかもしれませんが、反ナチスで戦った同じ連合国の国民、しかも修道女にここまでひどい仕打ちをするのはなぜか、と考えます。

明確にはわかりませんが、いくつかの理由を考えてみました。

①映画の中でもマチルダをレイプしようとするソ連兵がいたが、戦争が終わって半年以上たっているにもかかわらず、このようなふるまいをするほど占領軍、ソ連兵の道徳レベルが低い。

②中世ではポーランドがロシアに侵略し、一八世紀末からは逆にロシアが占領支配する関係で、歴史的な国民的感情に憎悪があった。二〇世紀でもロシア革命後の混乱した状況でポーランドソ連に干渉戦争を仕掛けた。相互に味方よりも仇敵という意識があった。

第二次世界大戦開戦時、ソ連ナチスドイツと不可侵条約を結んでポーランドを分割支配した。「カティの森事件」もあった。それが兵士の意識に反映して、同盟国とは見なさず、ポーランド国民を見下している。

④宗教がロシア正教カトリックという違いがある。学習会でカトリックポーランド国民の統合の象徴という話があったが、ユダヤ教など他宗派には排他的で、ロシア正教とも対立があったのか。

これらが複合しているのかもしれません。

ソ連とフランス

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フランスはドイツに早々に降伏しますが、本国のレジスタンスだけではなくド・ゴール将軍の率いる自由フランス軍が英国、米国と一緒になって戦争に加わっています。ソ連軍にもその一員が加わっていたということです。

しかしさらにインターネットで調べると、もう一つの別のフランス兵がいました。自由フランス軍とは逆にビシー政権下で反共義勇兵としてフランス兵の一部がナチスドイツの配下に加わり、武装親衛隊の一部隊にいたこともわかりました。

彼らは、ナチスの一員としてソ連と闘っています。敗戦後、彼らは捕虜としてシベリア送りになる者、裁判にかけられ死刑や懲役となった者、その後インドシナ戦争に行った者、様々な生き方をしたようです。

赤十字は本来的には敵味方の区別なく治療したはずですが、この両者のフランス兵の扱いは、はたしてどうだったのか、映画はそれに触れていません。